書籍詳細
魔法学園のツートップは、初恋を隠したい 盗み聞きで失恋を知ったはずの人と結ばれるまで
| ISBNコード | 978-4-86669-867-0 |
|---|---|
| 定価 | 1,430円(税込) |
| 発売日 | 2026/07/29 |
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内容紹介
立ち読み
「ゾフィアさん、ルートヴィヒ様が優しいからって調子に乗ってるみたいだけど、知ってらして? 貴女みたいなタイプ、彼の一番嫌いなタイプよ」
「……私みたいなタイプって?」
ジョアンナさんみたいなタイプは、関わるだけ無駄だ。だから、何を言われたってスルーするのが一番――とわかっていたくせに、うっかり聞き返してしまった。
ジョアンナさんは、「食いついたわね」と言わんばかりのニヤリ顔だ。
「つまり、玉の輿を狙って近づく人よ。そもそも没落寸前の家を立て直すための男探しに奨学金を使ってまで学園に入ってくるなんて、正直信じられない厚顔無恥さだと思うわ」
さすがにこの言葉にはカチンときた。
「ねえ、適当なこと言わないで。私はそういう打算での結婚が嫌だから、この学園に入ったのよ。ここで魔法学をしっかり身につけて、政略結婚に頼らず生きられるようにね!」
強めの口調で言い返すが、ジョアンナさんは少しも信じていないようで、ふふんと鼻で笑った。
「嘘ばっかり。ちょっと頭が良いからルートヴィヒ様に興味を持たれて、調子に乗ってるくせに」
「はあ!? 調子になんて――!」
「でも、お生憎様。彼、前に言ってたわ。下心を持って近づいてくる人間は、心底軽蔑するって。今は良くても、貴女の下心がバレたら軽蔑されて、突き放されて終わりよ!」
下心なんて、本当にない。彼と自分が釣り合わないことくらい、ちゃんと理解しているもの。
それなのに……どうしてこんなに胸がざわつくのかしら。なんで、こんなに不安になるの?
そのとき、ふと気づく。
私はきっと――ベルンハルトさんに誤解されるのが、怖いのだ。
私が貧乏なことは、ベルンハルトさんも知っている。もちろん私にそんなつもりは少しもないが、ジョアンナさんがしているみたいな誤解を、ベルンハルトさんにもされたら。今はあんなに優しい笑顔を向けてくれる彼に冷たい軽蔑の眼差しを向けられたら、私は耐えられるだろうか?
想像しただけで、強い恐怖と不安に襲われた。
――それだけは、絶対にだめ。絶対に……ベルンハルトさんにだけは、嫌われたくない。
「ジョアンナさん、この際だからはっきり言うわ。私はベルンハルトさんのことをクラスメイトのひとりとして大切に思っているし、学業における素晴らしい好敵手として、心から尊敬もしてる。でもそこに、恋愛感情なんてものは一切ないわ」
最後の部分を、私は必要以上に強調した。まるで、自分自身に強く言い聞かせるみたいに。
「本当かしら?」
「ええ、本当よ」
「まあでもそれが嘘だとして、下心がバレた時点でルートヴィヒ様に突き放されて終わるだけよ? わかっていらして?」
「言ったでしょ、下心なんてない。だからそんな心配も不要よ。そもそもここは、学問するところよ。恋愛なんかに現を抜かす気はないし、そんな人、心底軽蔑するわ」
そのとき職員室のドアが開き、ニーナが出てきた。
「あら、ジョアンナさん?」
「まあニーナさん、御用は終わったの? 良かったわ。ちょうど、私たちのお話も終わったところだから。ゾフィアさん、お話が聞けて良かったわ。それじゃあまた教室で」
意地悪な笑みを浮かべたジョアンナさんは、そのまま行ってしまった。
「彼女、ゾフィアに何を言ってきたの?」
私たちの様子から何かあったと察したらしいニーナが、私に尋ねた。
「……私がベルンハルトさんとよく一緒にいるのが、気に入らないみたい」
「やっぱりそういう話なのね。詳しく聞きたいけど、実はファーバー先生との話がもう少しかかりそうなの。だから、せっかく待っててもらったのに悪いのだけど、先に部屋に戻っててくれる? 本当にごめんね」
「気にしないで。じゃあ、またあとでね」
ニーナは再び職員室に入っていき、私はひとり、寮の部屋へ戻ることにした。
なんだか、胸がもやもやする。それはジョアンナさんの言いがかりに腹が立ったというより――さっきの自分の思考が、ひっかかったから。
『絶対に……ベルンハルトさんにだけは、嫌われたくない』
私はさっき、たしかにそう思った。
私を誤解したい人は、勝手にすればいいというスタンスで生きてきた。自分に恥じない生き方をしているつもりだし、そのうえで私に勝手な判断を下す人は、放っておこうって。
それなのに――もしベルンハルトさんに誤解されたらと想像したとき、すごく不安になった。
他の人はともかく、彼には絶対に誤解されたくない。だからこそ、ジョアンナさんが彼に余計なことを言わないように、ここではっきりと否定しておかなきゃって。
……そんなのまるで、私が彼を特別に思っているみたい。
ぶんぶんと、頭を振る。ありえない。っていうか、あってはだめ。彼と私は住む世界が違うから。釣り合う、釣り合わないというレベルですらないのだ。
ゾフィア・バーマン、貴女、頭は悪くないはずよ? 身の程知らずな想いを抱いてもなんの得にもならないことくらい、わかっているじゃない。
そもそも貴女は、自分がなんでここにいるのか忘れた? 「宮廷魔導士」になるためでしょう? 他のことに気を取られている暇なんて、少しもないはずよ。
ぱんっ! と、両頬を軽く叩いた。
「よし、頭を切り替えよう!」
外の空気でも吸えば、気分も変わるだろう。
くるりと身体の向きを変えて、中庭へ出るほうの角を曲がった――のだが。
「あっ」
よりにもよって、このタイミング……。
思わずため息が零れる。だって、つい今しがた頭の中から追い出そうとした「その人」が、私の視界に入ってきたのだ。しかも、いつも綺麗な姿勢で堂々と歩いているくせに、なぜか今はすごくしょんぼり落ち込んだ様子で、とぼとぼと歩いている。
――あんな姿を見てしまっては、知らんぷりすることもできない。
「ベルンハルトさん、どうかした?」
背後から声をかけると、ビクッと大きく肩を震わせた。思った以上に驚かせてしまったようだ。
「ごめんなさい、びっくりさせちゃった?」
「あ、いや! ちょっと考え事していたから、驚いただけ」
そう言って、ベルンハルトさんは微笑んだ。だがいつも輝くような完璧な笑顔だからこそ、この笑顔にはっきりと翳りがあることに、簡単に気づけてしまう。
「何か悩み事?」
「えっ、なんで」
「あ、違ったならごめん。ただ、なんだかしょんぼりしてるみたいに見えたから」
「……俺、そんなにわかりやすいんだ」
やっぱり、何か悩んでいたらしい。
ベルンハルトさんみたいになんでも完璧にできちゃう人でも、悩むこととかあるのか。
ちょっと親近感が湧いて嬉しいとか思ったら、酷いかしら。
「ねえ、もし悩み事があるなら私が――」
「あっ、優等生コンビ!」
背後からの元気な声に振り返れば、クラスメイトのケヴィン・ロイターがいた。
彼はお調子者で、授業中もよく騒いで先生に注意を受けたり、デリカシーに欠けることを言って女子を怒らせているが、決して悪い人ではないし、馬鹿でもない。
「ふたりって、本当にいつも一緒にいるよな〜。もしかして、付き合ってんの!?」
――前言撤回。やっぱりこいつ、ノンデリ馬鹿男子である。
こともあろうに、今そんなことを言うなんて! っていうか、私と付き合っているなんて誤解をされて、ベルンハルトさんはさぞや不愉快だろう。すぐ否定しなければと、慌てて口を開いたが。
「違うよ」
私が発するはずだったその言葉は、私ではなく、ベルンハルトさんの口から発された。
そうして行き場を失った「その言葉」をはっと呑み込んだけれど……私の頭の中は、真っ白だ。
「ロイター、変なことを言ってバーマンさんを困らせないでくれ。俺たちは、ただのクラスメイトだよ。クラス委員だからよく一緒にいるし、勉学においては良き好敵手だとも思っている。それに、良き友人でありたいともね。だけど、それだけだ」
まず私を気遣い、私たちの関係を客観的な事実から説明したうえで、過分な褒め言葉まで。
ベルンハルトさんの返答は、いつもながらの「模範解答」だった。
だから本当なら、この言葉を純粋に嬉しいと思うべきだ。ベルンハルトさんみたいなすごい人にはっきりと好敵手認定されて、「良き友人でありたい」とまで言ってもらえたのだから。
――それなのに。
「なーんだ。やっぱり優等生同士、くそ真面目なんだな。つまんね」
勝手に期待して、勝手にがっかりして。そのまま、ロイターさんは行ってしまった。
本当に、ただそれだけのできごとだった。
「バーマンさん、ごめんね。彼も、決して悪気があったわけじゃないと思うんだ」
「あ、ううん……全然気にしてないよ」
「とはいえ女性にあんなこと言うなんて、ロイターのやつ本当にどうかしてるよ。そもそもここは勉学に励む場所だ。それなのに異性と歩いてるってだけであんな邪推して、マジで馬鹿だ」
「うん、そうだね。本当に……馬鹿みたい」
笑顔で答えたつもりだ。でも私……今、ちゃんと笑えているだろうか。
『言ったでしょ、下心なんてない。だからそんな心配も不要よ。そもそもここは、学問するところよ。恋愛なんかに現を抜かす気はないし、そんな人、心底軽蔑するわ』
本当に、馬鹿みたい。ついさっき、あんなにはっきりと言い切ったくせに。
居心地の悪い沈黙が続き、隣にいるベルンハルトさんの表情をそっと窺う。すると彼と目が合い、彼はどこか困ったような、気まずそうな様子で優しく微笑んだ。
「少し、中庭に出ない?」
「中庭?」
「その……ほら、良い風も吹いてるみたいだし」
窓の外を見ると、中庭の栗の木の葉がそよそよと気持ち良さそうに揺れていた。
「そうだね、出よっか」
中庭には誰もいなかった。ベルンハルトさんに促され、栗の木の下のベンチに並んで腰かけた。
本当に、良い風が吹いている。風で葉の揺れる音も、とても心地好い。でも、何より――。
「気持ちいいね」
「……うん、そうだね」
風に揺れる木漏れ日の下、ベルンハルトさんが空を見上げている。その綺麗な横顔を眺めながら、自分の鼓動が速くなっていることに気づく。
顔が少し火照って、胸は少しだけ切なくて苦しいのに、「この時間がずっと続けばいいのに」と、そんなふうに願っている自分に、気づく。
この感覚、この気持ち。思えばベルンハルトさんといるとき、私はいつもそうだった。
――ああ、そうか。私、ベルンハルトさんのことが好き、なんだ。
小さなため息が零れた。
気づきたくなかったのに。自分の気持ちも、上手く誤魔化せていたはずなのに。
だってベルンハルトさんは、最初から特別かっこよくて、素敵な人だったから。
一緒にいてドキドキするのも、毎朝会うたびに嬉しくなるのも、微笑みかけられるたびに幸せな気分になれるのも、ベルンハルトさんが相手だから、当然だって思い込めた。あんな素敵な人なら、誰もが好意を抱いて然るべきだ。だからこれは、「特別な感情」なんかじゃないって。
……それなのに。
『君は本当に自分の力だけで、この学園に入ったということだろう? とても素晴らしいと思う。心から尊敬するよ』
『君がやるって言ったから、立候補したんだけど。いまさら辞めるなんて、言わないよね?』
『君さえ良ければぜひ交換してくれないかな』
『……良かったら、俺が教えようか?』
反則よ。こんなの、好きにならないほうが無理だもの。
さっきジョアンナさんに「調子に乗っている」と言われたとき、ものすごく腹が立ったと同時に、なんとも言えない焦りと不安を覚えた。
もしかすると本当に、自分は彼に特別扱いされていると、無意識に自惚れていたのかもしれない。だから図星を突かれて、焦ったのかも。
さっきロイターさんの前ではっきりと「線引き」をされたときも、それで馬鹿みたいにショックを受けてしまったのだろう。我ながら、本当に恥ずかしい。
そういった意味では、今の段階ではっきりと線引きしてもらえて、良かったのだ。
だって、ベルンハルトさんが私と仲良くしてくれているのは、他の女の子たちと違って、私が彼にそういう下心を抱いていなかったから。一緒にクラス委員になってくれた経緯を考えても、それは間違いない。
――つまり、他の女の子たちと同じように私も彼に異性としての好意を抱いていると知れば、彼は私と仲良くするのを、面倒だと思うはずだ。
それなら……この想いは、絶対に彼に知られてはいけない。
私は決して分不相応な望みを持つ気はない。彼に想いを伝えたいとも思っていないし、恋人になりたいとも思っていない。結婚なんて、もってのほかだ。今のまま好敵手として、そして良き友人としてそばにいられたら、十分すぎるほど満足だ。
それなのに、もし今以上を望んでいると誤解されて、ベルンハルトさんに距離を置かれることにでもなれば、それこそ辛すぎるもの。
そうならないためには、この想いを隠し通す以外ない。あくまで良きクラスメイトとして、友人として、そして好敵手として、適切な距離を保つことができれば、きっとこれからも――。
「あのさ、さっきのことだけど」
沈黙を破る突然の言葉に、びくっと肩を震わせて驚いてしまう。
「あ、ごめん。その……さっき、ロイターが言ってたことだけど」
あんな気まずい話題を、わざわざ蒸し返すなんて。嫌な予感に、胸がキュッとなった。
「学園のやつらって、なんていうかその、子どもっぽいやつ多いだろ。だから男女で一緒にいると、ああいうわけわかんないこと言ってきたり、変な誤解をしてくるやつはどうしてもいると思うんだ。たぶん、これからも」
「あ……うん、そうかもね」
ああ、やっぱり。こんな前置き、あとにどんな言葉が続くかなんて、わかりきっている。
「またさっきみたいな変な誤解されたら困るし、少し距離を置いたほうがいいね」、きっとそう。
「身の程を弁えていれば、大丈夫。そしたらこれからも、彼のそばにいられるかも」なんて――。どうやら、そう上手くはいかないみたい。
恋心を自覚した途端、好きな人から「距離を置こう」と提案されるのはなかなかショックだけど……どうせ報われることのない恋だ。むしろ、そのほうが良いのかも。
覚悟を決め、「ええ、そうね。そうしましょう」と答える準備をしながら、必死で笑顔を作った。
「けど、そういうの気にするのって、それこそ逆に子どもっぽいと思わないか?」
「ええ、そうね。そう――……えっ?」
あまりに予想外の言葉で、作り笑いも忘れぽかんとしてしまった。そんな私をベルンハルトさんはものすごく真剣な表情で見つめる。
「俺はさ、バーマンさんとこの学園で出会えて、本当に良かったと思ってるよ」
不意に中庭を吹き抜けた風が、私たちの上の栗の木の葉をざあっと鳴らし、木漏れ日を揺らした。
「こんなこと言うとあれだけど、同世代で本気で成績を競い合えるような相手に出会えると思ってなかったから、君がいてくれるおかげで、毎日にすごく張り合いがあるんだ。それに――」
一瞬口ごもり、視線が泳ぐ。それからまた私をまっすぐ見つめて、彼はそっと口を開いた。
「それに、ただ君と話したり、一緒に行動したりするのも好きだよ。俺とは違う視点を持っていてとても興味深いし、君から聞かされる話は、なんだかすごく魅力的に聞こえるんだ」
心臓がドキドキして、破裂してしまいそうだ。
「君がクラスメイトで嬉しいし、同じクラス委員が君で本当に良かったし、良き好敵手にして良き友人になれたことも、本当に嬉しいと思ってるんだ。だから他のやつらの言葉を気にして、君とこれまでのように付き合えなくなるのは、すごく嫌だ」
耳まで赤くして照れながら、気恥ずかしそうに――でも、とても真剣な表情で、ベルンハルトさんは続けた。
「俺はこれからも、今まで通りバーマンさんと良い関係でありたい。っていうか、もし可能なら、もっと仲良くなりたいんだ。良き友人、良き……好敵手として。だめかな?」
胸に、これまで感じたことのない喜びが込み上げる。
気まずい話をわざわざ蒸し返したのは、私と距離をとるためじゃなかった。さっきのことで今後気まずくなり、私たちの関係が変わってしまうことを、彼も嫌だと思ってくれたからだった。
私が彼に抱く想いと彼の気持ちはまったく別物だ。
それでも――彼も私と同じように、これからも良い関係を続けていきたいと思ってくれている。その事実が、泣きたいくらいに嬉しかった。
「だめなわけないわ」
「……本当?」
なぜかとても不安そうな顔で確認されて、思わず笑ってしまう。
「もちろん! 私も、貴方に出会えて本当に良かったと思ってる。『良き好敵手であり良き友人』になれて、本当に嬉しいと思っているわ。だからこれからもこれまで通りの……ううん、これまで以上に良い関係を、貴方と築けたら嬉しい」
「そうか……良かった」
そう言って笑ったベルンハルトさんの顔が本当に嬉しそうだったから、胸がいっぱいだ。
「良き好敵手にして良き友人」か……うん、すごくいいじゃない! 恋人同士になるなんて現実味のない夢を抱くより、彼の良き好敵手であり良き友人としてこの学園生活を過ごせるほうがずっと有意義で、素敵だ。
「じゃあ……さ、これからはただのクラスメイトじゃないわけだし、ちゃんと良き友人として――君の特別な友人として、俺のことを『ルー』って呼んでくれない?」
「……えっ?」
聞き間違い、だろうか。
「ロナルドも俺のことをそう呼んでるだろ? あいつは男では、一番の友人だから。で、バーマンさんは女子の中で、一番の友人だ。だから君には――君だけには、俺のことを『ルー』って呼んでほしいんだ。……だめかな?」
同性なら、仲の良い友人同士で愛称で呼び合うことはよくある。でも異性だと、だいたいは恋人とか婚約者とか、そういう特別な相手に呼ばせるのが普通だ。
ベルンハルトさんだって、そのことは知っているはず。それなのに、どうしてこんな提案を?
王都はいろいろ進んでるから、そういう感覚も、田舎とは違うのかもしれない。だけど――。
どうしよう。勘違いしちゃ、期待しちゃ……だめなのに。
突然黙り込んだ私に、彼はやけに焦った様子で早口で言い募る。
「もちろん、嫌ならいいんだ! ただ、ロイターみたいに変なことを言ってくるやつらに、俺たちの友情が特別だって教えてやりたくて。異性同士だからって、みんながみんな下心があるわけじゃない。純粋に相手を大切に想う気持ちで一緒にいる、俺たちみたいなのもいるんだって」
ああ……こんなの、嬉しくないわけないじゃない。
「嫌じゃない。むしろ……すごく嬉しいわ。それじゃあ私のことも、良かったら『ゾフィア』って呼んでね。……ルー」
「――!! ああ、もちろんだ、ゾフィア!」
『ゾフィア』。彼に呼ばれるだけで、なんて特別な響きを持つのかしら。
眩しいくらいのベルンハルトさん改めルーの笑顔を前に、勉強ができて良かった、彼の好敵手になれて良かったと、心の底から思った。
そしてこれからの三年間、「良き好敵手にして良き友人」として彼のそばにいられたらいいなと、密かに祈るのだった。
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