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皇帝に魅入られる花嫁

橘かおる / 著
蘭 蒼史 / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-008-7
サイズ 文庫
定価 649円(税込)
発売日 2017/07/14
レーベル ロイヤルキス

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内容紹介

わたしの妻になってほしい
ナバーレ帝国皇帝の花嫁候補として白羽の矢が立った、かつての大国神聖ジウ皇国の男爵令嬢カリーナ。あまりの身分違いに恐れ多いと断るが、国家命令としてしぶしぶ向かわされることに。見向きもされないだろうと、つかの間の休息として王宮で過ごすと決めたカリーナだったが、はきはきした物言いが皇帝から気に入られてしまったみたい!? だけど誤解から乱暴に純潔を散らされてしまうカリーナ。灼熱の塊が最奥を溶かすのに、触れる指先は優しくて勘違いしそうで…!? 極上ピュアロマンス♥
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

カリーナ

18歳。神聖ジウ皇国の男爵家令嬢。

明るく健気。はっきりした物言いがアシュレに気に入られて!?

アシュレ

28歳。大国ナバーレ帝国の皇帝。

各国との政略結婚のため、花嫁候補を呼びつけている。

立ち読み

「何をしている! 侵入者だ、捕らえよ!」
 皇帝陛下……。
 鋭い声が下知を下し、男たちが逃げていく。集まった衛兵たちがそれを追いかけていく入り乱れた足音もした。本当に助かったのだ。
 傍らに皇帝が膝をつき手を差し伸べた。ベラがぐるるると心配そうに喉を鳴らしている。
 被せられた布をナイフで切り裂いてカリーナを見いだした皇帝が、ほっとしたように表情を緩めた。
「よかった。無事だな」
「無事、では、ありません。飲み物に、媚薬が……」
 震える声でカリーナは訴えた。
「媚薬?」
 それを聞いた皇帝が、カリーナの顔を覗き込む。不自然に赤らんだ顔、噴き出す汗、そして触れるたびに震える身体に異変を察したらしく、再びカリーナを布でくるみ込んで抱き上げた。
「モラン。私の部屋に連れていく。侍医の手配を」
「ただいますぐに」
 皇帝は急ぎ足で自室を目指した。誰とわからぬように、布で覆ったままにしてくれている。
 カリーナは皇帝に運ばれながら、荒くなる息を必死で押さえていた。恥ずかしい場所が疼くなど、この人には知られたくない。
 けれども触れ合ったところから身体の温もりが伝わってきて、カリーナを狂おしくさせているし、フレグランスと入り交じった微かな汗の匂いにさえ、過敏に反応してしまう。どうしたらいいのかわからない。切なくて苦しくて、誰かなんとかしてほしい。
 カリーナが運び込まれたのは皇帝のベッドルームだった。途中でモランが、冬宮の方がいいのではと言いにきたが、皇帝は一蹴する。
「目の届かないところに置く気はない。それより侍医はまだか」
「間もなく参ります。先にグラスの中身を検分しているようです。何を飲まれたのかわからなければ、手当てのしようがないと」
 ベッドにそっと下ろされ、布を剥がされた。カリーナは涙でいっぱいの目で皇帝を見上げる。
「見ないで、お願い。わたし、おかしくなってるの」
 皇帝は痛ましそうに眉を寄せて、汗で額に張りついた髪の毛を掻き上げてくれた。
「どこもおかしくない。たとえおかしくても、そなたに違いはない」
 その言葉にはほろりときたが、額に触られただけでも肌がぞくりとする。それが身体の奥の違和感を掻き立てるのだ。経験のないカリーナだが、これが欲情だということはわかっていた。小姓が媚薬だと言っていたから、多分間違いないだろう。
 侍医がやってきた。カリーナの顔を見てやはりと頷き、熱と脈を測ったあとは、薬の説明を始めた。
「あなたが飲んだのは、ごく普通に媚薬として知られているものです。一過性のもので習慣性はありません。今夜一晩少々辛い思いをされるでしょうが、朝にはおそらく抜けていると思われます。なんとか耐えてください」
「そんな、これを我慢しろなんて……」
 カリーナは口籠もる。今でも身体中が疼いて辛いのに、これを一晩と考えたら、気が遠くなりそうだ。
「たいしたことはありません。我慢できる範囲かと……」
 言いかけた侍医を皇帝が叱責する。
「黙れ! この状態をたいしたことがないだと。なんならそちにも飲ませようか。一般的だという媚薬を。そうすればどれだけ辛いか、我が身で確かめることができるというものだ」
 侍医はひっと息を呑み、申し訳ありませんと平身低頭して謝った。
「役立たずめ」
 怒りのまま皇帝は、侍医もモランも従者たちも、皆部屋から追い出した。そしてカリーナの傍らに腰掛けると、真摯な表情で話しかけてきた。
「カリーナ、私に助けさせてくれないか」
「助けて、くださるの?」
「もしそなたがよければ。触って発散させれば効力も早く消えると思う」
「触るって……」
 カリーナは絶句した。
「決して嫌なことはしない。助けたいだけなのだ。カリーナ、任せると言ってほしい。そなたが苦しむのを見ていられない」
 カリーナは唇を噛み、どうしようかと迷う。疼いている身体を宥めてもらえば、それはずいぶん楽になると思う。でも身体に触れられるのは……。
「いいと言うのだ、カリーナ。私にはそなたに触れる権利がある。そなたは私の花嫁候補なのだから」
 そんな理屈は通らないとわかっていて、皇帝は言っている。権利を主張し強要することで、仕方なかったとあとで言い訳ができるように。やはりこの人は、冷たいだけの人ではなかった。
 身も心も限界に近い。身体中何かが這い回っているようで、ぞわぞわざわざわして気持ち悪かった。一方で脚の間が切なくて、恥も外聞もなく摺り合わせたい、掻き回したい。あんなところに指を入れることを切望するなんてなんて、本当に恥ずかしいのだけれど。
 身動いだだけで肌に服が擦れ、全身がぴりぴりする。これが少しでも楽になるなら……。
 カリーナは濡れた瞳を皇帝に向け、頷いた。
「お願い、します」

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