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お前は俺のモノだろ?2~俺様社長の独占溺愛~

あさぎ千夜春 / 著
大橋キッカ / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-685-0
サイズ 四六判
ページ数 320ページ
定価 1,430円(税込)
発売日 2024/06/28

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内容紹介

愛してる。幸せになろうな。
八年の両片思いの末に結ばれた海翔と日花里。しかし日花里の実家に結婚の挨拶に行くと、海翔の素行を理由に反対されてしまい!? 海翔が仕事で挽回することを固く決意した矢先、女性CEO・豊永志穂との大きな仕事が舞い込んでくる。彼女は海翔に憧れ若くして起業したらしく、日花里を目の敵にしているようで……。「俺はお前なしの人生なんて、考えられない」身も心も結ばれたはずなのに、周囲が二人を引き離す――!? メガヒットのすれ違いラブ、ファン待望の第2巻!

立ち読み


   結婚させてください


「日花里(ひかり)さんと結婚させてください」
 町田(まちだ)家の応接間に響いた決意に満ちた声。それは藤堂海翔(とうどうかいと)、満を持しての発言だった。
 だが日花里の父から返ってきたのは、
「結婚はまだ早いんじゃないかな」
 という言葉で――。
「「えっ」」
 海翔と日花里は肩を並べたまま、ふたり凍り付いてしまった。



 十二月の暮れ、ROCK・FLOOR社はクリスマスとともに仕事納めを迎えた。クリスマスから年越しに向けて街並みのディスプレイも変化し、すっかり年の瀬の雰囲気だ。
 藤堂海翔と町田日花里の両名は、たくさんのお土産とともに新幹線に乗り込み、日花里の実家がある広島(ひろしま)市内のマンションに向かった。
 帰省の目的はただひとつ。日花里の両親に結婚の許しを得ることである。
 すでに海翔の両親には挨拶を済ませているし、正直言って日花里はまったく不安視していなかった。海翔と付き合っていることは祖母を通じて両親に夏の段階で伝わっていて、日花里が海翔の住む部屋に完全に引っ越すことを電話で伝えたときも、驚いてはいたが反対されることもなかった。
 だから海翔も落ち着いて、応接間でお茶を飲み軽く歓談した後、日花里の父に深々と頭を下げ、悠々とした態度で結婚の許しを申し出たのだ。
「今日はご両親に、結婚のお許しをもらうために参りました。日花里さんと結婚させてください」
 それは隣に座っていた日花里から見ても、納得のタイミングだった。
 素直に気持ちを伝えた夏、そして恋人として過ごした秋。結婚をリアルに意識した冬――。
 海翔はとりあえず籍だけでもすぐに入れたいと言っていたが、なかなかその機会は訪れなかった。純粋に仕事が忙しかったのだ。オフなど数えるほどしかなかった。もちろん籍など届を出せばすぐに作れるものだが、ふたりのことをなにひとつ雑に済ませたくないというのは共通認識で、気が付けば暮れが目の前に迫っていた。
 日花里としても、八年も片思いをしていたのだから若干気持ちが緩んでいたというか、入籍は今すぐでなくても、春でも夏でもいいかなぁ、なんて思っていたのだ。だが海翔から『そうだとしても、ご両親に挨拶は済ませるべきじゃないか?』と提案されて、そうかも、と思い決断したのである。
(完璧な『結婚の挨拶』でしたよ、海翔さん!)
 海翔の隣に座っていた日花里は、そんな気持ちを込めて、隣に正座している彼の膝にそっと触れる。あとは流れ的に父が『もちろんだよ。幸せになりなさい』と返事をして、なんやかんやのハッピーエンドのはずだ。
(海外ウエディングも素敵だけど、和装も捨てがたいなぁ~。白無垢着てみたいなぁ~……おばあちゃんに見せてあげたいなぁ~)
 なんて、のほほんと考えていた次の瞬間、
「やっ、やぁ~……結婚はまだ早いんじゃないかな」
 日花里の父はしどろもどろになりながらも、きっぱりはっきりと言い切ったのである。
「えっ?」
 夢見心地で正座をしていた日花里の口から、思わず驚きの声が漏れた。
「お、お父さん……? 今なんて……?」
 聞き間違いか、もしくは行き違いがあったのだろうか。
 眼鏡の奥の瞳をまたたかせ、首をかしげたところで、父がうにゃうにゃと唇を歪(ゆが)めながら、どこか言いにくそうに言葉を続ける。
「や、反対してるわけじゃないんだよ。お前の高校の同級生の子たちだって、地元に残ってる子は結婚してるし、お父さんは心から日花里ちゃんの幸せを願ってる」
 日花里は父の発言を聞きながら、眼鏡の奥の瞳をぱちくりさせる。
「だったら……」
「でも、きみたちはまだお付き合いを始めて半年も経ってないんだろ? もう少し慎重になったほうがいいんじゃないかなってね。それだけのことだよ」
 そして父はかけていた眼鏡を指で押し上げると、もうこれ以上話は聞かないし、この話は終わったよと言わんばかりの笑顔になり、
「さて、お母さんが腕によりをかけて作ってくれた、ご馳走を食べよう!」
 と、ぱんっと手を叩き、海翔の発言を強制的に終わらせてしまった。
「えっ、お父さん……?」
 戸惑う日花里が父から隣の母へ視線を向けたその瞬間、
「そうね~! 今日はまつたけたっぷりのすき焼きよっ。日花里ちゃんも手伝ってくれる?」
 母もなんにも知りませんよと言わんばかりの態度で、いそいそと立ち上がり応接間を出ていってしまった。どうやら母はこうなることを事前に知っていたようだ。
「えっ……ええっ……?」
 だが反対される可能性を微塵(みじん)も考えていなかった日花里は絶句し、それから隣の海翔の顔を見つめる。
「海翔さん……」
 海翔は茫然(ぼうぜん)自失としていた。普段の海翔ならもっと食い下がったのではないかと思うが、やはり彼も日花里と同じ気持ちだったようだ。顔から血の気は引いていたし、視線は定まらずうろうろしていた。いつも自信満々の藤堂海翔らしからぬ態度である。
(あぁ……あからさまに動揺してる……)
 海翔はかろうじて笑顔を浮かべ、
「すき焼き楽しみです……」
 と答えていたが、膝にのせていた手はかすかに震えていたし、シャープで男らしい頬も引きつっていた。無言でそうっと彼の膝に手をのせると、海翔は日花里に向かってほんの少しだけ苦笑いして、
「お母さんが呼んでるだろ?」
 と日花里の背中を押す。
「ああ、うん……」
 こちらを見つめる瞳は、気を使わなくていい、大丈夫だと語っていたが、日花里としてはとうてい納得がいかない話だった。
(なんで、どうして、結婚しちゃダメなの?)
 付き合いを反対されたわけではない。ただ、結婚は少し早いんじゃないかと言われただけ。
 それでも両親の態度は日花里の柔らかな胸に棘となって突き刺さった。
(こんなの全然納得できないよ……)
 日花里は唇をかみしめながら海翔の背中にそっと手のひらをのせ、後ろ髪を引かれつつも、母が待つキッチンへと向かったのだった。

 その日の夜――。
「ここが日花里の部屋かぁ……」
 風呂上がりの海翔が、目をキラキラさせながら部屋の中を見回す。
「大学進学直前に引っ越してきたので、帰省したときしか使ってないですけどね」
 日花里は少し照れつつドアを閉めた。
 実家にある日花里の私室は、ベッドとクローゼットに書き物机、本棚と飾り棚にインテリア雑貨というごくシンプルな部屋だ。ベージュを基調にした全体的に柔らかな雰囲気である。
 昔は広島北部の、祖母宅の三軒隣の一戸建てに家族三人で住んでいたのだが、日花里の大学進学が推薦で決まると同時に家を売り、市内に中古のマンションを買って引っ越してきたのだ。
「卒業後は、戻ってくることを期待されてたんじゃないか?」
 海翔は窓辺に置かれたベッドに座って、長い足を組む。
 なんのへんてつもない部屋に、Tシャツにスウェットでもゴージャスな海翔がいると違和感しかないのだが、彼はどこか懐かしそうな目をしていた。
(海翔さんは大学以前の私のことを知らないのに……なんだか不思議な感じだな)
 時をさかのぼっているような不思議な感覚に、日花里の心も少しだけ浮ついている気がする。
「それは……そうですね」
 苦笑しつつ、海翔の隣に腰を下ろすことにした。
「就職も地元で探したらって言われてたんです。おばあちゃんから公務員も勧められてたし」
「じゃあなんで……」
 膝の上で頬杖をついていた海翔は不思議そうにつぶやいて、なにかに気づいたようにハッとした。
「もしかして、俺が東京(とうきょう)にいたからか?」
「……はい」
 日花里は顔を赤く染めながら、こくりとうなずいた。
 そう、地元に帰ったらもう二度と海翔に会えないと思うと、とても広島で就職しようという気になれなかったのだ。
「卒業しても、東京にいたら、サークルのOB会とかで海翔さんに会えるかなって……」
 口に出したら一気に恥ずかしくなったが、事実なので仕方ない。我ながらものすごい乙女的発想だったなと、当時を懐かしく思いながら日花里はうなずく。
 苦労して入った会社は入社して半年で倒産したが、ROCK・FLOOR社に誘ってもらったおかげで、毎日海翔に会えるようになった。立ち直れたのは海翔のおかげだ。人生万事塞翁(さいおう)が馬。禍福(かふく)はあざなえる縄のごとしである。
「そっかぁ……俺と離れたくなかったのか。ふぅん……かわいいやつ……」
 海翔は日花里の言葉を聞いてあからさまに頬を緩ませると、唐突なタイミングで日花里の肩を抱き寄せる。
 日花里が十八歳の春からずっと海翔に片思いをしていたことは知っているはずなのに、なぜ今初めて知ったような顔をして、ニヤニヤするのだろう。
「もうっ、調子にのらないでください」
 照れくささもあって、日花里は頬を膨らませ海翔の胸のあたりに頭をぶつける。
 ぽすんと触れる海翔の胸筋は厚くたくましい。
「ははっ、ごめん、ごめん。そんな猫みたいに体当たりするなって」
 海翔は苦笑しつつ、日花里を両腕で抱きすくめた。
 彼の指が優しく日花里を撫でる。ただ触れているだけなのに、それだけでじんわりと心があったかくなる。
 お互いパジャマ姿で、東京にいればそれはいつもの体験なのだが、この部屋にいるとなんだか学生時代に戻ったような気がして、胸がドキドキしてしまうのだった。
 そうやってしばらくお互いの体温を確かめるよう、抱き合ったりイチャイチャしたりしていると、
「それで……お母さんはなんて?」
 ふと、海翔がどこか覚悟したように、耳元で尋ねた。
 パジャマ越しに感じる鼓動が、いつもより少し早い。
「あ……」
 やはり気にしていたのだ。
 胸にぴゅうっと冷たい隙間風が吹いた気がして、日花里は寂しくなってしまった。
 結婚の申し出をいったん却下されたあの後、町田家では表面上は楽しい宴席が設けられ、両親は海翔に勧める以上にアルコールが進んでしまい、早々に寝室に退散した。
 アルコールに強い海翔は顔色ひとつ変わっていなかったが、正直酔えなかったのではないだろうか。
「……」
 海翔を傷つけたくない。
 なんと言ったものかと悩みながら無言で視線をさまよわせると、
「――俺の素行のせいか」
 彼は低い声でささやいた。目を伏せた海翔の長いまつ毛が、頬に影を落としている。
 彼が落ち込んでいると思うと、胸の奥がぎゅうっと締め付けられるように苦しくなった。
「えっと、その……両親からしたらRIRIさんのこととか、ちょっと前に起こったことみたいで。彼女のことは誤解だって言ったんですけど、その……まぁ、ちょこちょこワイドショーのお世話になっているイメージが離れないみたいで……」
 日花里はしどろもどろに答える。
 そう、すき焼きの準備をするためにキッチンに向かった日花里は、こっそり母に尋ねたのだ。
『どうしてお父さんは、結婚をすぐに許してくれなかったの?』と。
 すると母は少し困ったように、
『あれだけモテる人だと、結婚しても浮気されるに決まってるから、日花里ちゃんがかわいそう、だって……』
 と、教えてくれたのである。
 娘がかわいそうだと思うなら結婚を許してほしいが、父の気持ちもわからなくはない。
 事実、日花里だって海翔は恋多き男で、自分など相手にするはずがないと長年思っていたのだから。
 だが思いが通じ合って、彼の優しさや真摯な思いを知ったとき、日花里は海翔を一生信じようと決めた。たとえ世界中の人が藤堂海翔を非難するようなことがあったとしても、自分だけは海翔の味方でいると。
「海翔さんは浮気なんてしないって言ったんですけど……」
 海翔に関しては、あくまでもテレビや雑誌で作られたイメージが先行する。そのイメージが海翔を『こうに違いない』と形作る。両親が見ている海翔は、日花里が好きになった『藤堂海翔』とはだいぶかけ離れているのだ。
 悔しくて、じれったい。
(海翔さんはそれだけの人じゃないのに……)
 不服そうに唇を引き結ぶ日花里に、海翔はゆるく首を振った。
「いや、俺の今までの生活態度が悪いんだ。週刊誌に適当なこと書かれても会社には影響ないし、どうでもいいと思って改めなかったしな。ご両親が結婚生活を危惧するのは当然だろう」
 そう言って海翔は、さらに強く日花里の体を抱きしめる。
 口では『当然』と言っておきながら、どこか寂しそうな気配があって、切なくなった。
 この人が傷ついていると思うと、日花里はたまらない気持ちになる。
(私だけは……絶対に、絶対に、海翔さんの味方ですからね……!)
 そう思いながら、日花里もそうっと海翔の背中に腕を回す。
 海翔も日花里も、新しいパジャマに身を包んでいて、新品の綿の匂いがほんのりと香る。
 同じ家に両親が寝ていることを考えると、ちょっとドキドキするが、日花里の部屋は離れているし、べろんべろんに酔っぱらった両親が起きてくる可能性は低いだろう。
 手のひらで彼の背中を撫でるたび、海翔が大きく息を吸う。彼の体に流れる異国の血のせいなのか、激しいトレーニングをせずとも筋肉質で柔らかい。抱きしめられると一切の不安が消えていく。日花里にとって海翔は精神安定剤のようなものなのだ。
「ごめんな」
 海翔は腕の中の日花里に、すり、と頬をすり寄せた。
「そんな……謝らないでください」
「過去に戻れるなら、二十歳の俺をぶん殴りたいよ。その生活態度を改めろって。じゃないと将来めちゃくちゃ困ったことになるぞって」
 日花里を抱きしめたままため息をつく海翔だが、日花里はクスッと笑って海翔を見上げる。
「二十歳でいいんですか?」
「――」
 日花里の指摘に海翔は無言で視線をさまよわせる。顔には『墓穴を掘った』と書いてあった。
「本当はいつ?」
 しつこく重ねると、
「ちゅ……中学生くらい……」
 ぼそぼそと海翔がつぶやいた。
「中学生が不純異性交遊? やだ~……フケツです」
 日花里が海翔と出会ってすぐの頃、海翔は大学内で驚異の七股事件を引き起こしていたので、物心ついたときからモテていたのだろうとわかっていたが、まさか中学生で爛(ただ)れた性生活を送っていたとは思わなかった。
 すると海翔は美しい眉尻を下げ、
「フケツってさぁ~……だって仕方なくないか。中学生男子だぞ? エロいこと考えてないわけないだろ。女の子はみんな俺に優しいし……流されても仕方ない」
 ちっとも仕方なくはないのだが、彼は笑いながら日花里をベッドの上に押し倒した。
 押し倒すと言っても、優しくだ。怖いことはなにもない。
 日花里は笑いながら首を振った。
「考えるのと、実際に行動に移すのとは大きな違いがあるんですよ」
「それはそうだ」
 海翔はクスッと笑って、それから日花里のかけている眼鏡を外し、布団の横に置いてあったティーテーブルの上にそれを置いた。
「ごめんな。俺が子供の頃から飛びぬけて行動力のある、いい男だったばっかりに」
「ばか……」
 日花里の少し甘えたつぶやきを聞いて、海翔のウェーブがかかった黒髪がはらはらと零れ落ち、明るい茶色の目がきらりと光った。海翔は祖父がドイツ人なので、光の加減で時折瞳の色が緑色に輝くことがある。
 こういうときは、特に。
 押し倒された日花里は、海翔の精悍(せいかん)な頬を両手で挟んで、目を細める。
「悔しいけど、今の海翔さんを作ったのは、そういう過去なんだと思いますよ。他人に優しくて、困ってる子を放っておけなくて、どんな女の子にも気安くて……勘違いさせちゃうんだから」
 上京したての日花里は、どんなに好意的に見ても田舎から出てきた地味でダサい女の子だったはずだ。だが海翔は日花里の容姿だとかスペックだとかは一切関係なしに、困っているからと当たり前のように助けてくれて、その後もずっと見守ってくれていた。
 あれで好きになるなと言われるほうが無理である。
 そして言い寄られれば強く拒絶できないのが、当時の海翔という男だったのだろう。
「日花里……」
 思わぬ日花里の好意的な発言に、海翔は一瞬嬉しそうな顔をしたが、
「でもまぁ、複数同時進行は普通にクズです。不誠実です。刺されても仕方ないですよね」
「グッ……」
 日花里の手のひら返しに、がっくりとうなだれてしまった。
「はい……おっしゃる通りです。反省してます」
 そしてそのまま海翔は、日花里の頭のてっぺんを大きな手でよしよしと撫でながら、首筋に顔をうずめる。
(ちょっと強く言いすぎちゃったかな……)
 少なくとも驚異の七股事件以降は、同時進行のお付き合いはやめたし、あれから八年以上経っている。今の海翔は日花里にとっては誠実な恋人だ。
「海翔さん……」
 日花里は自分がされているように彼の後頭部に手を回し、優しく髪を撫でる。生まれて一度も染めたことがない美しい黒髪は優雅なウェーブがかかっていて、指にからませるとするりと滑り落ちていく。
 そうやって何度か撫でていると、
「ん……」
 海翔がかすかに身じろぎをして、体を寄せてきた。
 そして次の瞬間、日花里の太もものあたりにゴリッとしたなにかが押し当てられる。
「……なにか、当たっているような」
「まぁな。当ててる」
 海翔はクスッと笑って、それから日花里の首筋に唇を押し当てた。
 ちゅっと吸われて、体がビクッと震える。
「か、海翔さん……?」
「シタい」
 そして海翔はベッドの上に乗り上げると、日花里を熱っぽい眼差しで見下ろしてきた。
「し、したいって……」
 甘えを含んだ海翔の声に、日花里の体は当然のように反応してしまう。
「今日、実家に帰るって決めてたから、毎日忙しかっただろ?」
 彼の指がパジャマの裾に入ってきて、日花里は思わず唇を引き結んだ。
 そう、海翔の言う通り年末進行のあれこれがあり、海翔は毎日深夜まで働いており、日花里も諸諸(もろもろ)の事務仕事でぐったりで二週間以上体を重ねる暇がなかったのだ。
「お前にずっと、触りたかったよ」
 海翔はそう言って、日花里のナイトブラの表面を指でなぞり、先端を軽く指でこする。
「あっ……」
 全身に淡い快感が広がり、思わず声が漏れる。拒否しない日花里の反応を見て、海翔は先に進んでもいいと確信したらしい。彼はパジャマを首元までたくしあげると、ナイトブラの上から日花里の乳首を口に含み、もう一方の乳首は指で軽くつまみ、揺さぶり始めた。
「んっ……」
 両親の寝室はリビングの向こうだ。声は聞こえない。わかっているが、やはり抵抗がある。緊張する日花里の唇から、吐息が漏れた。
「そうそう。一応実家だから声は我慢して」
 一方海翔は少し楽しそうに笑って、それからナイトブラをたくしあげ日花里の胸を両手で包み込む。ボリュームのある日花里の胸の肉が、海翔の指の間からあふれるように盛り上がった。
「わぁ……えっろ……」
 海翔の舌は日花里の乳首を柔らかく口に含み、吸いあげながらじゅるじゅると音を立てる。
「ん、あ……はっ……」
 全身に淡い快感がしびれるように広がっていく。
 実家でセックスすることに気まずさがあるはずなのに、日花里の体は海翔にすっかり開発されていて、彼に触れられるだけでほどけてしまうのだ。
「日花里、キスしよう」
 海翔がささやき、覆いかぶさるように口づける。
「ん、う……」
 唇を吸われて返事ができない。もごもごしているとそのまま口内に彼の舌が滑り込んできた。口蓋を舐め上げられ、何度も方向を変えて唇がむさぼられる。
 海翔の舌からはかすかにミントの香りがする。さわやかで甘い海翔の味。
(気持ちいい……)
 海翔とキスをするたび、いつも思う。ずっとずっと、死ぬまで一生こうしていたいと。
(海翔さん、好き……大好き……)
 海翔を愛する思いが甘酸っぱく胸に広がっていく。
 もっとしたくて彼の首の後ろに腕を回すと、海翔はウエストに手をかけて日花里のパジャマのズボンをするするとずりおろし、当然のように下着にも手をかけた。
「あっ……待って、海翔さん、電気っ……」
 天井には煌々(こうこう)と明かりが灯っている。
 日花里は慌てて手を伸ばし、サイドテーブルに置いてあった照明のリモコンを操作する。
「真っ暗にはするなよ。お前の顔が見えなくなる」
「……はい」
 ちょっと照れながら明かりを最小にしぼっていくと、淡いオレンジの光が海翔の背中越しに目に入る。
 海翔は日花里の下着を下ろし、あだっぽく目を細めた。
「もう濡れてる」
「そ、そんなこと言わないでください……」
「なんで?」
 海翔は日花里の立てた膝の内側にキスを落とすと、足を左右に開き、そのまま身をかがめて日花里の秘部に顔を近づけた。
「俺を待ち望んでくれてるんだ。嬉しいに決まってるだろ」
 指が花びらをかきわけ、舌がねっとりと這(は)い回る。海翔の舌は熱く分厚い。たちまち日花里を高みへと連れていく。
「んっ、あっ……んっ……」
 声を漏らさないように手の甲を唇に押し当てると、海翔は太ももを抱えるようにして舌を押し付けた。
 じゅるじゅると音を立てながら、海翔の舌が動き回る。彼の歯が膨れ上がった花芽をかすって、腰がビクンと揺れる。
「ん、ンっ、あっ……」
「日花里、しーっ……静かに……」
 海翔は少し苦しげにささやくと、手の甲で濡れた唇をぬぐい体を起こす。そして右手の人差し指と中指を蜜口に押し当てた。
「指、入れるぞ」
「あぁ……」
 日花里の蜜壺は海翔の指をやすやすと飲み込む。彼の指は長く、軽く揺さぶるだけで的確に日花里のいいところをこすり上げる。
「あ、あっ……だめっ……」
 静かにしろと命令しておきながら、海翔の指も舌も日花里をちっとも気遣ってくれない。
 緩急をつけて弱いところを責められ続け、自分の意思とは関係なく、全身がわななく。
「あ、あ……ッ」
「イケよ」


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