書籍詳細
追放された元王女ですが、このたび最強魔女として出戻りました
| ISBNコード | 978-4-86669-850-2 |
|---|---|
| 定価 | 1,430円(税込) |
| 発売日 | 2026/05/28 |
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内容紹介
立ち読み
「あ~あ、どこかに隠れ王族とか残っていないかしら?」
ルヴィアラが来る前は、神の加護は完全に失われていた。その事実から、この国に成人王族がルヴィアラ以外いないことは間違いない。しかし、ジルやエリナのように反乱から逃れた王族の子どもがいないとは限らないのだ。
わずかな可能性に希望を寄せるルヴィアラを、ユリウスはバッサリ否定した。
「それくらいのことは、この国の人間だって考えて徹底的に探したはずですよ」
それで見つかっていないのだから、王族の生き残りはいないのだろう。
あからさまにがっかりするルヴィアラに、ユリウスが近寄ってきた。
「王族を増やしたいなら、そんないるかいないかわからない子どもを探すより、もっといい方法がありますよ」
そう言いながら顔を近づけてくる。
「……お見合いはしないわよ」
「する必要ありません。私が師匠と結婚すれば万事解決ですから」
ユリウスは、至極冷静にそう言った。『一足す一は二です』と言ったかのごとく、平然としている。
ルヴィアラは、パチパチと目を瞬いた。
「どうして驚いているんです? 私が師匠を大好きなのは、知っているでしょう? 求婚状を送ろうとしたことだってありますよね」
「それは、そうだけど」
ユリウスの好意を疑ったことなどない。いつだってユリウスはストレートに、ルヴィアラに好きだと告げてきた。
ただルヴィアラにとってのユリウスは、誰より可愛い弟子なのだ。急に恋愛対象、ましてや結婚相手として見ることは、なかなか難しい。
「安心してください。私がこの国に婿入りしますから。師匠はこれまでどおり暮らしてくれればいいだけです。私以上にお買い得な婿はいませんよ。炊事洗濯家事育児、なんでも完璧にこなして生活を万全にサポートします」
戸惑うルヴィアラに対し、ユリウスの売りこみアピールは強引だ。
たしかに彼なら、なんでもササッとやってしまいそう。
「公務の手伝いも任せてくださいね。――――いやぁ、皇国で皇子教育を受けていたときは、こんなものなんの役にも立たないのにと思っていましたが、なんでもやってみるものですね」
ニコニコニコとユリウスは笑った。
あんまり饒舌にお勧めされて、ルヴィアラはなんだか胡散臭くなる。
「…………誠意を感じられないわ」
「これ以上なく必死です。必死すぎて、おかしくなりそうなくらい必死です。……その証拠に、ほら、心臓が暴走しているでしょう?」
そう言いながらユリウスは、ルヴィアラの右手を自分の左胸に当てさせた。
ドキドキドキと、すごい勢いでユリウスの心臓が脈打っているのが、ダイレクトに伝わってくる。
「うわっ! なんなのこれ? 死んじゃわない?」
ルヴィアラは心配になってユリウスの顔を覗きこんだ。
「死んでもおかしくありませんね。一世一代のプロポーズですから」
顔を赤くしたユリウスが、そう返す。
(――――プロポーズ? そうよね、間違いなくプロポーズだわ)
ルヴィアラは、あらためて認識した。たしかに、言っている内容はプロポーズそのもの。結婚して王族を増やそうと言っているのだから、疑いようもないだろう。
見れば、赤い顔のユリウスの黒い瞳が揺れていた。ルヴィアラの右手首を握る彼の手は、しっとり汗ばんでいる。
(なんでこんなに緊張しているの? ……え? 本当に本気で私にプロポーズしているの?)
今さらながらそう思った途端、ルヴィアラまで胸がドキドキしてきた。背中に汗まで噴き出てくる。
(ユーリが、本当に私に?)
「本気で言っているの?」
「これ以上ないくらい本気です。師匠は、私が生涯共にしたいと願うたったひとりの女性ですから」
生涯共にと言われて、ルヴィアラの心の奥がツキンと痛む。
「…………私の下から、去ったくせに」
十五年前、ユリウスはルヴィアラを置いて魔国を出て行った。いつか必ず戻ると言いながら、十五年間音沙汰のなかった薄情な弟子だ。
ルヴィアラが拗ねれば、ユリウスは焦ったような顔になった。
「二番目の兄が死んだので皇太子のスペアが必要になったんです。皇太子の子が成長して役目を終えれば魔国に帰るつもりでした。……言わなかったのは、皇国の権力者争いに師匠を巻きこみたくなかったからです」
早口で一気に説明してくる。
彼の必死さが伝わって、ルヴィアラはなんとなくホッとした。巻きこみたくなかったのだと言われれば、説明されなかったことにも納得がいくのだが……。
「それでも、なにかひと言でも言っておいてほしかったわ」
「言えば師匠は私を助けようとするでしょう?」
それは当然だ。弟子の危機に手をこまねいているなんて、どうしたってできない。
「師匠の側を離れるのは、すごく、すごく、ものすごく! いやでしたけど、それでも私のために師匠が危険な立場に立つ方が、百万倍いやでした。皇国の問題は、時間が経てば解決することはわかっていたので、自分が我慢する方を選んだんです。…………あと、ずっと子ども扱いされていたので、少し離れて大人になれば、男として見てくれるようになるかな、なんて邪な思いもちょっとだけあって――――」
懸命に言い訳するユリウスは、ぽろぽろと心の内をこぼしてくる。
「邪…………」
「ありましたよ! 邪な思い! だって私は師匠が好きだったんだから、当然でしょう! なのに師匠はいつも無防備で……キャミソールとか、ミニスカートとか、スリットとか! 無自覚で誘惑されて……僕は思春期の少年だったんですからね」
なぜか怒られてしまった。ルヴィアラは、少し反省する。
「……ユーリが私を好きだったってことは、よくわかったわ」
「過去形ではなく現在進行形です。私は、昔も今もこれからも、ずっと変わらず師匠を愛しています。だから結婚してください」
真正面から言われて、逃げ場を失った。
「ユーリ…………でも、私は」
「弟子にしか見えませんか?」
聞かれて、首を縦に振った。ユリウスと結婚なんて、今のルヴィアラはとても考えられないのだ。
「まあ、そうだろうなとは思っていました」
「ユーリ――――」
「だから、そんな師匠にお願いです。……これから私をそういう目で見てください」
なんと、ユリウスはそんなことを言いだした。
「そういう目?」
それはいったいどんな目だ?
ルヴィアラの疑問に、ユリウスは堂々と答える。
「ひとりの男として、結婚相手として……あなたの隣で生涯支え合い共に暮らす伴侶として、相応しいかどうか判断してください」
「……伴侶?」
「ええ。視点を変えてそういう目で見てさえもらえれば、私と師匠はお似合いの夫婦になれると思うんですよね。なんといっても私たちには互いへの愛情がたっぷりあるんですから」
自信満々にユリウスは笑った。
「愛情たっぷり?」
「はい。師匠は私が好きでしょう?」
「そりゃ、好きだけど」
「私も師匠が大好きです。私たちは相思相愛なんですから、あとは考え方次第です。師匠が私を伴侶として見られるなら、万事解決! 結婚できますよ」
…………それは、果たして本当にそうなのだろうか? ルヴィアラは、頭を捻る。
「なんか、違うと思うけど?」
「違いません! 師匠、大好きです! 早く私に邪な目を向けてくださいね!」
そう言いながらユリウスは、ルヴィアラの手を取り指先にチュッとキスをした。
「なっ! もうっ、ユーリったら、からかわないで!」
「からかってなどいませんよ。私はいつでも本気です」
そう言って迫ってくるユリウスの顔は、笑顔なのに瞳が怖いくらい真剣で――――。
その目に、ドキンと大きく脈打つ胸を意識せずにいられないルヴィアラだった。
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