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悪徳王女の恋愛指南 一目惚れ相手と婚約したら悪女にされましたが、思いのほか幸せです。

御鹿なな / 著
藤村ゆかこ / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-554-9
定価 1,430円(税込)
発売日 2023/02/27
ジャンル フェアリーキスピュア

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内容紹介

わたしくの愛に屈服するのはあなたです!
ワガママ王女の愛が、人々を幸せな笑いの渦へ導く!
一目惚れしたキルシュネライト卿との婚約が決まった、末っ子王女のアンネリーゼ。彼に振り向いてもらおうと健気にアプローチする一方で、その経験をもとにDV婚約者に悩む令嬢たちに名助言をしているうち「恋愛の達人」「師匠!」と人望を集めていくことに。反面、事情を知らない人たちからは「悪徳王女」と呼ばれすっかり有名人に。しかし肝心の想い人からは頑なに「誰とも結婚できない」と言われてしまう。どうやら彼には秘密があるらしく!?
「わたくし、悪徳王女ですの。欲しいものは絶対手に入れる主義ですのよ」

立ち読み

「少し、外で涼みますか」
 広間にも休憩する椅子はあったが、アンネリーゼもランベルトも目立つ。人目を気にしてか、ランベルトは庭での休憩を提案してきた。
 舞踏会は始まったばかりだ。自室に戻るわけにもいかない。アンネリーゼは少しだけ休み、すぐに戻るつもりで、ランベルトの手を借りて庭に出た。
 出てすぐのところにある椅子に腰をかける。
 舞踏会は午後過ぎから始まっていた。
 夕暮れ前の空は穏やかだったけれど、風が少し強い。
 マルガがリボンと髪飾りで結ってくれた髪が強風で乱れてしまいそうだ。
「風が強いですね……中に戻りますか」
 アンネリーゼの斜め右横に立っていたランベルトが、左へと移動した。吹きつけていた風が弱まる。ランベルトが風よけになってくれていた。
 何気ない気遣いにアンネリーゼは感激し、己の愛を再確認する。
 もっとずっとここに二人でいたいと思うけれども、ランベルトもきっちり整えていた髪が乱れている。髪の乱れたランベルトもたいそう麗しかったが、彼が風の攻撃を受けているのは許せない。ランベルトの髪を乱すのは、自分でありたい。
「そうですわね。戻りましょう」
 上がっていた息も少し楽になった。
 ランベルトの手を借り立ち上がったときだ。
「……きゃあっ!」
 女の子の小さな叫び声が聞こえた。
「あっ〜」
 十歳くらいの青色のドレスを着た少女が、アンネリーゼたちの前方を、悪者にでも追われているような必死さで駆けていた。
 そして大きな木の前で止まり、じっと上を見上げる。
 何をしているのか気になり、アンネリーゼは少女に近づき、声をかけた。
「どうかしましたか? 上に何かあるのですか?」
「……ハンカチーフが……風で飛ばされてしまったの。……取れなくて」
 少女は眉尻を下げ、言う。
 少女の視線の先に目を向けると、枝に白いハンカチーフが引っかかっていた。
 アンネリーゼが背伸びしても、届きそうにない。
「私が取りましょう」
 アンネリーゼの後ろにいたランベルトは、そう言うと木に近づいていった。
 確かに長身の彼ならば届きそうだと思っていると、少女がランベルトの騎士服を?んだ。
 わたくしの婚約者に気安く触れないで! と、狭い心でアンネリーゼは嫉妬したが、続いた少女の言葉に怒りは解けた。
「おまじない中だから、他の人に触られたら駄目なの! わたしが取らないと!」
 どうやら少女も、ハンカチーフの恋のおまじないをしていたらしい。
「……おまじない?」
「好きな男の子の名前をハンカチーフに刺?して、そのハンカチーフを毎日、月の光の前で振るの。二十日続けると恋が叶うの。でも……その間に、自分以外の人が触ったら、おまじないは失敗しちゃうから……わたしが取らないと駄目なの」
 訝しむランベルトに、少女はおまじないについて説明した。
(……待って!? わたくしのおまじないが……気づかれるのではなくて!)
 先日、アンネリーゼはおまじない中のハンカチーフをランベルトに拾われていた。ランベルトは贈り物だと誤解し、アンネリーゼは訂正しなかった。
 あのときの出来事と、今の状況がランベルトの頭の中で結びついてしまうと大変だ。ランベルトに大?つきだと思われてしまう。
「あ! お兄さん、わたしを抱き上げて。抱き上げてくれたら、ハンカチーフが取れそう!」
 焦っているアンネリーゼをよそに、少女が無邪気に言う。
(無邪気……本当に、無邪気なの……。本当はわたくしからキルシュネライト卿を奪おうとしているのではなくて? あのハンカチーフに刺?された名は、ランベルト・キルシュネライトなのでは)
 少女といえども女である。アンネリーゼも少女と同じ年頃のときに、ランベルトに運命の恋をしたのだ。
「いえ、わたくしが抱き上げますわ!」
 少女の誘惑からランベルトを守らねばならない。
「……お姉さんが?」
 邪魔をするなと思っているのか、少女が嫌そうな顔をした。
「わたくしでは不満でして?」
 アンネリーゼが挑むように見下ろすと「お姉さんじゃ、届かないと思う」と少女が言った。
「何事も試してみないとわかりませんわ!」
 アンネリーゼは力強く答え、少女の腰を?んだ。
「……っ! ……くっ!」
 持ち上がらない。持ち上がらなすぎて、後ろによろけてしまう。
「大丈夫ですか」
 ランベルトがそっとアンネリーゼの背を支えてくれた。
「私が抱き上げましょう」
 アンネリーゼには無理だと判断したのだろう。ランベルトが少女に近づく。
 アンネリーゼはランベルトの袖を?み、それを制した。
「それは駄目です……。そうです! わたくし四つん這いになります。わたくしを踏み台になさいませ。そうしたら、ハンカチーフが取れるでしょう」
「私が抱き上げたほうが早いかと……」
「わたくし以外の女性に触れるのは駄目です! あまつさえ、抱き上げるなど」
 つい本音が口から出てしまう。
 こんな稚い少女に嫉妬など、と呆れられるかと思ったが、ランベルトは一瞬驚いたような表情を浮かべただけだった。
「なら……私が踏み台になりましょう」
 そう言うと、アンネリーゼが止める間もなく身を屈める。
 地面に手をつき、ランベルトは四つん這いになった。
「わあ、ありがとう! お兄さん!」
 騎士服が汚れてしまう、とアンネリーゼは慌てるが、少女は臆することなくランベルトの背に足をかけた。
「! ちょっと、あなた! 靴くらいお脱ぎなさいませ」
「構いませんよ」
 アンネリーゼは大きな声で叱ったが、踏みつけられているランベルトは平然と許可を出した。
(キルシュネライト卿がわたくし以外の女性を抱き上げるのも嫌だけれど、キルシュネライト卿がわたくし以外の女性に踏みつけられているのも、なんだか胸がざわざわしますわ)
 決して自分はランベルトを踏みつけたいわけではないというのに、少女に成り代わりたいような気がしてくる。
 胸の奥がざわざわ、イライラするが、今更やめさせるわけにもいかない。
(早く終わらせたほうがいいわ!)
「早く、ハンカチーフをお取りなさいませ!」
 人の背は、本物の踏み台とは違い安定感がないのもあって、少女は足をかけたものの上手く上れずにいた。アンネリーゼは少女に手を貸し、ランベルトの背に乗るのを手助けする。
「んん〜、あと少し!」
 少女はランベルトの上で背伸びをする。少女の手がハンカチーフを?む。
「ありがとう、お兄さん、お姉さん。取れたよ!」
 にっこりと微笑んで見下ろす少女に、アンネリーゼもつられて微笑む。
「さあ、すぐに下り」
「何をしているの? 捜したのよ!」
 下りるよう言いかけたとき、女性の声が響いた。
「お母様!」
「あなた方、娘に何をさせているのです」
 紫色のドレスを纏った少女の母親が、ツカツカとこちらへと歩いてくる。
「何もさせられていないわ。ハンカチーフが木に引っかかって、取るのを手伝ってもらっていたの」
「ハンカチーフ……? っ! お、王女殿下」
 近くまで来て、娘を支えている人物がアンネリーゼだと気づいたのだろう。母親は目を瞠り青ざめた。そして娘の踏み台になっているランベルトを見て、息を呑む。
 どう説明しようかしら、とアンネリーゼが思案していると、運が悪いというか何というか「見つかったの?」「あら」などと、いかにも姦しそうな淑女の集団が、こちらに近づいてきた。少女を捜していたのは母親だけではなかったようだ。
「まあ!」
「アンネリーゼ王女殿下。それに、あれは……ランベルト・キルシュネライト卿」
「な、なんて無礼を……っ! 申し訳ありません」
 母親は他の淑女たちの言葉にハッとし、少女をぐいっと引っ張るようにして抱き上げ、地面へと下ろす。
 さすが母親力持ち、とアンネリーゼが感心していると、力持ちな母親は眉をつり上げ怒鳴り始めた。
「大人しくしているよう言ったでしょう! いったい何をしているの!」
「ハンカチーフが風で飛ばされて」
「ハンカチーフなんてどうでもよいでしょう! 王女殿下、キルシュネライト卿、娘がご無礼を働き大変申し訳ありませんでした」
 頭を深々と下げる母親の横では、先ほどまで嬉しげにしていた少女が、顔を真っ赤にし涙目でハンカチーフを握りしめていた。
 そして母子の後ろでは、淑女たちが様子を見守っている。淑女たちの目は興味津々に輝いていて、唇は愉快さを堪えるように歪んでいた。
 社交界では些細な出来事すらも、面白おかしく広まってしまうのを、アンネリーゼは身をもって知っていた。
(……いえ、これは些細な出来事ではないのかもしれないわ……)
 ランベルトは騎士団長の位にあり、領地を叔父に任せてはいるものの辺境伯という地位にある。そのうえ法王猊下の孫だ。
 たとえ、どのような事情があろうとも、一介の貴族令嬢が踏み台にしてよい存在ではない。十歳の少女だったとしても、親の管理が行き届いていないと批難されるだろう。
 ランベルトもこの状況の収拾を模索しているのか、四つん這いになったままであった。しかしいつまでもこのままでは埒が明かないと思ったのだろう。起き上がろうとした。
 アンネリーゼは、起き上がろうとしたランベルトの背を踏みつけた。
「わたくしが馬になるようキルシュネライト卿に命じたのですわ! そこの少女に、キルシュネライト卿を踏みつけるよう命じたのも、このわたくし。それが、何か問題がありまして?」
 アンネリーゼはランベルトの背に右足を乗せ、優雅に微笑み、首を傾げてみせた。
 母子も淑女たちも?然としている。
「用がないなら、去っていただけるかしら? 婚約者との逢瀬を邪魔されるのは不愉快ですの」
 傲慢に言うと、淑女たちは「申し訳ありません」と謝罪はしたものの、ヒソヒソと小声で何か言い合いながらその場を去っていく。
 母親は戸惑い顔で頭を下げたあと、踵を返し少女の腕を引いた。少女がこちらを振り返ったので、アンネリーゼは『悪徳王女の微笑』ではない、柔らかな笑みを浮かべて手を振る。少女も安心したように笑みを返してくれた。
 やり遂げたような気持ちになっていたアンネリーゼだったが、ランベルトを踏みつけたままになっているのに気づく。
 アンネリーゼは慌てて、ランベルトの背に乗せていた足を下ろした。
「踏みつけてしまいました。申し訳ありません」
「ドレスが汚れてしまいます」
 アンネリーゼが身を屈めようとするのを制し、ランベルトは立ち上がる。
 手に土が付着したのか、パンパンと両手を叩いた。
「お召し物が……」
 手だけでなく、膝にも土がついている。アンネリーゼが払おうとすると、ランベルトは「大丈夫です」と言って自らの手で土を払った。
 黒い騎士服の背中に、アンネリーゼと少女の靴跡がついているのに気づく。
「背中に、靴跡が!」
 背中のほうは、アンネリーゼが丁寧に手で靴跡を払った。
「思わず強く踏みつけてしまいました。痛めてはおりませんか?」
 ランベルトに怪我を負わせてしまっていたらどうしようと、アンネリーゼは青ざめた。
「大丈夫です。それより……なぜあのようなことを?」
「あのようなこと?」
「馬になるよう命じた、と」
 ランベルト・キルシュネライトともあろう者が、王女の我が儘に振り回され、あろうことか馬になり踏みつけられるという屈辱的な格好まで取らされていた——という噂はあっという間に社交界に広まる。自分だけが批難されるならよいが、ランベルトを軟弱者だと嘲る者もいるかもしれない。
「申し訳ありません。卿にもご迷惑を……」
「ハンカチーフを取るためだったと、事実を話すべきでした。あのような言い方をしたら、殿下の評判が下がります」
「事実といっても……抱き上げると仰っていた卿をお止めしたのはわたくしですし……。それに理由を説明しても、少女の無礼さを批判する者が現れるでしょう。けれども、ああ言っておけば悪徳王女の被害者として彼女は同情され、批判はされないかと思います」
「しかし……あなたが批判されます」
「わたくし、すでに批判されていますし、評判もよくありません。……わたくしだけでなく、卿の評判まで下げてしまったのは、本当に申し訳ないのですけど……。どうしても少女の評判が下がるのが嫌だったのです。悪評が広がると、彼女の恋は叶わなくなるかもしれません。せっかくのおまじないが台無しになってしまいますもの」
 アンネリーゼは恋の達人なのだ。他人の恋路の邪魔はしたくない。
 ランベルトが小さく息を吐く。
 アンネリーゼのせいで自分の評判が下がったと怒っているのだろうか。それとも馬になったのを後悔しているのか。もしかしたら、アンネリーゼが背を踏みつけたことに腹を立てているのかもしれない。
 他のよい方法はなかったのかしら、と少しだけ反省しながらアンネリーゼはランベルトの顔を窺う。ランベルトもアンネリーゼを見下ろしていて、目が合った。
 特に怒った風ではない。仕方ないな、といった感じの表情を浮かべていた。そういう表情も素敵だし大好きだ。見蕩れていると、ランベルトが「そういえば」と口を開いた。
「おまじないというのは、何ですか?」
「……おまじないというのは、目に見えない神秘的な力——健康、社会的成功、または恋の成就などを神秘的な力に頼り、叶えようとすることです。方法は様々で、四つ葉を探し本に挟む、あるいは何か事を起こすとき『絶対、大丈夫なはず』と三回呟くなど、いろいろあります。中には人に不幸を招くおまじないもあるようです。人を模した人形に相手の髪を入れ、深夜に誰にも見つからない場所で、釘を刺す……恐ろしいおまじないです」
「……おまじないの詳細について訊ねているわけではないのですが……。ハンカチーフのおまじないというのは、どういうものですか?」
「…………ハンカチーフのおまじないは、意中の相手の名をハンカチーフに刺?するのです……そして二十日間、月の光の下でハンカチーフを振って……その間、自分以外の誰にも触れさせてはならないという……そういうおまじないです」
 ?を吐こうかとも思ったが、ハンカチーフのおまじないは割と有名な部類のおまじないであった。騎士団内でランベルトが誰かに訊ねたとしたら、すぐにアンネリーゼの?はバレてしまうに違いない。
 アンネリーゼは愛のためならば、いくらでも狡猾になれる自信があった。悪徳王女だというのも、あながち間違いではない。一生気づかれない?ならば、平然と吐く。
 けれども知られてしまう可能性の高い?を吐くほど、愚かではない。
「……先日拾ったハンカチーフは……」
「ええ。実は……卿への贈り物ではなく、おまじないをしていたのです。落としてしまって……」
 怒っているのか、ランベルトは黙り込んでしまった。
「おまじないの力で、卿の心をわたくしでいっぱいにさせようとしていたのです。言いづらかったうえに、刺?を褒められたのも嬉しくて、つい?を……申し訳ございません」
 アンネリーゼは肩を落とし、俯いて素直に謝罪を口にする。
「いえ…………誤解したのは私ですし、謝らないでください」
「怒ってはいないのですか?」
「怒っていませんよ。ハンカチーフは……お返ししたほうがいいですか?」
 アンネリーゼはがばりと顔を上げた。
「ええ、返してくださいませ! あのハンカチーフ、実はわたくしの思い出の品なのです!」
「思い出の品?」
「初めて出会ったときに、卿がわたくしにくださったハンカチーフです。宝物だからこそ、おまじないの効果があるに違いないと思って、あのハンカチーフに刺?したのです! あ……くださったというか、正確には泣いているわたくしに貸してくださったハンカチーフですけど」
 ランベルトは驚いた風に目を見開き、アンネリーゼを凝視した。
「あ……申し訳ございません。貸してくださったハンカチーフを返しておりませんでした」
 返さないどころか、宝物として大事に保管していた。そのうえ、おまじないに使用してしまった。
 自分の私物を勝手に使われたのだ。今度こそ本当に怒らせてしまったと、アンネリーゼは眉尻を下げる。
「悪気はないのです。どうか、寛大なお心でお許しくださいませ」
 アンネリーゼが上目遣いで見上げると、ランベルトは大きく瞬きをした。
 そしてすぐにアンネリーゼから視線を逸らし、額に手を当てる。
「……キルシュネライト卿……」
 相当怒っているようだ。アンネリーゼは絶望した。
「盗人だと、わたくしを訴えてもらっても構いません。罰は受けましょう」
 アンネリーゼがそう言うと、ランベルトは首を横に振った。
「いえ……ハンカチーフのことはすっかり忘れておりました。殿下を盗人だとは思っておりません」
「許してくださるのですか?」
「許すも許さないも……差し上げたようなものですから」
「そうなのですか!? ならばわたくし遠慮はせず、自分のものとして扱いますね」
「ええ。……みな心配しておられるかもしれませんね。そろそろ戻りましょう」
 ハンカチーフを借りたまま返さなかった件が許されたとしても、今夜のアンネリーゼはランベルトに酷い真似をしていた。
 偉そうに言ったわりにダンスは上手くなかったし、背中を踏みつけた。そのうえ、?を吐いていたことも、おまじないで心を手に入れようとしていたことまでも知られてしまった。
 ランベルトは寛大なので怒りはしなかった。けれど不愉快な気持ちにはなったのだろう。先ほど目を逸らされてから、一度も視線が交わらない。
(もう一度、謝ったほうがよいかしら)
 頭を下げようとしたアンネリーゼの前に、掌が差し出される。
「行きましょう」
 ランベルトは相変わらずアンネリーゼから目を逸らしたままであったが、エスコートはしてくれるようだ。
 アンネリーゼはホッとしながら、ランベルトの掌に己の手を重ねた。
(やはり……怒っているのかしら……)
 触れ合った瞬間、ランベルトの手が震え、力がこもった。


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