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青の王と花ひらくオメガ

葵居ゆゆ / 著
笹原亜美 / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-326-2
サイズ 文庫本
ページ数 312ページ
定価 831円(税込)
発売日 2020/08/19

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内容紹介

この世の誰よりお前がほしい
オメガ性を持つ〝神子〟が住まう神殿で、第二性別を持たないセレンは下働きとしてひっそりと働いていた。王家のアルファたちが神子を迎えに来る日――。生まれながらの罪のせいで俯いてばかりのセレンに、「顔を上げろ」と言い放ったのは孤高の第一王子・レイだった。「この俺が気に入ってやったんだ。喜んで抱かれておけ」。王になりたくないと異端の振る舞いをするレイのため、献身的に身体を差しだすセレンだったが…。
健気な蕾が清廉に花ひらく、砂漠の寵愛オメガバース
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

セレン

第二性別を持たない下働き。 生まれながらに罪を抱え、控えめに生きる十八歳。

レイ

リザニアール国第一王子。二十二歳のアルファ。 とある理由から自堕落に振る舞う。

立ち読み

「今からおまえを抱く」
 愛情があるとは思えない声で、レイは顔を近づけた。
「おまえに俺の寵愛をやろう。明日からは誰かに聞かれたら、自分は王子に愛されていると言え」
 言うなり服をはだけられ、セレンは身を硬くした。普段着るものとは違い、羽織って前をかるくあわせ、帯を結ぶだけの服の下には、下着はいっさい着けさせてもらえなかった。レイの呼び出しがそういう意味だと、使用人たちが思い込んでいるせいだ、と思っていたけれど——これは。
「っ、僕は、神子ではありません」
 露わになった胸に手を這わせられ、セレンは夜でも眩しいレイの目を見上げた。長い金の髪。空よりも美しい青の瞳。雄々しさと美しさをかねそなえた、高い鼻梁や顎のかたち。こんなときでも、レイ・バシレウスは目を奪われるような魅力を放っている。
 きっと神子だったなら——あるいはなんの罪もない人間だったなら、うっとりと酔いしれることができただろう。
「——ご寵愛をたまわるような、人間ではないんです」
「いやなのか?」
 レイは薄く笑って思わせぶりに腹を撫でる。誰にも触られたことのないへそのあたりを撫でられるのは、恐怖とくすぐったさを混ぜたような、なんともいえない感覚だった。さっと肌が粟立って、心臓が不規則に跳ねる。
「いや——というわけでは、ない、です」
 不安はある。正しいことだとも思えない。でも。
「僕には、命令に逆らう権利はありません。それに……レイ様には、失礼なこともしてしまったし、宴の席ではお怒りになったのもわかってます。なので、僕でお役に立てるなら、なんでもいたします」
 神官長に言われたからだけでなく、セレン自身が、レイに背こうという気持ちにはなれない。
(それに、僕は大事な身体ってわけじゃないもの)
 普通の人にとっては特別な行為だが、使うあてがないのだから、レイが抱きたいと言うなら差し出すだけだ。
「こちらに来てから、仕事もほとんどありませんし……今日は、なんでもお言いつけどおりにしようと思って、こちらまで参りました」
「なるほど。詫びのつもりで抱かれる気か」
 馬鹿にしたようにレイは唇の端を歪めた。
「控えめなのは使用人としては美徳だろうが、せめて明日からは少しは堂々と振る舞うんだな。下を向くな、と言ってやっただろう」
「——はい」
「この俺が気に入ってやったんだ。可愛がってやるんだから、喜んで抱かれておけ。なんなら神子たちに自慢すればよい」
 レイの手は腹から股間へと動いた。かるく握られて、セレンは思わずびくりとした。自分でだって、トイレや入浴のときしか触らないところだ。なのにレイは、かたちをたしかめるように指を絡めつけ、ゆっくりしごいてくる。ぞわり、と未知の感覚が這い上り、セレンは無意識に膝を立てた。
「っ、本当の、ことを、言っていただいても平気です」
「本当のこと?」
「気に入ったとかじゃなくて……怒っているから、いやがらせとかでも、僕はかまいません」
 敏感な股間のものは、こすられると内側がじくじくと疼くようだ。腫れたように感じられて、破けてしまいそうで怖かった。逃げたいのを必死でこらえると、レイはいらだたしげに舌打ちした。
「気に入ったからだ、と言っているだろう」
「でも……気に入っていただく理由が、……っ」
「理由などおまえには関係ない。俺が気に入ったと言えば、気に入ったんだ」
 乱暴な口調で言い放ち、レイはセレンの脚に手をかけた。大きく左右にひらかせ、膝を高く持ち上げて、腰の下にクッションを押し込む。
「おまえはただ、俺の相手ができて光栄だと喜んでいればいい」
 腰から下を突き出すような体勢に、セレンはかっと赤くなった。赤ん坊がおしめを替えるときのような、みっともない格好だ。裸の上半身を見せることだってはしたないことなのに、大股をひらいて、下半身をこんなふうに見られるだなんて。
 閉じて隠したくてたまらないのに、レイは遠慮なく、割れ目の奥のすぼまりにまで触れてくる。反射的にひくりとつま先が上がり、セレンはきつく目を閉じた。ぐりぐりとすぼまりを押されるのが、怖くて恥ずかしくてたまらない。逃げたり、いやがるそぶりを見せたりはすまいと思うのに、どうしても竦んでしまう。
「使ったことはないか。ずいぶんきつく閉じているな」
 面倒そうなため息が降ってきて、震える指先でシーツを握りしめた。
(いや、じゃない……全然、いやじゃない。役に立たなきゃ)
「申し訳ありません。……こういう、ことは経験がなくて。どのようにすればいいか、教えていただければ、いたします」
「教えて力が抜けるのか? 触っただけでびくつくようでは望み薄だ。性器も、しごいてやったのにろくに反応もしていない」
 不機嫌に言ったレイは舌打ちまでして手を離し、セレンはこわごわと目を開けた。
「香油を使ってやる」
 もしかしてやめるのだろうか、と思ったのだが、彼は枕の上の壁から小瓶を取って、中の液体をセレンの股間にふりかけた。とろりとした冷たい油で、かれた香のようにスパイスと甘い匂いがまじっている。のしそうな香りが自分の腰からくゆり立ち、セレンは息苦しさに唇をひらいた。油はすぐに馴染んでぬるくなる。それがとろとろと、小さな袋周りやすぼまりのあたりになすりつけられたかと思うと、ぬっ……と指が入ってきた。
「——ッ、ん、……」
 反射的に締めつけてしまっても、油の力を借りた指はなんなくセレンの体内に埋まってくる。内側の粘膜がこすられて、震えともれともつかない感覚が、下腹部から胸まで広がっていく。指をえ込んだすぼまりは初めての異物にひくついて、前後に動かされると、苦しさと違和感でどうしても声が漏れた。
「……っ、ふ、……、ぁ……っ、ん、……っ」
 ぬちゅぬちゅと粘ついた音が恥ずかしい。耐えきれずびくりと足が跳ね、レイはまた舌打ちした。
「行儀の悪い足だ」
「すみま、せ……っ、ひ、……ぅっ」
 あげかけた悲鳴は口を押さえて押しとどめたが、衝撃で身体が反り返った。レイは動いてしまうセレンの足を掴むと、指先を口に入れたのだ。
(そんな……っどうして……、足、なんか、)
 この部屋に来る前に、徹底的に綺麗にするよう言われて、身体のすみずみまで洗ったけれど、足指の股にまで舌が入ると、羞恥と申し訳なさでがちかちかした。手で揉まれ、舌でめられるとくすぐったいだけでなく、不安な感じがして力が抜けてしまう。やめてほしくて太ももまでびくついて、それでも離してもらえなくて、涙がにじみそうになる。
 これはやっぱり、辱めではないだろうか。閨では身体を触りあったり口づけを交わしてつがうものだと、セレンだって知っているけれど、足を舐めるなんて聞いたことがない。
 口を塞いで震えるセレンに、レイはにやりと笑った。
「なかなか淫らな身体じゃないか。舐められるのが好きか」
「っ、そんなことは、ありません……っぁ、……あっ」
「舐めてやったらここがそそりったぞ。不慣れだが、本性は好きものだな」
 握られたははじめよりさらに熱く感じられ、はっきりとかたちを変えていた。油をまぶされていやらしく光り、ぷるぷると左右に揺れる。これはいけない反応なのだろうか。
 呆然と見つめるセレンの視線の先で、レイは指を二本揃えてすぼまりにあてがった。ぐっと押し込まれて下腹部が竦み、セレンは喉を反らした。
「んっ、……は、……んん……っ」
 内側から触られると、前の勃ってしまったものに響くのが、今度はよくわかった。じん、と焼けるような感覚が伝わって、もどかしく身体がくねってしまう。雨季の寒い夜に、炎で暖められたときみたいな——深く染み込む熱さだ。
(これ……怖い、)
 レイの指はさっきよりも激しく出入りしている。ずちゅ、と押し上げられると一瞬意識が真っ白になり、ゆっくり引かれればため息が出て、勝手に尻が動く。長い指だ。そういえば、顎を掴まれたときも、あたたかくて力強い手だ、と思ったのだ。
 あれが、あの指が、出たり入ったりしながら粘膜を刺激される——この感覚は。
「気持ちいいのだろう」
 気持ちいいみたいだ、と思うのと同時に低く笑われ、ぼうっと身体中が燃えた。普通はこんなことで、気持ちよくなる人はいないのだろう。恥ずかしいことだ、と我慢しようとしても、ぐちゅぐちゅ続けざまにかき混ぜられると、どうしようもなく腰が浮いた。
「ん、——っ、は、……っ」
 きゅんと甘酸っぱく強張って、ゆるゆる力が抜けていく。弱い目眩が襲ってきて、セレンは身体をくねらせながら荒い息をついた。太い二本の指が抜けていく。
「かるく極めたな。初めてのくせにこれだけ感度がよければ、突っ込んでやってもがるだろう」
 目を細めたレイが服をくつろげ、己を取り出すのを、セレンはぼんやり見つめた。セレンの股間にあるのと同じものが、レイにもある。けれど、とても同じとは言えないほど、彼のものは大きかった。しっかりと太くて、張りつめた先端をしていて、長い。重たそうなそれがセレンの股間にこすりつけられ、ざわりと全身がおののいた。
「っ、むり、です、入らな、……っ、ぁ、……ぁ、ああっ」
 本能的に逃げそうになったセレンをしっかり掴んで、レイは挿入してくる。香油をまとっているせいでなめらかに入るが、太さだけはどうしようもなかった。
「いっ、いた、……ひ、……んッ、い、んぅっ」
「竦むな。力を抜けと言っただろう」
 ねじ込むように、レイは何度も揺すり上げた。そのたびにぐぐっと先端が中をち、まるでくり抜かれていくかのようだった。掘削され、割り裂かれて、ばらばらにされてしまいそう。
「——ッ、ぃ、……っ、……ん、ン、う……っ」
 痛みと熱で、閉じた視界が真っ赤だった。身体は強張っているのに手足に力が入らず、がくがくと揺れる。ひときわ強く穿たれると、腹が破けたみたいに苦しくて、すすり泣くような悲鳴が漏れた。
「きつすぎるな」
 レイのほうも苦しげに声がかすれていて、彼はため息をつくと身体を倒した。びきびきと走る結合部の痛みにおののくセレンの顔を、なだめるように撫でてくる。
「少しのあいだ動かずにいてやる。舐めてやるから、感じろ」
 耳元でく声は、言葉ほど傲慢な調子ではなかった。むしろあやすような口ぶりで、レイは耳に口づける。ちゅ、ちゅ、とを吸われ、セレンはかすんだ目をまばたいた。
 耳を唾液で濡らされると、もやもやとそこが熱くなる。もっと舐めてほしかった。もっと激しく舐め回してもらえたら——きっと気持ちいい。
(変だ……耳なんて、気持ちいいはずないのに……心臓までぞくぞくする)
「……っ、レイ、さ、ま」


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