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オフィスのシンデレラは上司に魔法をかけられる

玉紀 直 / 著
氷堂れん / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-091-9
サイズ 文庫本
定価 754円(税込)
発売日 2018/04/13
レーベル チュールキス

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内容紹介

もっと、おまえに触ってもいいか?
佐藤花は平凡なOLだが、ある日、常務主催のレセプションのアシスタントを命じられる。そんな華やかな場所にどんな格好をしたらいいのかととまどう花に、上司の五十嵐俊輔はその場で彼女の髪型をアレンジ、メイクもしてくれる。俊輔は姉の手伝いでメイク技術を身に着けていたのだ。おとなしい花が自分の手で可愛くなることに喜びを感じる俊輔。「俺しか見られない花、もっと見せてくれ」憧れていた俊輔に情熱的に抱かれ、幸せを感じる花だが、俊輔には毎日お弁当を作る彼女がいるとの噂が!?
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

佐藤花(さとうはな)

23歳。名前も容姿も「普通」の社会人一年生。

五十嵐俊輔(いがらししゅんすけ)

29歳。望月エンタープライズ企画営業部部長。花の上司

立ち読み

   プロローグ


 ——これが私? ……というセリフがある。
 少女漫画や女の子向けの小説などでよく見た記憶がある。たいてい、地味な女の子が半ば強引にオシャレなどをさせられたあとに出るセリフだ。
 いつもの地味な姿とは違って、素敵に変身した女の子になっている……というもの。
 そんなシーンに出会うたび、佐藤花はいつも、これは現実にはありえないと思い続けていた。
 ちょっといつもと違う服を着て髪型を変えたからといって、いきなり綺麗になんてなれるはずがない。
 これは、創り事の世界だからできること。
 ——ずっとそう思っていたのに……
「……これ……、わたし……?」
 自然に、そんな言葉が口から出てしまっていた。
 彼女の目に映るのは、大きな鏡の前でわずかに頬を染める女性。
 見開いた目はぱっちりと大きく黒目が際立ち、驚きで半開きになった唇には艶めくコーラルピンクのルージュがかわいらしい。
 胸元に垂らされた髪は毛先を巻かれ、まるで美容室の広告に出てくるモデルのよう。
 こんな女性は知らない。……こんな、女性らしくなった自分の姿なんて、想像したこともなかった……
「佐藤じゃなかったら、そこに映っているのは誰なんだ」
 横から聞こえる声に反応して顔を向ける。上司の五十嵐俊輔が、テーブルに並べていたメイク道具を片づけている最中だった。
「あの……部長……」
 花は戸惑いが隠せない。二十三年間生きてきてこんなことは初めてだ。
 自分を見て、……かわいい、と……思ってしまった。
(……恥ずかしい……。自分をそんなふうに思うなんて……)
 とんでもない自惚れではないだろうか。こんなこと、絶対に他人には言えない。そう思いつつ、花は唇を引き結ぶ。
「信じられない声を出しているが、そこに映っているのは紛れもなく佐藤本人だ」
 それも信じられないが、もうひとつ信じられないのは、髪を整えてメイクを施してくれたのが、この俊輔だということ。
 花の上司でもある彼は二十九歳。企画営業部の部長で、見た目にもクールで真面目、仕事にも厳しい男性だ。頼りがいがあり指導も丁寧で部下の話もよく聞いてくれる。それに上乗せして端整な男前なので、男性にも女性にも人気がある人物である。
 そんな彼が、仕事に心血を注いでいるかのような勤勉な部長が、まさかこんな器用なことができるとは。
 タオルで手を拭いた俊輔が花のうしろに立つ。両耳の下に軽く指先を添えられて鏡のほうを向かされ、花の鼓動はドキリと大きく高鳴った。
「佐藤は、元がいい」
「え……えっ、あの、元っ……よ、よくないです、そんなっ……」
 花はにわかに慌てる。元がいい、というのは、メイク前でもかわいいという意味にとれる。人並み、くらいには思ったことはあっても、自分の容姿を特別にかわいいと思えたことはないのだ。
 否定をする彼女の言葉を聞くことなく、俊輔は言葉を続けた。
「肌も白くて綺麗だし、瞳が大きくて目がパッチリしている。唇は小さく実に形がいい」
 カアッと頬が熱くなっていく。鏡に映る自分の顔が赤みを帯びていくのを見ているのが恥ずかしくて、花は視線を下げてしまった。
 なんてポジティブな言いかたをしてくれるのだろう。
 肌が白いというのは、昔からインドアな性格のおかげではないだろうか。なんといってもお肌の敵といわれる紫外線を浴びる機会が少なかった。
 瞳が大きくてパッチリしていても、奥二重のせいかなんとなく黒目ばかりが目立ってしまって、小学生のころは意地悪な男の子に「出目金」なんて言われたことがあった。
 唇の形がいいといえば聞こえはいい。が、輪郭がはっきりしすぎているせいで、メイクをしていないときの唇が学生時代に授業で描かされる自画像の、ハッキリしすぎた唇、のように見える。
 花は、自分の容姿を良いように見たことがないのだ。……だが……
「自分にもう少し自信を持っていい。いや、持ってもらわないと困る」
 そう言う俊輔の言葉を聞きながら、花は、少しだけ自信を持ってもいいだろうかと思い始めていた。
 好きな人が、そう言ってくれるなら……
 頬の熱と同じくらい、花の胸が熱くなっていく。
 自信を持ってみよう。
 彼が、こうして自分に手をかけてくれるなんて信じられないことだ。
 おまけに容姿を褒めてくれるなんて、二重に信じられない。
 ポジティブになる花の思考。しかしすぐ、そこに現実が入りこんだ。
 彼が花を綺麗にして、その結果を褒めてくれるのは……
 それが、今の彼の仕事だからなのだ……と——


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