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君にひと目で恋をして2 Sweet words of love

井上美珠 / 著
八千代ハル / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-245-6
サイズ 文庫本
本体価格 本体685円+税
発売日 2019/11/15
レーベル チュールキス

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内容紹介

職場ではクールな彼が、二人っきりの時は豹変!? 文庫化にあたり、その後の二人を描いた書き下ろし後日談を収録!
クールでストイックな魅力で評判のイケメン機長・森石蕗と秘密の社内恋愛を続ける地味系女子の寿々。社内では営業スマイルを見せる彼だけど、二人の時は「俺のイイ女はお前だけだ」と色香を放って情熱的に求められ、胸がいっぱいになる。先輩の結婚式に出席してからは二人の将来を意識し始めてしまう寿々だったが、そんな時、石蕗の同期のパイロット・仙川に二人が付き合っていることがバレてしまい!?

人物紹介

石井寿々(いしい すず)

大手航空会社JSAのグランドスタッフ。27歳。

森 石蕗(もり つわぶき)

大手航空会社JSAの最年少機長。35歳。

立ち読み

 遅くなっても話があるので行くと言った通り、寿々は彼の家に向かった。
 雑なバレ方はしたくなかったのに。千八子と仁田原のように、結婚します的なことを自ら言った方が良かった気がする。
 ただ、あの指輪を渡すタイミングは彼らしいかもしれない。ある意味ドラマティックで、平凡とはかけ離れてしまったけれど。
 周囲に言わせればフツーの寿々には起こり得ないことなのだ。
 きっと、石蕗とグアムで出会った時から、ドラマは起こっていたのだろう。
 彼の家に着いてインターホンを押そうとしたが、鍵を持っているので自分で開けて中に入った。
 結構遅くなったけど、待っていると言った通り灯りはついていた。TVの音も聞こえてくる。リビングのドアをそっと開けてみると、彼はソファに座って足を組んだまま寝ていた。
 日付はもうすでに次の日になっているし、ロサンゼルスから帰ってきたのだから疲れているのだろう。
「寝顔もイケメン……こんな素敵な人を落としたら、誰でも思うところあるよね……」
 大好きな彼がカッコよすぎて本当に困る。フツーと言われたことなどを気にしていたら、きりがない。
 それに寿々は、石蕗と結婚をするのだから、ちょっと何か言われてもどうでもいいこと。開き直りは必要だと思いながら、寿々は彼の隣に座った。
「フキさん?」
 少し首を傾けて寝ているから、起きた時痛くならないかと寿々は彼の顔を覗き見る。
「フキさんってばカッコイイから本当に疲れ吹き飛ぶ」
 頬に手を寄せると、パチッと目を開いたのを見て、手を引っ込めた。
「……寿々、来てたのか……来たんなら起こせよ」
 身体を起こした彼は、もう一度目を閉じて目のあたりを両手で覆った。それから深呼吸をしたあと、眠そうな目で寿々を見る。
「もう日付変わってるし、疲れてるでしょ?」
 寿々が身を屈めて目にかかっている髪の毛を軽く払うと、石蕗は何度か瞬きをした。
「こんなところでうたた寝する方が疲れる」
 首を前後左右に動かすのを見て、やっぱりちょっと痛かったんだな、と彼の首に手を伸ばす。
「痛かった? 首傾げて寝てたから」
「ああ……それより、寿々、仕事お疲れ」
 頭を一度ポン、とされた。自分も疲れているだろうにこの対応。
 優しい人。
 周囲へのバレ方はあれだったけど、この大好きな人と一緒に居られるのだから、もういっか、と思った。
「ねぇ、フキさん……指輪はさ、二人っきりの時が良かったな。ちょっと周囲の目が痛かったし」
 寿々の困ったような表情に石蕗は髪を掻き上げ、肩を落としてうなずいた。
「……そうだな。確かに雑で悪かったけど、これで良かったかと思う。どちらにせよ、少しは騒がれるのは当たり前だ。俺は会社のために雑誌にも載ったしな」
 そうでした、と寿々は目を瞬かせる。イケメン機長というのを前面に出しての取材だった。広報誌にもよく載っているし。最近は同期の仙川も載っているらしいけれど。
「それに、お前……周りに説明するの下手そうっていうか、千八子みたいにきちんと言えるか?」
「…………」
 石蕗に指摘されると、寿々は黙り込むしかなかった。
「だから、これで良かったかな、と俺は思うんだが」
 そうかな、そうかも。
 寿々は下を向いて目を瞑り考える。
 でも千八子は美人だし、寿々みたいなこと言われなさそう。しかし、この考えはネガティブだと頭の中で振り払った。
 気を取り直してまだスプレーで固めたままの前髪に触れ、それを軽く崩す。すると石蕗はほんの少し目を細めて、眩しそうに寿々を見ていた。
「なに?」
 首を傾げながら尋ねると、彼は呆れた顔をする。
「なに、って……俺はお前の彼氏から婚約者に昇格したつもりだけど、違うのか?」
 婚約者というフレーズが、頭の中で何度もリフレインする。
 寿々は唇を思わずキュッと引き締めた。どこか甘い響きに、顔が変になりそうで。
「寿々?」
「そっか……私、フキさんの婚約者だね」
「そう。俺とお前は近いうちに結婚する。森寿々になるって言っただろ?」
 森寿々にしてくださいと自ら言った。なんだかそれはとても甘く、自分は石蕗と同じ姓になり、彼のものになるのだ。
「自分で、森寿々にしてって言ったけど、すごくヤバイ……こんな幸せでいいのかな」
 両手で顔を覆いながらそう言って、大きく息を吐いて、寿々はバッグの中から青い箱を取り出す。白いリボンをかけられたそれは、有名なブランドの物だ。
「どうしてこのブランドにしたの?」
「ロサンゼルスだったから」
「え?」
 カクッと肩が抜け落ちそうな返事に、寿々はむくれてしまう。
「ウソでもいいから似合いそうだったからこれにしたんだよ、とか言って欲しかったな……」
 石蕗は、あのなぁ、と言って頭を掻く。
「ウソついてどうする。寿々に早く指輪をあげたかっただけだ。お前に似合うと思って買ったんだから、とにかく開けてみろよ」
 なんだか石蕗の言葉に釈然としないまま、リボンを解いて箱を開ける。そこで、写真撮っておけばよかった、と思ったが、中に入っているケースを取り出し、上蓋を開けるとキラキラした可愛い指輪が収まっていた。
「わ……」
 ダイヤモンドが指輪の半分を占めていた。中央の部分が一番大きくて、その両横に三つずつ丸枠に収まったダイヤモンドが並んでいる。まるでバブルみたいな形で、控えめなようで目立ち、とても綺麗だった。


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