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死に戻りの令嬢は、初恋を忘れたはずの英雄騎士から一途に愛される

すずね凜 / 著
カトーナオ / イラスト
定価 1,320円(税込)
発売日 2026/07/31

内容紹介

結婚一年目を祝うため訪れた思い出のホテルで愛する夫・セドリックとともに殺されてしまったビアトリスは、一年前の結婚式当日に死に戻る。しかしそこにいたのは、生前で相思相愛だった彼ではなく、「結婚しても、君を愛する気はない」と冷たくささやくセドリックだった……。そんな態度に落ち込むも、「私がセドリックを愛する気持ちに何も変わりはない」と前向きに思い直したビアトリスは、一年後のセドリックの命を救おうと決意して――!? 「そんな潤んだ目で見られたら、止められない」初めはよそよそしい態度のセドリックだったのに、ビアトリスは蕩けそうなほどの愉悦に全身を支配されてしまい――。お互いを深く想い合う二人の運命は?

立ち読み

 序章


 その人は森の精霊に願った。
「その時が来たら、どうか私を生き返らせて欲しい」と。
 年取った精霊は答える。
「では、お前の願いが叶った時には、お前の魂をもらう。お前は決して天国にはいけない、地獄に堕ちて天国で愛する人と再会できない。だが、そうすれば、生き返る力を与えよう」
 その人は力強くうなずく。
「約束します」
 愛する人の命を救うために、その人は精霊と契約をかわしたのだ――。
 ――――シュテイン王国に伝わる伝説より


 第一章 人生で一番最高で最悪な日


「見てごらん、ビアトリス。湖に夕陽が沈んでいく。見事な景色だよ」
 ホテルのバルコニーからセドリックが呼んだ。
「今行くわ、セドリック」
 部屋着に着替えたビアトリスは、急ぎ足でバルコニーに向かった。
 バルコニーの手すりにもたれていたセドリックが、ゆっくりと振り返る。
 長身ですらりとした彼は、シャツとトラウザーズというラフな姿でもとても魅惑的だった。彼は今年で二十六歳になるが、年よりもずっと若々しく見える。
 長年近衛中将として王家に仕え、日々鍛錬を怠らないせいか、姿勢がとてもいい。栗色のさらさらした髪、湖よりも深い青い瞳、男らしい美貌。夕日を背景に朱色に染まった彼の姿は、夢のように美しかった。
 ビアトリスはセドリックに寄り添うようにして、眼下の湖水に目をやる。
 今まさに、水平線の向こうに真っ赤な夕陽が沈んでいくところだった。湖面は朱色にキラキラと光っている。
「綺麗――」
「新婚旅行で、ここに泊まって以来だね」
「そうね。あの時も、夕暮れの絶景に感動したわ。昨日のことのように覚えている」
 ビアトリスはうっとりと景色に見惚れた。柔らかな金髪が夕風になびき、菫(すみれ)色の瞳に夕陽が照り映える。
 二人は明日で結婚一周年になる。
 その記念に、新婚旅行で宿泊したこの高級ホテル「リユニオン」に泊まることを提案したのだ。セドリックも快く賛成してくれた。
 新婚当時の思い出がありありと蘇り、ビアトリスの胸は感動でいっぱいになった。
 彼女の横顔をじっと見つめていたセドリックが、小声でつぶやく。
「君の方がずっと綺麗だ」
「もうっ……」
 ビアトリスの頬が、夕焼けに負けないくらい赤く染まった。
 セドリックはビアトリスの腰をぐっと自分の方に引き寄せた。そして、ちゅっと額に口づけ、繰り返した。
「ほんとうに綺麗だよ、私のビアトリス」
「セドリック――あなたこそ」
「明日で、結婚一周年だね」
「ええ……あなたと結婚して、とても幸せな一年だったわ」
「私も、とても幸せだったよ」
「それに来年早々には、あなたの大将昇進が公に発表されるし――ほんとうにおめでとう」
「うん――長年の夢が叶ったよ。それも、君が私を支えてくれたおかげだよ」
「いいえ、セドリックの実力だわ」
 二人は気持ちを込めて見つめ合う。
 耳元でセドリックが小声でささやいた。
「――ベッドに行かないか?」
「え……? で、でも、もうすぐ晩(ばん)餐(さん)の時間で……」
 ビアトリスが躊躇(ためら)うと、
「先に、君を食べたいな」
 そう言うや否や、セドリックはビアトリスを軽々と横抱きにした。
「あっ」
 不意をつかれ、思わずセドリックの首にしがみついてしまう。
「愛している」
 唇を塞がれた。
「んっ……」
 甘い唇の感触の心地よさに、戸惑いも霧散していく。
 セドリックはしきりに口づけを仕掛けながら、そのままベッドルームに向かった。
 二人が泊まっているホテルの最高級スイートは、国王がこの地を訪れるたびに宿泊する極上で豪華な部屋である。ベッドルームも、広々として贅(ぜい)を尽くしてあった。
 高い天井には星座をモチーフにした美しい絵が一面に描かれ、部屋の中央には、孔雀の羽根で飾られた天(てん)蓋(がい)付きの大きなベッドが鎮座している。
 セドリックは絹のシーツの上に、ビアトリスを壊れ物のようにそっと仰向けに寝かせた。
「ビアトリス、ビアトリス」
 セドリックが愛おしげに呼び、ゆっくりと覆い被さってくる。そして、額や頬に口づけの雨を降らせた。
「セドリック、好き、愛しています」
 ビアトリスはセドリックの広い背中に両腕を回し、抱きしめた。
 唇が重なり、セドリックの熱く濡れた舌が唇を割って忍び込んだ。
「んんぅ、んっ」
 セドリックの舌が、唇の裏側から歯列、口蓋、喉奥へと、丹念に探ってくる。舌の上の感じやすい箇所をぬるりと舐(な)められると、背中がゾクゾク震えた。溢(あふ)れる唾液を啜(すす)り、セドリックの舌がビアトリスの舌を搦(から)め捕る。強く吸い上げられると、うなじのあたりから甘い刺激が全身に広がり、四肢から力が抜けていく。
「は、っふぁ……あぁん」
 ビアトリスは悩ましい鼻声を漏らしながら、彼の舌に応えて自分からも舌をうごめかした。
 セドリックの両手が顔を包み込み、さらに深い口づけを仕掛けてくる。
 くちゅくちゅと舌が絡み合い唾液の弾ける音が、ビアトリスの脳内にまで響いてくる。
「ぁっ、んぅ、ふぁ……んん」
 互いに夢中になって舌を味わっているうちに、ビアトリスの下腹部の奥がじくじくと疼(うず)いてくる。
 口づけを仕掛けながら、セドリックの右手がビアトリスの部屋着の前釦(ぼたん)を器用に外していく。するりと部屋着が脱げ落ち、胸元が露わになった。ふくよかな乳房をやわやわと揉みしだかれ、掌が乳(にゅう)嘴(し)を擦るように動く。ツンとした甘い痺(しび)れが走り、ビアトリスの腰がびくりと浮いた。たちまち乳首が固く凝ってくる。すると、セドリックはぷっくりと勃(た)ち上がった先端を、指先で円を描くように撫で回し、時折きゅっと摘(つま)み上げたりと、巧みに刺激してくる。
「あっ、んん、んっ」
 いじられるたびに、ぴくんぴくんと全身が震える。媚肉がきゅうんと締まり、せつなさが込み上げてしまう。ビアトリスの敏感な反応に、セドリックは唇を離して熱っぽい声でささやく。
「もう感じている?」
「いやぁ……」
 ビアトリスは恥ずかしくて、顔を赤らめることしかできない。
「ふふ、いつまで経っても恥ずかしがり屋さんだね」
 セドリックは嬉しげに含み笑いし、両手で乳房を持ち上げて寄せ上げ、赤く色づいた蕾(つぼみ)に交互に口づけした。濡れた唇の感触に、身震いがするほど感じてしまう。
「やぁ、あ、は、はぁん」
 痺れるような刺激が次々に下腹部の奥を襲い、膣(ちつ)襞(ひだ)がうねうねと蠕(ぜん)動(どう)を繰り返し、そこに快楽が溜まっていく。せつなくて、もじもじと太腿を擦り合わせていると、
「気持ちいいかい?」
 セドリックの右手がそろそろと下腹部に下りていき、秘所に触れてきた。花弁をぬるりと触られただけで痺れるような快感が走り、ビアトリスは背中を仰け反らせ、甘い嬌声を上げた。
「はぁんっ」
「もうこんなに濡れている」
 セドリックが掠(かす)れた声を出し、綻(ほころ)んだ花弁をくちゅくちゅと上下に撫でる。濡れた指先が鋭敏な秘玉に触れると、鋭い愉悦が走り、腰が大きく跳ねた。
「はあっ、あっ、も、もう……セドリック、お願い……」
 ビアトリスは息を乱して腰をくねらせて訴える。
 官能の塊のような花芯をいたぶられると、痛いほどの愉悦が繰り返し襲ってきて、両足が誘うように開いてしまう。
「もう、欲しい?」
 セドリックが左手でビアトリスの髪を撫で、表情を窺う。
「……ほしい……わ」
 ビアトリスはあえかな声で答える。
 セドリックの指が秘所から抜けていき、代わりに彼の腰が両足の間に押し入ってきた。
 潤み切った割れ目に、熱く昂(たかぶ)った肉塊が押しつけられる。
 その感触だけで、全身が悦(よろこ)びにおののく。
「あっ……ん」
 セドリックの太くて硬い欲望がぐぐっと押し入ってくる。笠の開いた先端が狭い入り口を押し広げて侵入してくると、強い快美感に背筋がじーんと痺れた。
「はあっ、あ、あ」
 疼き上がった内壁をずぶずぶと擦り上げながら、肉楔(くさび)が最奥まで届く。
「あ、あ、奥、まで……」
 亀頭の先端が、さらに奥を切り開くように突いてくると、それだけで快楽の極みに飛ばされそうになる。セドリックは大きく息を吐き、
「君の中、熱くてよく締まる――最高だ」
 と睦言をつぶやき、ゆっくりと抽挿を開始した。
「はぁっ、あ、はぁ、あぁっん」
 脳裏が快感で白く染まる。ビアトリスは両手できつくセドリックの背中にしがみつき、すらりとした両足を彼の腰に巻きつけ、さらに結合を深めようとした。
 セドリックの抜き差しに合わせて、媚肉がきゅうっと収縮を繰り返す。
「く――そんなに絞めたら――」
 セドリックが息を乱した。
 彼の腰の動きが、次第にねっとりとしたものに変わっていく。最奥に先端を届かせ、子宮口の手前あたりを捏(こ)ねるように押し回されると、得も言われぬ喜悦が生まれてきて、意識が飛びそうなほど気持ちいい。
「あっ、あ、奥、あ、それ、だめ……っ」
 ビアトリスが切れ切れに訴えると、
「これが悦(い)いのだろう?」
 そうつぶやいて、セドリックは執拗にビアトリスの弱い箇所を攻めてくる。結婚して一年、セドリックはビアトリスの身体を知り尽くし、幾つもの性感帯を開発した。どこをどうすればビアトリスが悦ぶか、手に取るようにわかっているのだ。
「やぁ、あ、も、あ、もう、だめ、もう……っ」
 隘(あい)路(ろ)に溜まった快感が、堰(せき)を切って溢れそうになる。
 ビアトリスは固く目を瞑(つぶ)り、気持ちいいことだけに集中する。濡れ襞が猥(みだ)りにうねり、セドリックの肉胴をぎゅうっと咥(くわ)え込んだ。
 セドリックが切羽詰まったように低く呻(うめ)く。
「っ――一度、達(い)っていいか?」
「はぁ、あ、私も、もう……来て……あぁ、セドリック、来て……っ」
 ビアトリスはセドリックの首に両手を巻きつけ、強く抱き寄せた。
「達くよ、ビアトリス――っ」
 セドリックがぐいっと先端を捩(ね)じ込んだ。
「ああああっ、ああ、あ、達く……っ」
 ビアトリスはびくびくと腰を痙攣させながら、絶頂を極めた。熟れ襞が断続的に肉棒を締め付ける。その淫らな動きに、セドリックも欲望を解放した。
「っ――」
 ずん、と腰を大きく突き入れると、セドリックはビアトリスの最奥に白濁液を噴き零(こぼ)した。
「……はぁ、あ、はぁあ……っ」
 セドリックが全てを出し尽くすまで、ビアトリスの内壁は強く収(しゅう)斂(れん)を繰り返した。
「――は、あ」
 セドリックが動きを止め、肩で大きく息をする。
「は、はぁ、は……ぁ」
 ビアトリスは浅い呼吸を繰り返しながら、セドリックを見上げる。まだ繋がったまま、こうして快楽の余韻に浸っている時間が、たまらなく幸せだ。
「――愛しているよ」
 セドリックがそっと唇を寄せてくる。
「私も、愛しているわ」
 二人は啄(ついば)むような口づけを交わし、笑みを浮かべる。
「この一年、私は国防に追われて忙しい身だったが、周辺国との関係も安定してきた――だから」
 セドリックが甘くささやく。
「そろそろ、本腰を入れて子作りに励もうか?」
「私たちの赤ちゃん――すごく欲しいわ」
 それこそ、待ち望んでいたことだ。
 愛する人の子どもを宿す――これ以上の幸せがあるだろうか。
 この先の二人の人生には幸福しか待っていない――ビアトリスはそう信じていた。

 ビアトリスは、ふわりと目を覚ました。
 ホテルの食堂で素晴らしい晩餐を心ゆくまで楽しみ、部屋に戻ってから再び身体を重ねた後、互いに生まれたままの姿で抱き合ったまま、眠りに落ちていたのだ。
 喉がひどく渇(かわ)いている。
 ビアトリスはちらりと傍のセドリックの顔を見遣った。
 規則正しい健やかな寝息を立て、彼はぐっすりと眠っている。眠っている時のセドリックは、無防備で少年の面影を残している。普段の男らしく頼り甲斐のある彼も好きだが、このあどけなさのある寝顔も愛おしい。
 ビアトリスは彼を起こさないように、そろそろと身を起こした。
 床に落ちている寝巻きを拾って羽織り、足音を忍ばせて隣室に向かった。暖炉の上の置き時計に目をやると、ちょうど零時を過ぎる頃だった。
 テーブルの上の水差しに手を伸ばし、コップに水を注ぐ。
 ソファに腰を下ろし、水をこくこくと飲む。
「ふう……」
 心身ともに幸福感に満たされ、ビアトリスはセドリックと結婚するまでのことを思い出していた。

 ――ビアトリスの生家のアドキンズ家とセドリックの生家のハミルトン家は、両家の領地に接した北の土地の所有を巡って争い、先々代からの犬猿の仲だった。
 両家の不和は使用人たちにも浸透し、両家の人間は至る所で諍(いさか)いを起こしていた。
 一年前、街の通りでアドキンズ家とハミルトン家の馬車同士が、道を譲れ譲らぬで争いを起こした。それは刃(にん)傷(じょう)沙汰まで発展し、両家に重傷者が出たばかりか、通行人が巻き込まれ怪我を負う事態となった。
 前々から両家の不仲に頭を悩ましていた国王陛下は、第三者にまで被害が及んだこの事態を重く見た。
 国王陛下は、両家の怨(えん)恨(こん)を晴らすべく、アドキンズ家の長女ビアトリスとハミルトン家の当主セドリックとの結婚を厳命したのだ。二人は当時、十八歳と二十五歳という適齢期であった。
 両家に激震が走った。しかし、王命に逆らうことはできない。
 その年の暮れ、二人の結婚は粛(しゅく)々(しゅく)と執り行われたのである。
 両家は望まない結婚を強いられたと、ビアトリスとセドリックを憐れみ同情した。
 だが、実はビアトリスとセドリックは、幼い頃から密かに愛を育くんでいたのである。
 二人にとってこの結婚は、願ったり叶ったりと言えた。
 相思相愛の結婚であったのだ。

(いろいろあったけれど、愛する人と結ばれて、今はこんなにも幸せ……)
 ビアトリスは残りの水を飲み干すと、寝直そうと寝室に戻った。
 扉を開くと、どこからか風が吹き込んでくる。今は十二月。風は身震いするほど冷たい。
 なぜか窓が開いてしまったらしく、月明かりが部屋の中に差し込んでいた。ベッドの天蓋幕が巻き上がっており、月の光がベッドの上を照らしていた。
(え……? 私、幕を巻き上げたかしら?)
 かすかに胸騒ぎがした。
「セドリック?」


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