書籍詳細
宰相閣下の可愛い護衛2
| 定価 | 1,320円(税込) |
|---|---|
| 発売日 | 2025/10/10 |
電子配信書店
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内容紹介
――他には何もいらないから
長年の両片思いを実らせ、ついに恋人になった近衛騎士レイモンドと宰相マーヴィン。幸せいっぱいの二人は、マーヴィンの尽力によって国で同性婚が認められたことをきっかけに、結婚を目指す。しかし、マーヴィンの家族に反対されてしまって!? 愛する人の家族も大事にしたいレイモンドに対して、反対を押し切りなぜだか急ぐように結婚を進めようとするマーヴィン。想い合っているはずなのに二人は初めての喧嘩をしてしまい…。そんな中、マーヴィンの故郷に恐ろしい飛竜が現れたと騎士団に討伐要請が! 恋に臆病な敏腕宰相×ピュアな近衛騎士の溺愛ラブストーリー待望の2巻!
人物紹介
レイモンド
体格にコンプレックスを抱える近衛騎士。恋人マーヴィンの相変わらずの人気っぷりに結婚を意識し始め…。
マーヴィン
有能ゆえに多忙を極める宰相。仕事はスマートだが、恋愛ではレイモンドを思うあまり不器用な面も…。
立ち読み
1.愛しい人と望むもの
休日前夜に恋人の部屋で二人きり。いつもなら甘い空気が漂うはずの時間だが、自分たちの間には滅多にない緊張感が満ちている。
「説明してもらえますか、マーヴィン様?」
ソファに隣り合って座る恋人を、レイモンドは群青色の眼でまっすぐに見つめる。日頃穏やかな表情をたたえているマーヴィンの甘い顔立ちは、今は気まずげに困り果てていた。
「そんなに大(おお)袈(げ)裟(さ)なものではなかったんだよ?」
「治癒術を受けるほどだったのにですか?」
「それはまあ、念のためというか……」
視線の先にいる恋人はシュガーリア国の若き宰相であり、文官の最高峰に君臨する男だ。王とともに様々な政策を打ち立てる彼は、極めて有能で冷静沈着とされていて、言い淀(よど)む姿はきっととても珍しい。彼と恋人になってからもうすぐ一年になるレイモンドですら、数えるほどしか目にしたことがない。
「心配をかけたくなかったんだ」
「それはわかってます。でも……」
レイモンドはそっと唇を噛(か)む。
王宮での勤務を終え、恋人と待ち合わせて帰る際、たまたま顔を合わせた治癒術師が、日中に治療をしたマーヴィンの様子を気にして声をかけてくれた。それが、今のこの状況の発端だ。
治療を受けるほどの不調があったなんて寝耳に水で、久々にマーヴィンとゆっくり会えると能天気に浮かれていた自分を恥じたくなった。
「マーヴィン様がつらい時に、知らないままでいるのは嫌です」
手を伸ばして恋人の頬にふれる。やつれている様子はないことにひとまず安(あん)堵(ど)するけれど、疲労の色が見えないわけではない。優しい水色の眼の下にうっすら見える隈(くま)へそっと指を這(は)わせれば、マーヴィンの大きな手に指先を優しく包まれた。
「少し眩暈(めまい)がしただけだよ。念のため治癒術室で診てもらったけど、流行り病の対処にあたった時ほどじゃない」
「あの頃は……執務室に缶詰め状態で、ずっと顔色がよくなかったですね」
数ヶ月前、王宮内で大規模な流行(はや)り病が広がったことがある。魔力や体力の低下を引き起こし、治癒術だけでは回復が難しいという厄介な病気で、一時は王宮勤務者の半数近くが伏していたほど危機的状況だった。文官のトップとしてひたすら対応に追われていたマーヴィンは本当に大変そうで、見守るレイモンドはずっとハラハラしていたのを覚えている。
「流行り病が広がるより前は、もっと無茶苦茶な働き方もしてたし」
彼の言葉通り、正式に付き合うようになる前のマーヴィンは、定時の概念なく休日も返上して働き詰めだった。
安心させようと「昔よりはマシだから大丈夫」という説得を試みられているのだろう。昔のような最悪の状況からはもちろん幾分マシだ。けれど、だからこそ不調を見過ごせない。
恋人が多少の無理を押し通してしまう人だと知っているから。マーヴィンが顧みない分、レイモンドが気にかけるべきだと思ってしまう。
顔を曇らせたままの自分に、恋人は苦い笑みを浮かべた。
「つまりその、治癒術に頼らなければならないほどしんどかったわけじゃないんだ、本当に。今夜はレイと過ごせるから、体調を万全にしたくて、どうせならとかけてもらっただけで」
少しばつの悪そうな様子でマーヴィンが白状する。レイモンドはゆっくりと瞬きを繰り返した。
「僕と過ごせるから?」
「ああ。だって、レイとたっぷり愛し合いたいだろう?」
包み込まれたままの指先が恋人の口許(くちもと)へと引き寄せられ、口付けられる。
緊張感と心配で満ちていた空気が、指先へのキスひとつでガラリと変わる。
付き合ってもうすぐ一年が経(た)とうとしているというのに。指先へのキスなんて比較にならないような行為を何度も重ねていても、恋人らしいふれあいをするたび、レイモンドの胸はいまだ甘くときめいてしまう。
――だって、大好きな人からのキスだから。
同僚たちの話を聞く限り、付き合い始めが一番楽しくて、時間が経てば気持ちは落ち着くのがどうやら一般的らしいけれど。レイモンドの場合は、好きだという感情も、相手を大事に思う気持ちも増していくばかりだ。
言葉でも、ふれあいでも、想いを伝え合えるのが嬉しい。
「疲れてないですか?」
これからの時間を期待する心を抑えて問いかければ、マーヴィンは大きく頷(うなず)いた。
「レイとの時間を確保したくて、少し詰め込みすぎたのは反省してるよ。許してくれないか?」
先ほどキスを落とした指先へ、恋人は甘えるように頬擦りしている。格好いいのに、可愛い仕草も似合うなんてずるい。レイモンドは小さく口を尖(とが)らせる。
「許すも何も、心配なだけで怒ってるわけじゃないですよ」
「可愛い……」
口うるさく言って煙たがられないだろうかという懸念は、マーヴィンがしみじみこぼした呟(つぶや)きが吹き飛ばしてくれた。耳に届いた甘い響きに、レイモンドは頬をじわりと染める。
「心配ばかりさせて申し訳ない気持ちにもなるけど、君に心配されるのはくすぐったくて嬉しいな。久々のデートなのに『心配だから安静にしましょう』なんてお預けされたくなかったから、よかった」
安堵の溜め息を吐(つ)き、マーヴィンが顔を綻(ほころ)ばせる。その嬉しげな姿にレイモンドの方こそくすぐったい心地になり、恋人の肩口にぽすんと額を預けた。
「僕だってお預けは嫌です。デート、楽しみだったので」
「同じ気持ちで嬉しいよ」
上機嫌の恋人が、レイモンドの短い銀髪をくしゃりと撫(な)でる。その優しい手つきがたまらなく好きだと感じた。
「たっぷり、その……したいです」
「ああ。元気だって証明させてほしい」
愛し合いたい、とは気恥ずかしくて上手く言えなかったが、甘く笑って頷かれた気配がする。ゆるゆると口許を緩めていると、マーヴィンの大きな手に顎をそっと掬(すく)われた。水色の眼にゆらりと熱が灯(とも)っている。
「あ……」
誘われるように目を閉じると同時、唇にやわらかい感触が落ちてくる。啄(ついば)むように口付けられて、くすぐったさに笑みをこぼせば、熱くぬめった舌が差し入れられた。味わうように口の中を舐(な)められる。
「ん、んん……」
優しく口腔(こうこう)を犯してくるそれへ、レイモンドもそろりと舌を擦(こす)り合わせた。
――キス、気持ちいい……。
互いの息遣いや舌同士を擦り合わせる水音が耳に響き、じわじわと興奮を煽(あお)っていく。舌先を絡め合う気持ちよさに、いつものようにすぐに夢中になった。
「レイ、可愛い」
「マーヴィン様……」
息継ぎの合間に囁(ささや)かれた声が甘い。愛(いと)しげに頬を撫でられて、キュンと胸がときめいた。
「キスだけでとろとろだ。可愛いね、レイ」
「だって……キス、好きで……」
レイモンドは熱っぽい吐息とともに言葉をこぼす。
「マーヴィン様とのキス、いつも気持ちよくて……ずっとキスしてたいです」
ふわふわと夢見心地で微(ほほ)笑(え)めば、恋人が小さく呻(うめ)く声が聞こえた。
「君の前だと俺の理性は紙に等しいって思い知らされてばかりだな」
困っているような、それでいて嬉しそうな声に首を傾(かし)げると、マーヴィンの腕が背中と膝裏に差し入れられる。
「抱えるよ」
「え、わっ」
横抱きにされた衝撃でレイモンドは少しばかり狼狽(うろた)えてしまい、恋人の首に咄(とっ)嗟(さ)に腕を回してしがみついた。
騎士学校を卒業しているマーヴィンはしっかりと筋肉のついた逞(たくま)しい身体をしている。その力強さを知らないわけではないけれど、浮遊感が落ち着かなくてソワソワする。
現役の騎士である自分は当然ながら体格がいい。せめて身長が低ければ身長に見合ったサイズ感だっただろうと思うのだが、恋人とほぼ変わらないくらいの長身のため、結構な重量がある。
――マーヴィン様は可愛いって言ってくれるけど、それはそれとして体格がいいのは事実だから……っ!
「マーヴィン様、あの、重いので……」
無理をさせたくないので下ろしてほしい、とレイモンドが口にするより前に、マーヴィンは足を踏み出した。
「可愛い恋人をベッドに連れ込むのを楽しみにしてたんだ。運ばせて?」
いたずらっぽくウィンクをしてみせた彼は、危なげない足取りでレイモンドを寝室のベッドまで運んでいく。
「壊れ物みたいに扱わなくても大丈夫ですよ?」
丁寧な手つきでベッドに下ろしてもらえたことを嬉しく思いつつも、頑丈だからと言い添えずにはいられない。そんなレイモンドに恋人は微笑んでゆったりと首を振った。
「世界で一番大切なんだから、何より大事に運ぶに決まってるよ」
マーヴィンに気負った様子はなく、当たり前のことを口にしているようだった。じん、と胸に甘やかな気持ちが溢(あふ)れていくのを感じながら、レイモンドは腕を伸ばし、愛しい彼の首を引き寄せる。
――大好き。
自分から唇を重ねれば、伸ばした舌先を愛しい男に吸い上げられた。
「ん、ふっ、ぅ……」
自分が甘いお菓子にでもなったのかと錯覚したくなるぐらいの、食べられるようなキスに溶けていく。器用な恋人は情熱的な口付けの傍らレイモンドの服を取り払っていった。一枚一枚脱がされるごとに、恥ずかしいのに、これからの時間を期待して嬉しくなる。
下着のみの姿にされる頃にはレイモンドの息はすっかり乱れていた。
「きれいだ、レイ」
マーヴィンがうっとりとした表情でこちらを見下ろし、甘く微笑んでいる。そのまま、彼はレイモンドの剥(む)き出しの上半身をするりと撫でた。
「あ……」
「勃(た)ってる。可愛いね」
マーヴィンの指摘通り、色づいた尖りは愛撫を期待してぷくりと腫れ上がっていた。マーヴィンの指先に突起を摘(つま)むように捏(こ)ねられて、むず痒(がゆ)さに似た感覚に全身がゆっくりと痺(しび)れていく。
「そこ、そんな……され、たら……っ」
「レイはここ弱いものな。たくさん声を出していいからね」
「あっ、あああ……っ!」
熱くぬめった舌先に乳首をねっとりと転がされ、レイモンドは思わず背をしならせる。胸を突き出すようになってしまったことが恥ずかしい。
「もっと、って言われてるみたいだ。気持ちよさそうだね、レイ」
「マーヴィンさま……、まっ、んん……っ!」
緩く頭を振って、受け止めきれない快感を逃がそうとするけれど、マーヴィンの愛撫の手は止まらない。一方は熱い舌に舐めしゃぶられ、もう一方は指でくにくにと捏ねられ、乳頭を爪の先で甘く引っかかれる。快感の波はとめどなく下半身へと押し寄せた。
「はぅ、んん……っ、声、やぁ……っ」
「可愛い声だよ。聞かせて、レイ」
「ん、んぅ……っ、はずかし、から、もう……っ」
ぐずぐずにとろけた声で羞恥心の限界を訴えれば、愛しい男が笑った気配がした。
「あッ……!」
敏感になっていた乳首を甘く噛まれ、強すぎる刺激にレイモンドはびくびくと身体を震わせる。何かが弾(はじ)けたような不思議な感覚にぼんやりしてしまう。
――でちゃった……? わ、わかんない、一瞬真っ白になったことしか、わからない……っ。
「甘イキしたのかな。ふふ、可愛かった」
「あ……」
混乱するレイモンドの頭をマーヴィンの手がふわりと撫でた。その手はそのまま身体の中心へ移動し、熱のこもった場所をするりと撫でる。ふれられて、やっと陰茎が芯を持ち膨らんでいることに気づかされた。それだけならまだしも、吐精したのか、先走りか、別の液体かはわからないものの、下着がぐっしょりと濡(ぬ)れている気配がする。
「うう……」
――直接さわられてないのに、こんなになっちゃうなんて……どうしようもなく恥ずかしい。
レイモンドは思わず両手で顔を覆った。二十五歳にもなってこんな粗相、穴があったら入りたい。
「感じてくれて嬉しいよ。レイがたくさん気持ちよくなってくれる姿、愛しくてたまらないな」
甘やかな囁きに、指の隙間から恋人の顔を盗み見る。言葉通りの表情で微笑む彼の姿を見れば、いたたまれない心地と羞恥心が薄まった。
――たくさん気持ちよくされて、こうやって甘やかされるの、嬉しい……。出会った頃からずっと、好きな気持ちが増えるばっかりだ。
「……マーヴィン様、大好きです」
「俺も、愛してるよ」
「あっ……」
笑みを深めたマーヴィンは濡れた布地に手をかける。恋人の手によって窮屈さから解放された熱茎がぷるんと揺れた。
「んぁ……っ、くちゅくちゅするの、まってください……っ」
体液でしっとりと濡れた陰茎を大きな手に躊躇(ためら)いもなく握り込まれ、愛撫が開始される気配にレイモンドは小さく身体を跳ねさせる。
「マーヴィン様も、脱いでほしいです」
自分だけ脱ぐのは恥ずかしいと、レイモンドは恋人の服に手をかける。愛しい男はとろけるような笑顔で嬉しそうに頷いた。
「そうだね。君の肌に布地が擦れて痛い思いをさせたくない」
クラクラしそうなくらい色気の滲(にじ)む笑みを浮かべながら、彼は手早く衣服を脱ぎ捨てていく。
――ああ、今日も格好いい。
引き締まった身体にドキドキする。きれいなのに逞しい肉体が驚くほど情熱的であることを知っているからか、腹の奥の方が切なく飢えを訴えてくるようだった。
あっという間に一糸纏(まと)わぬ姿になった恋人の局部は天を仰いで熱く猛(たけ)っている。それが欲しくてたまらない心地になり、レイモンドは小さく喉を鳴らした。
「マーヴィン様の、もう、こんな……」
「ああ。君が可愛いからずっと反応してた。何も心配ないだろう?」
元気だってたくさん証明できるよ、君を困らせない範囲で、と恋人が薄く笑った。困るはずがない、と反射的に思う。
「僕で興奮してくれてるの、嬉しいです。たくさん……僕で、気持ちよくなってほしいな」
はにかみながら笑みを返して、レイモンドは彼の猛りへ手を伸ばす。だが、マーヴィンに腕を掴(つか)まれ、彼の欲望にふれることを阻まれた。恋人の顔を覗(のぞ)き込めば、彼の表情からやわらかさが削(そ)ぎ落とされている。
「すまない。君に幻滅されたくないから、理性が働くうちに準備させてほしい」
「は、い……」
恋人の珍しい顔に驚きつつも、レイモンドは頷く。
――まるで、余裕がない、みたいな……。でも、マーヴィン様に限って?
いっぱいいっぱいの自分と違って、彼はいつだって鷹揚(おうよう)と構えていて、ずっと大人に思えるのに。そんなまさか、と、そうだったら嬉しい、を行ったり来たりする。
「会えない間、ずっと我慢してたから。レイが足りないんだ」
呻くような声が「そうだったら」の紛れもない証拠で、ドキドキした。
「……欲しがってもらえるの、嬉しい」
「君は……どこまで」
ぽろりとこぼれた心の声に、マーヴィンが低く唸(うな)る。その姿にレイモンドは目を奪われた。
――食らいつこうとしてる肉食獣みたいな……剣を握ってる時のマーヴィン様みたいな荒々しさがあって、いい。好き……。
強く求められていると伝わってくる視線が、血管が浮き上がるほどに熱く興奮している怒張が――レイモンドの胸を高鳴らせこそすれ、幻滅なんてとんでもない。
性急な手つきで、マーヴィンはベッドサイドのキャビネットから小さな卵型の物体を取り出した。ピンク色のそれは、潤滑剤が内包された、使いきりの浄化術具だ。
――たくさん、期待していいのかな。
受け入れるための準備にそわそわと浮かれずにいられない。レイモンドの身体への負担を気遣って挿入まで至らない日や一度の交合で終わる日もあるのだ。恋人の優しい配慮は嬉しいけれど――繋(つな)がって熱を感じられる悦(よろこ)びの幸福感を切望して止(や)まない身体は、マーヴィンの情熱を待ちわびてきゅんと甘く疼(うず)く。
「挿(い)れるよ」
「ん、はい……っ」
前回抱き合ってから少し日が空いているためだろう、マーヴィンは浄化術具にたっぷりと潤滑剤を纏わせてくれた。にゅぐ、と慎重な手つきで押し込まれてきたそれを、レイモンドの後(こう)蕾(らい)は難なく呑(の)み込んでいく。
「違和感はない?」
「だいじょうぶ、です」
恋人の息は少し荒いが、レイモンドも呼吸をやや乱しながら返事をした。浄化術具を押し込んできた指は、術の作用が完了するのを待たずに内壁を拡(ひろ)げるように捏ねる動きをみせる。彼の想像よりやわらかかったのか、マーヴィンの表情が嬉しげに緩んだ。
「会えない間も練習してた?」
「ん……っ、はぃ、ちょっとだけ……マーヴィン様みたいに……っ、気持ちよく、できなかっ、た、ですけど……っ、あっ」
しなやかな指が与えてくる刺激に踊らされ、ところどころ語尾が不自然に跳ねた。恋人にはレイモンド自身よりも隅々まで身体を知られているとすら思える。
「たまらないな。指に吸いついてくる。一生懸命に呑み込もうとしていて、可愛いね」
呑み込まされた指が動くたび、ぐちゅぐちゅとはしたない音がこぼれた。浄化術具に内包されていた潤滑剤が溶け出たようだ。
「後ろも、前も、たくさん濡れてる。どちらもとろとろだ」
「きもち、よくて……っ」
後孔は潤滑剤によってぬかるみ、芯を持ち続けた陰茎は先走りの蜜を溢れさせている。透明な蜜は震える肉茎を伝い、後孔までたらたらと滴(したた)り落ちていた。
「でも――」
レイモンドは群青色の眼を潤ませながら、愛しい男を見上げる。
――ずっと気持ちいい。けど、決定的な一押しが、足りない。
「足りないです、マーヴィン様」
後蕾に呑み込んだ指をレイモンドは切なく食い締めた。
浄化術具も、指でほぐすことも、必要な準備であり優しい恋人の気遣いであると理解していても、欲しい気持ちが募ってどうしようもない。
「マーヴィン様のが、欲しくて……もう……っ」
「ああ、俺のレイが本当に可愛い……」
ねだるレイモンドに呆(あき)れるどころか、噛みしめるように唸ったマーヴィンが後蕾から指を引き抜く。
「あ……」
物欲しげにヒクつく窄(すぼ)まりに、猛る情熱の切っ先があてがわれた。これからもたらされる質量を期待して、身体が小さく歓喜に震える。何度も抱かれ続けた身体は、マーヴィンが与えてくれる快感を覚えているのだ。
「欲しいだけあげるよ。俺でいっぱいになって。レイ」
ぐちゅん、とぬかるみとろけた後蕾へマーヴィンの太い先端が埋め込まれた。
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