書籍詳細

転生先はヒーローにヤリ捨てられる……はずだった没落モブ令嬢でした。2
ISBNコード | 978-4-86669-756-7 |
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定価 | 1,430円(税込) |
発売日 | 2025/03/27 |
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内容紹介
立ち読み
「レジス様」
ソランジュは急く思いでレジスに詰め寄った。
「もう解呪の手はずは整ったのでしょう?」
そう、先々月、レジスは解呪方法は理論的にはほぼ確立していると連絡してきたのだ。
「お願いです。次の戦争が始まる前に、アルフレッド様の呪いを解いておきたいんです……!」
レジスはう~むと唸って天井を見上げた。
「私も早々にそうしたいところなのですが、現状では不可能でしょうね」
「どうしてですか!?」
「一度お嬢さんが貧血で倒れたことがあったでしょう。私、あれ以来陛下に目を付けられてしまいまして、王宮内ではまず無理です。外に出る機会を作らなければ」
常時監視される羽目になったのだとか。ちらりと閉ざされた扉に目を向ける。
「ほら、廊下の外に数人見張りがいるでしょう。気配がしますから」
「えっ、そうなんですか?」
ソランジュは全然気付かなかったので驚いた。
「ずっと外に出してもらってもいないでしょう。お嬢さんを危険に晒したくないからですよ」
「あっ、そういえば……」
王宮の敷地内にはいくつもの居住棟に、図書棟、宝物庫、中庭、使用人向けの食堂や商店、果樹園に牧場、果ては劇場、闘技場までなんでもあるので、まったく退屈せず気付いていなかったが、確かに前教皇の目論みで攫われて以来一度も外出したことがない。
「陛下はあなたには血の一滴も流してほしくないようですね。傷付けたくない、守りたい、大切にしたい……実に深くも美しい愛です。ではお嬢さん、あなたはいかがでしょう?」
レジスは腰を屈めてソランジュの黄金の瞳を覗き込んだ。見張りに聞こえないようにしているのだろう。耳元で声を潜めて囁く。
「どれほど陛下を愛していますか?」
「えっ……」
どれほどと言われても――。
戸惑うソランジュにレジスが尋ねる。
「――その愛に命を懸けられますか?」
究極の問い掛けに目を見開く。
「私……」
ソランジュは前世とその記憶を取り戻したあの日を思い出す。
「……私、昔も今もアルフレッド様のおかげで生きてこられたんです」
それは命を与えてもらったのと同じだ。
「だから、アルフレッド様のためにならこの命、お返しします」
答えながらレジスがなぜこんな質問をするのかなんとなく理解できた。
――恐らくアルフレッドの呪いを解くには、命が対価として必要なのだ。
アルフレッドの母も神の御許での死後の安寧すら捨てて、全生命を懸けて息子を呪っている。ならば犠牲は当然なのかもしれなかった。
せっかくのウェディングドレスだが、完成品に袖を通すことなく終わるのかもしれない。
幸福の絶頂から二度目の死へと叩き落とされる――それでも、不思議と寂しさはあったが悲壮感はなかった。自分の運命を不幸だとも感じない。
「……お嬢さん、あなたは不思議な方ですね。なぜそんな顔ができるのです。私の言葉の意味を理解できていないはずがないでしょうに」
レジスがソランジュを見下ろして呟く。
ソランジュは微笑んでその問いに答えた。
「一度死ねば度胸もつきますよ。……私、ゼナイド様と同じなんです。レジス様も知らない世界からやってきました」
濃紫色の目が大きく見開かれる。
ソランジュは初めてレジスより優位に立った気がした。
外出の機会は予想以上に早くやってきた。
やはり二年早く、森林同盟軍との決戦に当たるイオシア平原の戦いの前哨戦、第一戦が始まったのだ。
エイエール王国が支配下に置く、ラビアン山脈の交通の要所の一つ、ヴァルト峠の関所に三国に更に三国を加えた同盟軍が攻め込んできた――。
ヴァルト峠一帯は二百年前までは、当時はまだ大国だった、旧ルード王国のものだった。
しかし、長年の列強のエイエール王国に奪われ、以降その支配が揺らいだことはない。
なお、旧ルード王国の没落と分裂、小国化はこのヴァルト峠を奪われたところから始まったと言われている。
今回現ルード王国と森林同盟を組むことになる十一ヶ国の小国は、元々は旧ルード王国の一部だったか、あるいは影響力の強かった地域だ。
比較的スムーズに手を組めたのは、イルマのカリスマ性だけではなく、そうした歴史的背景があってのことだったと言える。
その同盟軍が二世紀前の雪辱を果たすため、束になって攻め込んできたことは、エイエール王国にとって驚くべきことではあったが、まったく予想していない事態ではなかった。
――ソランジュがあらかじめ小説『黒狼戦記』の今後の流れをアルフレッドに説明していたからだ。
また、アルフレッドを含む歴代のエイエール国王はヴァルト峠を重視し、この二百年間耐えず軍備を更新、強化してもいた。関所となる砦には精鋭の騎士が常駐している。
とはいえ、間諜からの情報によると、同盟軍側は歩兵と弓兵四千で攻め込んできたのだという。小説の二倍以上の兵数だ。
騎士は指揮官のみでほとんどが練度の低い兵士だが、物量で押すつもりらしく、王宮に援軍要請が届いた。
そこで、アルフレッド自身が指揮を執り、出征することとなったのだが――。
――その夜アルフレッドはベッドに腰掛けると、ソランジュを膝の上に乗せ、「お前の予言した通りになったな」と呟いた。
ソランジュは小さく首を横に振ってアルフレッドの背と首に手を回す。
「いいえ、違っています。……少しずつですが、その違いは大きくなってくるはずです」
小説内ではヴァルト峠の戦いで同盟軍は一時的にエイエール王国軍を追い出し、砦を奪うのだが、あっという間にエイエールに取り返されてしまう。
ルード王国はそうした事態を防ぐため、一部を防衛軍として常駐させるために、初めから四千の兵士を投入したのだろう。
まるで物語を知っているかのような動きに、ソランジュは背筋がぞっとするのを感じた。
ルード側には同じ転生者がいるのではないか。それも、自分よりもずっと読み込んでいるし詳しい。
「アルフレッド様、私も遠征に連れていってください」
小説『黒狼戦記』については大まかな内容は伝えてあるが、現場に行かなければ思い出せない、細々とした要点があるはずだ。アルフレッドの呪いを解く前に、まず前哨戦をなんとか乗り越えなければ。
だが、アルフレッドに「ならん」と一刀両断されてしまった。
「女は……いいや、兵士でも騎士でもない者は戦場に連れていけん」
なぜ女という箇所を言い直したのか。一瞬不思議に思ったが、今はそれどころではなかった。
「お願いします。私も役に立ちたいんです」
「ならんと言っている」
アルフレッドは一度こうと決めるとテコでも意見を変えない。
しかし、ソランジュも譲るわけにはいかなかった。
頭を捻ってついていく理由を訴える。
「それに、あと二週間足らずで満月になります」
戦が長引いた場合どう対処するつもりなのか。結婚式が延期になるのは仕方がないが――。
なけなしの演技力を振り絞りシナを作って媚び、目を可能な限りうるうるさせ、「……他の女を抱いてほしくありません」と涙声で訴える。
「アルフレッド様が触れる女は私だけにしてほしいのです。ですから、どうか同行の許可をくださいませ。ソランジュ、一生のお願い……」
内心では顔から火が噴き出そうだったが、羞恥心など覚えている場合ではない。
とにかく、もうそれくらいしか理由が思い付かなかった。
――そしてもちろん、アルフレッドにはまったく通用しなかった。
「それでもならん」
ゆっくりとベッドに横たえられる。
「今宵は会えぬ日々の分だけお前を抱くことにしよう」
「そうじゃなくっ……」
アルフレッドが寝間着のガウンを脱ぎ捨て、伸し掛かった次の瞬間には、もう唇を塞がれていた。
「んっ……」
割り開かれた唇の間から、熱い舌が滑り込み口内を責める。
濡れた音を立てて掻き回されたかと思うと、不意に喉の奥まで入り込まれ噎せそうになる。
なのに、唇を塞がれているのでどうにもならない。
「んっ……ふっ……んっ……」
思わずアルフレッドの二の腕を掴む。
その間にも舌を絡め取られ、ずずっと呼吸ごと吸い上げられ、息苦しさとも快感ともつかぬ感覚に頭がクラクラした。
「はっ……」
ようやく唇が離れる。
かと思うと、続けざまに深く口付けられ、またもや逃れようと奥に引いた舌を捕らえられてしまう。
「あ……ン……ふ……んあっ」
ようやく解放され空気にありつき、ソランジュは大きく息を吸った。
銀色の唾液が糸を引いてソランジュとアルフレッドを繋いでいる。
その淫らなさまに目を奪われる間に、寝間着越しに胸に触れられ、心臓がドクンと大きく跳ね上がった。
合わせ目に手を入れられ直に肌に触れられると、それだけで腹の奥がずくりと疼いた。
もう体もアルフレッドをほしいと訴えている。
はあっと熱い息を吐き出す間に寝間着を剥ぎ取られ、まろび出た右側の乳房をやわやわと揉み込まれる。
「あ……ふっ……」
手の平の熱が肌に染み込み、たちまち薄紅色の先端がピンと立った。そこにちゅっと音を立てて吸い付かれ、思わず背を仰け反らせる。
「んあっ……」
舌先で転がされ、時折軽く歯を立てられ、敏感な箇所を弄られる感覚に背筋がゾクゾクと震える。
「……っ」
その間にもう片方の手で脇腹を撫で下ろされ、続いて腹部に手の平で円を描かれる。すると、たちまち子宮が疼いて手の平と同じ熱を持った。奥からとろりと蜜が溶け出し足の間を濡らす。
まだ関係を持ったばかりの頃は、アルフレッドはもっと動きが荒々しかったように思う。だが、近頃はどこか手つきに優しさや思いやりを感じる。
「あっ……ん……あっ!」
不意に太腿に手を掛けられ、反射的に身を捩る。
「あっ……」
アルフレッドの手に力がこもり、たちまち大きく開脚されてしまう。
つい先ほどまで穏やかな動きだったのに、一転して力尽くで体を開かれ、ソランジュは思わず首を横に振った。
ぱっくり開いた蜜口に冷えた空気が触れて震えが走る。思わず閉じようとしたがアルフレッドがそれを許すはずもない。
ぐっと逞しい腰が割り込み、冷えた足の間に肉棒が押し当てられる。
――熱い。
その熱で隘路をズブズブと貫かれ、体内を押し広げられる感覚に、ソランジュは白い喉をくっと反らして喘いだ。
「は……あっ……ふっ」
更にそれだけには留まらず、右足を抱え上げられ肩の上に乗せられる。
「な……にをっ……」
最奥の更に奥まで挿入された感覚とともにぶちゅっという音がして、咽ぶような吐息が喉の奥から途切れ途切れに漏れ出る。
「……っ」
黄金色の瞳が限界まで見開かれみるみる涙が盛り上がる。
「……あっ……あっ……」
――深い。
声を出すのがやっとで、全身が小刻みに震え体に力が入らない。
どうにかしたくて左手を伸ばすと、アルフレッドのがっしりした腿に当たる。自分のものとはまったく違って筋肉質で硬い。
「ソランジュ」
アルフレッドが名を呼び、右足を支えるのを感じる。そして次の瞬間、前触れもなくずるりと一物が引き抜かれた。
「ひあっ……」
内壁を逆方向に擦られる感覚に声を上げてしまう。
「あっ……んぁっ……」
かと思うと今度はぐぐっと一気に肉棒で貫かれ、割れ目からぶひゅっと奇妙な音がぬらぬらした液体とともに漏れ出した。
ぐりぐりと最奥を太い肉の杭で掻き回され、そのたびに視界に火花が散る。薄紅色の唇はだらしなく開きっぱなしで、汗と唾液で妖しく濡れていた。
「……っ」
あられもない声が出そうになり、思わず手の甲で口を塞ぐ。
直後に、アルフレッドとの接合部分にぐっと力が込められた。
「ひあっ……」
アルフレッドが腰を動かしながら「手を外せ」と囁く。
「お前の、声が聞きたい。始めから終わりまで」
乞われるような口調に胸が一杯になった。
「は……い……」
あと何度この声を聞くことができるのだろう。
そう切なくなった次の瞬間、更に圧力をかけて肉の塊が体内に押し入ってきた。
「あ……あっ……」
アルフレッドがぐいぐいと腰を密着させてくる。するともう入らないと思っていたのに、ソランジュの肉体はずるずるとその分身を呑み込んでしまう。
「ソランジュ」
アルフレッドにまた名を呼ばれる。
だが、それに答える余裕はもうソランジュに残されていなかった。
「ソランジュ、俺の名を……呼んでみろ」
「あっ……む、りぃ……」
蜜口から深々と串刺しにされ、体を内側から揺さぶられて、もう息を吐き出し喘ぐことしかできない。
「あ……る……」
「聞こえないぞ」
「……っ」
ズンと深く突き入れられて言葉をなくす。震える左手が宙を掴んでパタリとまたシーツの上に落ちた。
絶え間なく押し寄せる快感の波に耐え切れず、再び黄金色の瞳にみるみる涙が溜まっていく。
その涙も隘路をみっちり満たした肉棒が質量を増すのを体が感じ取り、目が大きく見開かれたことですべて零れ落ちてしまった。
「……っ」
男の欲望が体の奥深くで炸裂する。
「あっ……」
体内で直にその熱を感じ取り、飛沫が次々と流れ込むのを感じる。内側から焼き焦がされるのではないかと錯覚する。
「ア……ル……フレッド……様……あっ!」
隘路でアルフレッドの雄の証がビクビクと脈打つのを感じる。その生々しさに身を震わせる間にも、熱い液体が体内にじわりと染み込んでいった。
「ソランジュ」
アルフレッドがようやく体の力を抜き、ソランジュに伸し掛かってその額に口付けた。
だが、まだ繋がったまま離れようとしない。軽く体を揺さぶりながらソランジュを抱き締めてくる。
「アルフレッド様……」
快感と圧迫感、そしてアルフレッドと一つになれた喜びに胸も隘路も満たされる。
この熱を魂に刻んでおこうとソランジュは目を閉じた。
それから二日後の出征の早朝、ソランジュはアルフレッドと抱擁を交わし合った。
「ご武運を」
「案ずるな。すぐに戻る」
エイエール王国軍の援軍が城門を出ていくのを見送るが早いか、レジスとの待ち合わせ場所である囚人棟の裏に向かう。
「レジス様、お待たせしました」
「それでは参りましょうか」
レジスは身を翻すと植え込みを指し示した。
「あそこに抜け穴があります。まあ、古代の下水ですね。今は使われていないので、ご安心を」
「……レジス様、よく知っていますね」
どこからそんな情報を仕入れているのか。
「蛇の道は蛇と前も申し上げたでしょう」
下水道は王都の川の支流の岸辺に繋がっていた。
レジスともども平民用の男性の服に着替え、あらかじめ用意してあった馬に跨る。
「おや、お嬢さん。馬に乗れたんですか」
「乗れませんでしたが、泳ぎと一緒に練習しました」
長い金髪はまとめて帽子に突っ込み、胸もさらしで巻いて潰しているので、現在のソランジュは一見少年に見えた。
なお、レジスは栗色の髪の鬘を被っている。いつものローブから一般人の重ね着のシャツズボンに着替え、その上から防寒用の外套を羽織ると、胡散臭さがなくなり普通の男性に見えた。
「軍隊最後尾から一日早くヴァルト峠入りしましょう」
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