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誰よりも愛しい君に

井上美珠 / 著
幸村佳苗 / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-093-3
サイズ 文庫本
定価 754円(税込)
発売日 2018/04/13
レーベル チュールキス

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内容紹介

僕がどれほど君のことが好きか、君は知らない
失恋の傷が癒えない美雨にお見合い話が舞い込んだ。今は結婚よりも就職を優先したいと戸惑う美雨だったが、お見合い相手のエリート検事汀から早々に交際を求められて心は揺れる。10才年上の汀は大人の包容力で美雨の心を解きほぐして、お互いを求め合うのはすぐだった。「俺と結婚して欲しい、美雨」優しく甘いキスとは裏腹に、激しい情熱と欲望をぶつけてくる彼に、体は愛される悦びに震える。「嬉しいよ、俺で初めてを経験してくれて」ストイックな素振りをみせながら、匂い立つ色気を放つ男に愛される、極上のラブストーリー。
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

秋川美雨(あきかわ みう)

27歳。祖母と母が経営する実家の「秋川珈琲」を手伝いながら就職活動中。

伊礼汀(いれい なぎさ)

職業、検事。37歳。上司から見合いを勧められるが、いつも断っている。

立ち読み

「待ってました」
「ごめん、いつも。……お腹空いてる?」
「それは汀さんじゃないですか?」
 そう言って可笑しそうに笑った彼女に、首を振る。
「食べるものよりも、今は君が欲しいんだけど。部屋に着いたら、抱いていい?」
 少し強く美雨の手を握ると、小さな声で「こんなところでやめてください」と言いながらも、頬を赤らめてうなずいた。
 手を繋いだままフロントへ行き、宿泊の手続きを済ませるとすぐにエレベーターに乗った。早く部屋の階に着かないかと心がはやっていた。
 エレベーターを降りると、目的の部屋へ行きカードキーをかざす。美雨を先に部屋に入れ、ドアを閉める。ベージュを基調とした上品で落ち着いた部屋だった。美雨は窓際まで行き、外を眺めてから汀の方に振り向いた。
「上層階だけあって、綺麗ですね」
 微笑んだ彼女の表情を見ながら、汀は上着のボタンを外した。それからネクタイにも指を入れる。ブリーフケースからコンドームの箱を取り出し、そのまま美雨の身体を抱き締めた。
「汀さん? どうしたの?」
 性急すぎる汀の様子に、美雨は驚いたらしい。
「部屋に着いたら抱いていいか聞いた。君はうなずいた」
 彼女を抱き上げ、ベッドに横たわらせる。大きなベッドは二人が寝ても余るくらいだった。
「どうしてそんなに、私のこと……っあ!」
 服の上から胸を揉むと、美雨は背を反らせた。
「好きだから。君じゃないといけないって、今日はもっと知ったから」
 性急に服を脱がせていく。彼女はいつもブラウスだから、脱がせるのがもどかしい。おまけに今日はパンツスタイルで、脱がせにくい。
 裾を引き出して、ガウチョパンツを剥ぎ取る。少し強く引っ張り、足から下着と一緒にすべてを脱がせる。
「汀さん……っ」
 シャワーを浴びさせるなんて余裕はなかった。汀は彼女の下着のホックを外し、下着と一緒にブラウスも押し上げて脱がせた。
 裸身になった美雨を見ると、彼女が欲しくて腰から疼くような快感がせり上がってくる。ネクタイを引き抜き、シャツをスラックスから引っ張りながら、身を屈めて彼女にキスをする。
 胸を揉むと、小さく喘いだ美雨の声に煽られ、その先端を口に含み舌で転がすように愛撫する。どこもかしこも柔らかい、絹のような肌だった。たまらない。
「胸、柔らかくて触り心地がいいな」
「そ、んなこと……っ」
「気持ちいい?」
 目を伏せた美雨の頬を撫で、胸を手で揉みながら脇腹へキスをした。臍の横に唇を這わせて、足の付け根を少し強く吸った。すると淡い薔薇のようなキスマークが浮かび上がり、汀は満足した。
 そうして下に視線を移し、美雨の足を開きながら、彼女の秘めた部分に顔を伏せる。
 濡れ始めていたソコを下から上へと舐め上げると、美雨が身じろぎして腰を揺らした。
「あっ……ん」
 声に後押しをされるように、汀は美雨と繋がる部分を丹念に舌で愛撫する。その少し上の尖った部分も指で摘み、優しく撫でると、彼女のソコが反応しさらに潤いを増した。
「あまりしないで……恥ずかしい、です」
「どうして?」
「それ、されるの、この前のが……初めてで……っあ!」
 繋がる部分の周囲を舐めると、美雨が艶やかな声を上げて、腰を揺らした。その様子が色っぽくて、誘っているようにも見えた。
 以前抱き合ったときに、美雨のこの部分を初めて愛撫した。それが彼女にとって初めての経験だったと知って、言いしれぬ興奮を覚えた。
「嬉しいよ、俺で初めてを経験してくれて」
 汀はシャツを脱ぎ、スラックスのベルトを緩めてボタンを外した。前を開き、スラックスと下着を一緒に下げると、すでに熱くなりきっている自分のモノが出てくる。
 彼女と早く繋がりたくて、コンドームを手に取りパッケージを噛み切って、自身のモノにそれを着けた。
 美雨の内腿を撫でながら、張り詰めた自分自身を美雨のソコに滑らせる。何度か馴染ませるようにしたあと、先端を彼女の中に埋めていく。
「美雨、君が欲しい」
 半分まで入れたところで、我慢ができなくなり、そのあとは腰を進めて押し入れた。
「あっ!」
 彼女が白い喉を仰け反らした。美雨の中は狭く、感じているのか汀を締めつける。
「君も待っていたようだ」
 目を眇めて汀はもうすぐに達してしまいそうな感覚を、歯を食いしばって耐えた。
 美雨は繋がったとき一度達したようで、喘ぎながら震えた。突き上げるたびに甘い声を零す姿が可愛くて、愛しさがあふれてくる。上下する胸が艶めかしく映り、たまらずそこに手を伸ばし、少し強く揉み上げながら腰を大きく揺らした。
「なぎ、さ、さ……っん」
 もうそれから動きを止めることはなく、ただ自分の快感を追うばかりだった。
 彼女を揺さぶって突き上げ、甘い身体を夢中で貪った。こめかみから落ちた汗が、美雨の肌を濡らす。絶頂に向かいながらも、汀の下で喘ぐ可愛い美雨をもっと見ていたくて、二つの気持ちがせめぎ合う。
「感じてる? 美雨、可愛いな」
 頬を上気させ、赤い唇を開き、艶やかな声を出す。
 そんな姿を、ただ汀だけに見せてくれる美雨が、心底、愛しい。
「好きだ、君が。……愛してる」
「私、も……っ」
 手を伸ばしてくる美雨に応え、汀は彼女の手を取って指を絡めてから最奥を穿った。
 耳元で聞こえる彼女の息遣いも汀を煽り、大きく腰を打ちつけると彼女の身体がびくんと震える。
「も、イキ、そう……汀さん……っは!」
 美雨の中がきゅっと汀を締めつける。
 彼女が言葉通り達しそうなのを感じて、自分のモノをゆっくりと引いてから一気にグッと押し込んだ。
 その瞬間、締めつけが強くなり、汀は快感に目がくらんだ。
 美雨が小さく甲高い声を上げた。汀を抱き締める手に力がこもって、自分を解放したのがわかった。
「ん……っ!」
 小さく呻き、汀もあとを追う。腰を何度か揺すって、自分の熱を最後まで出し切ると、美雨の上に脱力したように折り重なる。
 彼女を抱き締めながら身体を横に向け、足を引き寄せて余韻に浸った。
「君の中は、気持ちいい」
 首筋にキスをし、耳元でそう言うと、美雨の中が少しだけきゅっと反応した。
「君も、同じ?」
 汀が少しだけ身体を離して美雨を覗き込むと、彼女は顔を赤くした。
「汀さんも、まだ、硬い、です」
 そう言って潤んだ瞳で見上げてくる美雨に、たまらず深いキスをする。まだ息が整っていない美雨は少し苦しそうな顔をするが、構わず汀はその唇を追って離さなかった。ゆっくりと彼女の口腔内を味わってから、美雨の頬に顔を寄せた。
「もう一回、していい?」
 ゆっくりと自分のモノを抜こうとすると、美雨が汀の腰に手を伸ばしてくる。
「もう少し、このまま……」
「そうしたいけど、ゴム、替えないと」
 美雨の頬を撫でると、彼女は小さく首を振り目を潤ませた。
「いいから、このまま……まだ、こうしていたい」
「美雨、わかるけど……一度抜かせて」
 彼女の目が汀を誘惑する。一度息を吐き出し、自身を引き抜いた。
 美雨が、小さく声を零して顔を伏せる。
 新たなコンドームを手に取り、手早く着けるとゆっくりと彼女の中に埋めていく。
「あ……」
 入れると同時にため息のように息を吐いた美雨は、少し眉を寄せて汀を見つめた。
「私たち、結婚するのだから、もう……好きにしていいと思うんです」
「好きにって?」
 汀の首に両手を回して頬を寄せてくる。
「今は、ゴム、着けてるけど……今度は汀さんを直に感じたいです」
 汀の心臓の鼓動が跳ね上がる。
 いい年をして、セックスの最中にこんな高揚感を感じるとは思わなかった。
 恋をしている。
 こんなに抱きたくて、愛しくて手放したくない人に初めて出会った。
 今度は直に汀を感じたい、という言葉に、込み上げてくる欲情を抑えきれなかった。
「……じゃあ、今度は」
 小さくうなずいた美雨を抱き締める。
「でも、できれば、子供は……先がいい。まだ、君を愛したいから」
 汀は自分の言葉に困惑する。結婚をするというのに、どこか子供っぽいことを言っている気がする。そして、こんなことを口にする自分がどこか恥ずかしい。
「そうですね……まだ、愛し合いたい、ですね」
「ゴムは、必要だ」
 何を言っているんだ、と内心つぶやく。
 美雨はそれに笑って、何度もうなずいた。
「必要ですね……でも、ときどきは、そのままで……深く愛して」
 耳まで赤く染めて言う美雨に耐えられず、汀は彼女を強く突き上げた。
「あっ!」
「気持ちいい? 美雨」
「あっ……ん、いい……」
「いつも深く愛してるよ。これからも、ずっとだ」
 汀は彼女の身体を起こし、抱き合う体勢になって、美雨の両手を自分の首に回させた。
「私も、です」
 そう言ってくれる美雨が可愛い。
 何度しても足りない彼女とのセックスは、際限がない。
 二回目のセックスもまた性急に求めてしまい、彼女を喘がせる。
 次はきっと優しく、と思いながらその自信を持てないほど、汀は美雨に溺れるのだった。


   12


 少し明るくなってきたのを感じて、美雨は目を覚ました。
 隣を見ると、規則正しい寝息を立てた汀が寝ている。その手は美雨の胸の上にあり、無造作に手を投げ出して寝ている汀が可愛かった。
 白い天井は見覚えのないもので、そうか、とホテルにいることを再認識する。
 汀と出会う前の恋愛では、こんな綺麗なホテルを用意してくれることはなかった。ビジネスホテルばかりを使っていて、元彼は起きるとすぐに着替えるためにさっさと帰ったけれど。
「……仕事、そのまま行く?」
 汀はぐっすりと寝入っている。少し首を動かして時計を見ると、もうそろそろ起きた方がいい時間だ。スーツがそのままだと、朝帰りだとわかってしまう。
 美雨と付き合っていることを職場の人たちは知っているだろうから、同じスーツだと何か言われるかもしれない。
「汀さん」
 彼の身体を揺らすけれど、目蓋を震わせるだけで起きなかった。汀は朝が少し弱いのを美雨は知っていた。初めて家に泊まったとき、ベッドの上でボーッとしていた汀は、どこか無防備で逆にドキドキしたものだ。
「汀さん、お仕事、大丈夫?」
 耳元でそう言うと、汀が大きく息を吸い、胸が上下する。それからしばらくしてようやく目を開けた彼は、まだ眠りのさなかのような表情で美雨を見る。
「おはようございます」
「ん……おはよう……今何時?」
「六時です。一度着替えに戻るでしょう?」
「……」
 もしかして、低血圧なのかもしれない。スーッと目を閉じてしまった汀を見て、美雨は頬を撫でた。そうすると彼の大きな手が美雨の手を覆う。
「着替えに戻るよりゆっくりしたいな」
 目を閉じたまま、胸の上にあった手が美雨を引き寄せ抱き締める。
「でも……朝帰り、ってすぐにわかります」
 美雨の目の前でゆっくりと瞳が開き、瞬きをする。
「女の人は目ざといし、同じスーツを着ていると昨日の夜のことを考えるかも……しれません」
 あの綺麗な事務官のことを思い出し目を伏せると、美雨を抱き締める腕に力がこもった。
「別にいいと思うけど。俺が君と付き合っているのは知っているから……美雨、俺の近くに女の職員がいるって、知ってる? 事務官が女なんだけど」
 まだ起ききっていない目で汀が美雨に問いかける。背中を撫でる手が温かい。
「知って、ます」
「どうして? 俺、話した?」
「いえ……平野さんから、聞いたんです。たまたまそういう話になって……」
 彼の事務官が秋川珈琲に来たのは内緒だ。彼女の言葉は記憶にあるが、気にしないことに決めている。けれど、その彼女が昨日と同じスーツを着た汀を見たら、どう思うだろうかと脳裏をよぎったのだ。
 別にどう思われようと構わないが、汀の仕事がやりにくくなるのはいやだなと思った。
「見せつけてもいいかな。俺、なんだかすごく真面目でできる検事に見られているし。あからさまに、昨夜は彼女とよろしくやってました、ってのもいいかも」
 そうしてクスッと笑い、美雨の鼻先に自分のを擦り付けてくる。
「実際そうなんでしょう?」
「できる検事は、地方に行かないよ。俺は、普通に仕事をしてるだけだ」
 本当にそうなんだろうか、と思いながら美雨も彼の背に手を回し、男らしい肩に手を這わせた。
「できる人はみんなそう言います」
「君の元彼がそうだった?」
「いえ……その上の部長がそうでした」
 彼は笑って、美雨の唇に小さなキスをする。
「元彼とはどういう経緯で付き合うようになったんだ?」
「……あまり思い出したくないですけど……しばらく一緒に仕事をしていて、付き合って欲しいと言われたんです。何度かデートをして、彼は上司で、尊敬もしていたんです。でも、本当はそんな人じゃないって、薄々わかってきていたんですけど、恋にしがみついていたのかも」
 美雨が目を伏せると、その目蓋に汀がキスをした。
「今は?」
「汀さんとは、本気の恋をしています。早く、出会いたかった」
 美雨の言葉に彼はフッと笑って、美雨を抱き締め直した。
「俺もそう思う。お互い、遠回りしたな」
 彼と同じ気持ちだったので、顔を見合わせて笑った。そして美雨の方から唇を重ねる。小さなキスを二度すると、彼がそれを深くし、口の中に舌がゆっくりと入ってきた。
 汀が身体を反転させ、美雨を自分の上に乗せて背中を撫でた。彼の上になったのは初めてで、男らしいがっしりとした筋肉を感じて、ドキドキした。
 唇が水音を立てて離れると、汀は美雨の髪の毛をそっと耳にかける。
「このまま、ちょっとだけ、抱いていい?」
 昨夜も熱い時間を過ごした。起きたとき、彼のモノがまだ中に入っている感覚があったくらいだ。それなのに朝から、と思い顔を赤くする。
「でも、仕事、が……」
「ここから出勤するから」
 彼はそう言って美雨の臀部を撫で、さらに後ろから身体の隙間に指を入れてくる。最初は浅い部分を出入りしていたかと思うと、奥まで入ってきた。
 それに合わせて美雨の身体が濡れてきて、何度か指を動かしただけで動きがスムーズになる。
「あ……っは」
 美雨が喘ぐと、指が増えて奥を刺激する。汀の淫らな指に耐えられなくなって、彼の胸に頬を押しつけ、熱い息を吐いた。
 コンドームのパッケージを開ける音がした。彼は美雨の中から指を抜き、代わりに自分のモノを宛がう。指とは比べものにならない大きな彼の質量が分け入る予感に、息を詰めた。
「美雨?」
 先端が入ったところで、彼の上に手をついて起き上がる。片手を使って彼自身を、美雨自らゆっくりと招き入れていった。
「……っあ!」
 身体の重みの分、汀が身体の奥深くに入っていく。中がいっぱいになり、美雨は大きく息を吐き出した。
「いい眺めだ」
 彼は掠れた声でそう言って微笑む。下から腰を突き上げられると、ズンとした疼きが美雨の下腹部へ届く。思わず小さく声を漏らすと、汀は美雨の腰を掴んで揺らした。
「動いて、美雨」
 汀の声は、熱っぽく興奮で掠れていた。
 美雨は言われるまま、まるで命じられたかのように自分の腰を上下に揺らした。彼を下にして、顔を見られながらだと、恥ずかしさでいっぱいになる。
 下半身をより疼かせるのは、彼の色っぽい表情だった。
 いつものスーツ姿とは違う汀が、美雨の身体で感じている顔。身体の中でわかる汀自身の硬さや、脈動が、美雨の快感を高めていく。
「あ……っな、ぎさ、さん……っん!」
 自分で動いているのに早くも限界が近くなる。上下だけでなく、円を描くように、汀の上で腰を揺らす。
「イって美雨……俺もイクから」
 美雨は目を細め、胸を仰け反らせて小さく声を出す。
「はっ……あん……っ」
「頭が沸騰しそうだ」
 彼は起き上がって、美雨を抱き締めたかと思うと、そのまま自分の下へと組み敷いた。
 それから何度も突き上げられ、美雨は夢中で彼の背に手を回して抱き着いた。
「あっ……も、汀さん……っ」
 汀が大きく美雨を揺り動かしたときに、達してしまう。
 彼もまた同じときにイったようで、美雨を見ながら胸を上下させていた。
 そして息も整わないうちに甘いキスをされ、苦しかったけど幸福だった。

     ☆ ☆ ☆

「美雨、君が良かったらだけど、一緒に住まないか?」
「え?」
 彼がネクタイを締めながらそう言うのを聞いて、美雨は目を見開いた。
「そんなに驚いた顔をしなくても……もう婚約してるし、こうやって外泊させるのは、君のおばあさんやお母さんに申し訳ないと思ってね」
 確かにお泊まりだと、汀とセックスをしているのはあからさまにわかるだろう。いくら成人していると言っても、実家に住んでいる美雨はやや恥ずかしさもある。
 初めて朝帰りしたときの家族の顔は、ちょっと微妙だった。
「それは、確かに……でも、汀さんの家に行ってもいいんですか? その……荷物とか寝るところとか……」
 汀の家のベッドは少し大きかったけれど、二人で眠るには狭かった。二人で住むには十分な広さがある彼の部屋だが、美雨の荷物を持ってくると、手狭になるかもしれない。
「それは構わないよ。ベッドはもう少し大きいのを買おうと思ってた。ただ、あまり家具を持ち込むと転勤になったときに大変だから、そこは最低限にお願いしたい」
 転勤と聞いて、ああそうだな、と思い直した。
 彼の家は必要な家具しかなかった。それを見てわかっていたにせよ、一緒に住むとなると、今使っているものを厳選しなければならないだろう。
「あと、ソファーを買ってもいいな。君が来るなら」
「いいんですか?」
「あった方がいいけど、今までは一人だったから持っていなかっただけ。できればソファーに座ってゆっくりテレビでも見て、二人で楽しめたらいい」
 優しい眼差しを向ける彼に、美雨は微笑んだ。
「ありがとうございます。いいソファーが見つかるといいですね」
「二人で家具を見に行かない? ベッドもいろいろあるから」
 汀と二人で家具を見に行くなんて、いよいよ結婚をするんだな、と胸がときめいた。自分が誰かと結婚して新しい生活についてあれこれ話す日がくるなんて、少し前までは思いもしなかった。
「なんか、幸せですね。結婚するんですね、私……」
 目を伏せて微笑むと、彼が顎に触れ美雨を上に向かせた。
「そうだね。互いの両親に挨拶も済ませたし、あとは結婚式の場所や日取りを決めないとな。新婚旅行も楽しみだ」
 美雨がうなずくと彼は唇に軽く音を立ててキスをした。それから抱き締めてきて、美雨の頭に顎を乗せる。
「仕事に行きたくないな……君と起き抜けにセックスしたから、仕事中思い出しそう」
 フッと笑って美雨の頭を撫でる。
「美雨が上に乗って動いてくれるとは思わなかった」
「あ、あれは……雰囲気的に、そんな感じに……」
 恥ずかしさにカーッと顔が熱くなってくる。騎乗位なんて、要求されてもしたことがなかったのに。汀の上に自分から起き上がってしたのには、ちょっとはしたなかったかも、と思った。
「あまり言わないで。恥ずかしい、です」
「良かったよ」
 そうして彼が笑み浮かべるのを見ると、耳まで赤くなりそうだ。
「好きなんですか? あの体位」
 顔を伏せながら言うと、汀は考えるような素振りをした。
「特別っていうのはないけど、下から君を眺めるのは興奮した」
 きっと彼は前の彼女とあの体位をしたことがあるのだろう。美雨が上になったとき、彼は余裕そうだったし、美雨の気持ちのいいところをすぐに見つけて突き上げてきた。
 美雨より経験が豊富な彼には、そんなに新鮮みがなかったかもしれないが、興奮したと言ってくれたことは良かったと思う。
「汀さんには、普通なんでしょうけど、私は初めてしたので……もう、しないです」
「どうして?」
「だって……思い返せば返すほど恥ずかしい。それに、汀さん、慣れてたから」
 美雨の言葉に苦笑した彼は、少し力を込めて美雨を抱き締める。
「君が俺の上で腰を振っているのが、良かったんだ。今まで、あんなに感じたことはなかったよ。それに、君が恥ずかしいのはわかってた。それが可愛くて、いつもより早くイってしまったけど」
 そう言って頬を撫でて美雨の目元を指でさする。
「良かったよ、本当に。初めて君が男の上に乗ったと聞いて嬉しい。他にしたことがないものがあるなら、全部、俺として欲しい」
 上級者すぎる発言に、美雨はたまらなくなり汀の背中を叩く。
 汀は声を出して笑ったあと、美雨の額に自分の額をくっつける。
「何をしたことがないのか、教えて」
「そんなこと……汀さんって、すごくエッチですね」
 少し唇を噛みながら睨むようにして言うと、彼は美雨の唇に指を這わせ、噛むのを止めさせた。
「俺もそう思う。自分でもこんなこと言うのは、びっくりしてる。でも、好きだから君と気持ち良くなりたい」
 そう言って彼は唇を重ねてきた。浅く啄むキスからぴったりと唇を重ねて角度を変え、開いた唇の隙間から舌が入ってくる。彼に搦めとられながら、美雨は手を伸ばして彼の首に腕を巻きつけた。
 身体が浮いたかと思うと、ベッドに横たえられ、大きな手で胸を優しく上下に揉まれた。
「ふ……っん」
 彼の背に手を回し、背骨をなぞると、ゆっくりと唇が離れていく。
「……これ以上すると、仕事に行けなくなる」
 はぁ、と熱い息を吐き出した彼は、美雨の身体を抱き起こした。
「君といると、いつもと違う自分になる。困るよ、好きすぎて」
 そうして小さなキスをすると、立ち上がる。
「汀さん」
「ん?」
「私も好きすぎて、困ります」
 同じ気持ちだと告げると、彼は声を出して笑った。
「本当、仕事行きたくない」
 彼は美雨の手を引いて立ち上がらせた。
「帰ろう。ここにいると、仕事を休みそうだから」
「はい……でも、この時間だと着替えに戻れないけど、大丈夫ですか?」
「シャツはロッカーに一枚替えが入っているから。本当にいいんだ、このままで」
 美雨がそれでも心配そうな目を向けると、汀はもう一度大丈夫、と言った。
「このまま出勤したいんだ。気にしないで。好きでやってるんだから」
 彼がそう言って笑みを向けるので、美雨はうなずいた。
 あの事務官の女の人がなんと思うだろう、と考えた。
「それに、事務官は昨日から男に変わったから」
「え?」
「支部長が、事務官の配置換えをしてね」
 どこかほっとしている美雨がいる。こんなことを思うようになるなんて、少し自分が汚く感じるけれど。
「じゃあ……さほど気にしなくてもいいですね」
 うなずいた彼に、美雨は抱き着いた。
「お仕事頑張ってくださいね」
「だからそうやって引っつかれると、仕事に行きたくなくなるって」
 苦笑した彼は美雨を軽く抱き締めた。

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