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野獣な若頭はウブな彼女にご執心2

寺原しんまる / 著
藤浪まり / イラスト
定価 1,320円(税込)
発売日 2024/06/28

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内容紹介

お前は俺の妻。永遠に俺のモノや
極道から足を洗い、今や実業家として世界を股にかけた活躍をしている尾乃田の妻として、幸せな毎日を過ごす雅姫。若い新妻を溺愛する尾乃田に、毎晩淫らに愛を注がれ、充実した日々を送っていたある日、尾乃田のヤクザ時代の兄弟分が現れて、彼の手を借りたいと言って!? 不安を覚える雅姫を尾乃田は情熱的な口づけで生涯の愛を誓い、欲望に滾った剛直で妻を貫く。「ここに種付けをしてやる! 孕めよ……雅姫!」カリスマ元ヤクザの一途すぎる獣欲!

立ち読み

 序章


 結婚式を控えた花嫁は皆、緊張するものだろう。一生に一度の(最近はそうでもないが)晴れ舞台で、お姫様のようなドレスを着て来賓から祝福される主役になる。
「お姫様のようなドレスはまだいい……。けど、これは――」
 ヴェラウォンで特注したウエディングドレスを着た雅(まさ)姫(き)は、花嫁の控え室の大きな鏡に映る自分を唖然として見つめる。この背中が大きく開いた長袖ウエディングドレスだけでも、新郎――尾乃田(おのだ)がデザイン変更を希望し、驚くほどの金額が嵩んでいた。
 それだけではない。かなり重大なものが雅姫の頭、耳と胸元に光っていた。
「……だから、ハリウッド女優のレッドカーペット登場じゃないって」
 無数のダイヤモンドが使われたティアラは、何処かの王族の結婚式で見たことがありそうな作りだ。そして胸元で目映く輝く『レースオブライト』と名付けられたダイヤモンドのチョーカーは、実際にレッドカーペットで使用されたと聞かされた。耳には二十七カラットのダイヤモンドが光り輝く。そして控え室の外では警備員が立っていた。勿論、このジュエリーを警備するためだ。
「もう……本当に無理!」
 雅姫は普通の花嫁が感じる緊張とは別のものと闘っている。
 尾乃田と同棲してから神戸(こうべ)時代を含めば四年は経っているだろう。
 雅姫は関東の地方都市の一般家庭で育った。別段裕福でもなく、地方公務員の父親とパート勤務の母親を両親に持ち、兄が一人いる何処にでもいる四人家族だった。
 尾乃田は世界的に事業を展開している会社の経営者だ。使っても使っても減る様子のない資産は、どの様に管理されているのかを雅姫は知らない。ただ、真っ当な手法だということは理解している。
 この埋めようのない金銭感覚の差は、尾乃田の事業が拡大していくほどに広がっていく。
『一生に一度の晴れ舞台や! 愛するお前を綺麗に着飾って何が悪いねん!』
 衣装選びに会場選びの間恐縮しきりだった雅姫を無視して、尾乃田は金に糸目はつけなかった。
 昨年、大学の卒業式のあとに尾乃田からプロポーズされた。
 そして今日の挙式まで約一年、尾乃田は湯水のごとくお金を使い、会場でも過去最高額らしいラグジュアリーな結婚式・披露宴をすることとなったのだ。
「ゴンドラで登場がなくなっただけでも、幾分マシって思えばいいのかしら?」
 バブル期に流行ったという『新郎新婦がゴンドラで登場』というのに尾乃田が興味を持ったのだが、会場である外資系GHホテルでは安全上できないと断られた。ごり押ししようとした尾乃田だったが、側近の高柳(たかやなぎ)に頑なに止められ事なきを得たのだ。彼は本当に頼りになる。
「贅沢はこれっきりよ。嫁として、財布の紐はしっかりと握らせてもらいますから!」
 普通の家庭を築くことの難しさは分かっている。何せ相手は尾乃田だ。
 現在は足を洗って堅気となっているが、元は広域暴力団平畏(ひらい)組二次団体常磐(ときわ)会の若頭だった男だ。
 尾乃田は組織を脱退後、国外で事業を始めたのだが、それが成功してビリオネアとなっていた。
 だからと言って湯水のごとくお金を使うべきではない。このご時世、天地がひっくり返るような何かが明日あるかもしれないからだ。石橋は叩いて三回くらい確認して渡りたい。
 雅姫は決心するように鏡に向かって呟く。
「普通の幸せな家庭を目指す!」
 するとドアからノックする音が響いてきた。
「……篠田(しのだ)様。準備はよろしいでしょうか? そろそろ、会場へ――」
「は、はい! 今、で、出ます!」
 緊張で顔が引き締まる。震える指先は冷たく、それを温めようとギュッと手を握った。
 着用している美しい総レースの手袋は、暖かさを優先したものではないようだ。指先は一向に温まらない。
 雅姫は大きな扉をそっと押し開ける。すると、優しい笑顔を浮かべたウエディングコーディネーターが、彼女の耳元のインカムに触れた。
「新婦様が控え室より出られました。はい。時間は押しています。すぐに会場へ……」
 彼女は笑顔だが、声色はキビキビしており、雅姫は控え室にこもっていた自分を申し訳なく思う。
「ごめんなさい。き、緊張してしまって……」
「お気になさらないでください。よくあることですので」
 案内するように先導する彼女に続いて歩くと、雅姫の後ろには流れるように長いトレーンがついてくる。それを別の女性従業員がそっと持ち上げてくれていた。そしてジュエリーの警備員が続く。
 静かな緊張があたりに走る。
「尾乃田さんは会場に?」
「新郎様はもう指定位置におられますよ」
 ウエディングコーディネーターは若干の早足で歩いている。それに合わせるように雅姫も歩く速度を速めた。何だか息が上がってくる。ウエディングドレスはハッキリ言って重い。余計に雅姫の鼓動が速まった。もう緊張からなのか早足からなのか分からない。
 大きい鉄製の扉を開けると、縦に長いチャペルが見える。内装は杉の木でできており、室内にふんわりと優しい匂いが漂う。中央には自然光のシャワーを浴びて、神々しく浮かび上がる十字架が見えた。
 幻想的で厳格な空気が漂う。
 そして何よりも存在感がある人物が中央に立っている。その人物は明るいグレーのスリーピースを着用していた。しっかりと前を向き、姿勢がよい。全く人に媚びることを知らない広い肩と背中から、男の色気が漂う。
(一か月ぶりの尾乃田さん!)
 嬉しさから走って駆け寄りたくなったが、グッと気持ちを抑えて一人でバージンロードを歩く。
 そんな雅姫を目を細め優しい笑顔の尾乃田が見つめる。
 彼に会えたのは久しぶりだった。ヤクザを辞めたあと、事業を世界展開している彼は常に海外を飛び回っていたからだ。日本にいるのは一か月のうち数日の月もあるので、常に一緒ではなかった。
 この挙式後は日本にいることを希望し、海外の本社運営には現地の信用できる者を採用したそうだ。その引き継ぎで彼は多忙を極めていた。
 厳かな空気の中、来賓が座る席の横を雅姫は歩いていく。たった一人で歩くバージンロードを寂しいとは思わない。
 尾乃田との交際が発覚したときにお金で縁を切ることを望んだ両親と、体裁を気にする実兄はこの場にはいない。それでも家族のように慕う仲間が今日はここにいる。
 尾乃田の組の小間使いだった新田(にった)とは性別を超えた親友。その妻のサエも親友となった。尾乃田の側近である高柳は親友……ではないが、全てを話せる間柄だ。尾乃田の母親代わりだったまりこは、雅姫にとっても母のような存在。明るくてお茶目な性格が雅姫を幸せにしてくれる。中学時代に友人だった美(み)希(き)とは成人式で再会してから友情を復活させた。
 一人一人の顔をベール越しに確認する。新田とサエの小さな一人娘が泣き声を発して、二人が慌てふためく。泣く彼女に小さく手を振ったら、ピタッと泣き止み笑顔になった。
 祭壇への階段を上り尾乃田の横に並ぶと、彼が耳元で甘く囁く。
「火照った顔して、今日の初夜でも想像しとったか? エロい子猫やなあ」
「ち、違います! 遅れていたから早足で――」
 すると牧師の声が響き渡る。英語で聖書の一説と今日を祝福する言葉を聞き、雅姫は今までの日々を思いだす。


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