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9784866692784

ドS様なんかいりません! 売れ残りそうなので密かに婚活したら地雷踏んだようです

しき / 著
加々見絵里 / イラスト
ISBNコード 978-486669-278-4
本体価格 本体1,200円+税
発売日 2020/03/27
ジャンル フェアリーキスピュア

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内容紹介

《妹に婚約者候補(?)を取られた上に、婚活で遭遇したハイスペ男子が極悪でした!?》
王宮で働くアスリアは『冷血無慈悲の氷の女』と呼ばれる仕事人間。けれど本当は誰かに甘えたい、泣きたい、結婚だってしたい! 思いつめた末に、普段のイメージを封印しお見合いパーティに参加することに。するとそこには場違いなほどハイスペな王太子側近リヤルテ・サーディックの姿が! 彼がいつもと違うアスリアをからかいつきまとったせいで婚活は大失敗。その上、焦り涙ぐむ彼女が気に入ったと口説き始め――冗談じゃない! こんなドS男、絶対いりませんから! 第一回フェアリーキス大賞金賞受賞作「この世で一番美しいのは『王子です!』」より性格極悪紳士のスピンオフが登場!

立ち読み

「お集まりの皆様、今宵は是非この場をお楽しみ下さい。それでは、新しい出会いに乾杯」
「乾杯!」
 お見合いパーティーの主催者であるフォックスウィンの店主の声に合わせて、その場に集まった大勢の男女が手に持ったグラスを掲げる。
 これがパーティー開始の合図だった。
「さ、さて、どうしようかしら」
 仕事の休みが今日と明日になるよう調整した為、フォックスウィンのある隣町への移動は早めに行えた。
 パーティーが行われるのが夜という事もあり、王都へ夜間移動しなくていいように宿も取った。
 気持ち的にも時間的にも余裕を持って挑んだこのパーティー。
 ドレスはお気に入りのものだし、化粧も普段より念入りに行ったから、いつもより少しだけ自信の持てる自分で挑めた……はずなんだけど、開始と共に私の顔は緊張で強張る。
 周りに知り合いが誰もいない状況というのは、下手に肩肘を張らなくていい反面、心細いものがある。
 本当はこのお見合いパーティーの情報をくれた友達も一緒に来てくれると心強かったんだけど、当然既婚者にそんな事を頼めるわけもなく、私は一人でその場に佇んでいた。
 周囲を見回せば、男性も女性も大勢いる。
 皆、グラス片手に笑みを浮かべて、近くの人に話し掛けたり楽しそうに談笑したりしている。
 今回のパーティーはそれなりの家柄――私にとって丁度良いくらいの家柄の人が集まっているだけあって、以前参加した庶民メインのお見合いパーティーに比べて品が良い印象だ。
 今までの経験上、私は賑やかで元気な男性よりも、品が良くてちょっと落ち着いた感じの人の方が話しやすいようだから、そういった意味でも期待度は高いかもしれない。
 ドキドキする胸を押さえながら、改めて会場全体に視線を走らせ、話し掛ける相手を探す。
 あ、あの壁際に立って連れの人と話している人、優しそうな好青年って感じで素敵かも。
 向こうの人は……見た目は格好良いけど、女性に囲まれて意気揚々と話しているあのギラギラした感じはちょっと苦手だな。
 あそこで居心地悪そうに、一人でチビチビとお酒を飲んでる人、見た目は普通だけど、誠実そうで結婚相手には良いかも。……あのちょっと人付き合いに不器用そうな感じ、私と気が合いそうだし。
 パッと見ただけで、すぐに何人か気になる相手が見つかった。
 しかも、まだパーティーが始まったばかりという事もあり、一人でいる人も多く、話し掛けるには絶好のチャンスだ。
 そう。チャンスなんだ。
 でも……。
 心の中で「よし行こう!」と何度も呟いているんだけど、心とは裏腹に緊張している私の体はなかなか動いてくれない。
 そうこうしている間に、気になっていた男性達はどんどん別の女性に声を掛けたり掛けられたりしている。
 このままじゃいけない。
 このままじゃ、また収穫なし……下手したら、誰とも会話する事なくパーティーが終わってしまう。
「……こういう時は深呼吸」
 小さく呟いて、大きく息を吸って吐く。
 少し体の力が抜けたところで、最近使う事が極端に少なくなっていた笑顔を作る為の筋肉を意識して動かす。
 鏡はないけれど、きっとぎこちなくても笑えてはいるだろう。
「大丈夫。私を知ってる人は誰もいないはず。素の自分を出せるように頑張ろう」
 まるで呪文のように小声で呟き、俯きがちになっていた顔を上げて笑顔で正面を向いて……固まった。
 ……噓でしょ?
 ここにいるようなレベルじゃない人がいる。
 思わず自分の目がおかしくなったか、ただの見間違いだろうと思って、瞬きを何度か繰り返してからその人のいた場所をもう一度見る。
 ……やっぱりいる。
 一目で上流階級とわかる優雅な身のこなしと、仕立ての良いスーツ。
 手入れが行き届いた艶やかな黒髪。
 別に睨まれているわけでもないのに、見られただけで思わず緊張してしまいそうな、威圧感のある切れ長の目。
 一度見たら、忘れる事の出来ない印象的な美男子。
 今は穏やかな笑みを浮かべているけれど、あの人が冷ややかな目で他者を見下ろす姿や、眉間に皺を寄せ不機嫌そうにしている様子を、私は以前、遠目に見掛けた事がある。
「……な、な、な、何で、リヤルテ・サーディック様がここに!?」
 動揺のあまり思わずそう口にしてしまってから、慌てて口を押さえてクルリッと体の向きを変えた。
 そんなに大きな声で言ったわけではないから聞こえてはいないだろうけど、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
 
 ――リヤルテ・サーディック様。
 我がグリーンディア王国の誇る麗しの王太子――イージオ・グリーンディア殿下の側近にして執務補佐官。
 常に冷静沈着で仕事の上では妥協を一切しない、とても優秀であり厳しい人物として有名だ。
 容姿端麗、頭脳明晰、その上身分も申し分なしの独身男性とあって、現在の社交界では女性達にとても人気がある。当然結婚相手なんて引く手あまた。
 つまり、こんなお見合いパーティーに来る必要性が全くないはずの人。
 というか、こんな所で、一般人(下級貴族含む)に交ざって、しれっと楽しそうに会話をしている事自体おかしいと思う。
 感覚的に言えば、道端の小石の中にダイヤモンドが交ざっているのを発見してしまったような気分。
「こ、これは、もう今日のパーティーは諦めて気付かれない内に逃げるべき?」
 一瞬悩んですぐさま首を振って否定する。
 相手はあのリヤルテ・サーディック。
 同じお城で働いているとはいえ、ただの一般職員と王太子殿下の側近では身分が違い過ぎて見掛ける事すらほぼない雲の上の人。
 そんな人が『氷の女』なんて不名誉なあだ名がちょっと広まっている程度の一般職員を記憶に留めているはずがないだろう。
 最悪、噂を耳にした事があったとしても、私の顔までは知らないはずだ。
 ならば、ここは素知らぬ顔をして距離を取りつつ、パーティーを楽しめば……
 ……と、思っていた時間が私にもありました。
 今、何故か彼は私の隣に陣取って、爽やかに見えるのに何処かそこはかとなく黒いものを滲ませた笑みを浮かべ、男女数人と会話の輪に参加している。
 何故、こんな事になっているのか。
 うん、私にもよくわからない。
 思えばパーティー開始から三十分くらい経った頃の事だったろうか?
 リヤルテ・サーディック様からこっそり距離を取った所で、ひとまず少しでも男性と交流をしようと思って、グラス片手に周囲を見回していた私は、たまたま近くにいた落ち着いた雰囲気の同年代の男性に声を掛けられ、会話を楽しんでいた。
 見た目は少しぽっちゃりめで目が細く、格好いいかと尋ねられれば違うと思うけれど、のんびりした雰囲気が話しやすそうだった為、私も頑張って笑顔で応じていた。
 お互い少し緊張気味で始まった会話だったけれど、本の趣味が一緒だったという事がきっかけで、意外にも盛り上がっていった。
 好みのタイプではなかったけれど、和やかに会話を楽しめている自分に、「順調な滑り出しだ」「今日は上手くいくかもしれない」と淡い期待を抱いた。
 そんな時の事だった。
 距離を取っていたはずなのに、何故か気が付けば視界にリヤルテ様がいた。
 慌てて視線を逸らそうとしたのに、先に気付かれ「おや?」とでもいうような感じで、片眉を上げて凝視されてしまう。
 それでも、まだ何とかなると思って、気付いていないふりをして視線を外し、回れ右をしようとした。
 それなのに……一切迷いのない足取りで私に近付いて来たリヤルテ様にポンッと肩を叩かれ、
「奇遇ですね、アスリア嬢。初対面の方ばかりで緊張していたので、知り合いに会えて嬉しいですよ」
 なんて満面の笑みで言われてしまった。
 私と彼は職場である王城ですれ違った事こそあれ、会話をした事はない。言ってみれば初対面とほぼ変わりない。
 声を大にして「私達も初対面です!」と言いたかったけれど、下級貴族の私が上級貴族の彼にそんな事を言えるわけがない。
 仕事上、必要な場面であれば、自分より身分の高い相手に物申す事はあるけれど、だからと言って身分の上下を気にしていないわけではないのだ。
 それ以前の問題として……彼の満面の笑みによる威圧が怖くて言えなかった。
 結果、「リ、リヤルテ様もいらっしゃっていたんですね」なんていう無難な言葉をぎこちなく返すはめになった。
「おや、お知り合いですか?」
 私と話していた男性が、一瞬驚いた顔をした後、朗らかな笑みを浮かべてリヤルテ様を迎える。
 異性との出会いを求める事を主な目的としているパーティーで、いくら知り合いとはいえ、他の異性と話している時に話し掛けてくるのは珍しい為、少し対応に迷っているようだ。
「あの、その……」
「ええ、彼女とは職場が一緒でしてね。たまたま見掛けたので声を掛けたんです」
 何と答えれば良いものかと戸惑う私の代わりに、ニコニコと笑みを浮かべたままリヤルテ様が答える。
 ……職場が一緒って。果たして同じ城勤めでも、上層部にいる彼とその他大勢に過ぎない末端職員の私を『一緒』と称して良いのだろうか?
 普段行動範囲としている区画も全く違い、顔を見かける事すら滅多にないというのに。
 私と会話をした事で緊張が解れたせいか、はたまた相手が男性という事で安心したせいか。私との話し始めの時は緊張していたはずの男性は、リヤルテ様に対しては特に緊張した様子もなくスムーズに会話を楽しんでいる。
 突然現れた職場が一緒の(?)雲の上の存在に対して、私が呆然とし距離感をはかりかねている間に、会話を弾ませている男性二人。
 初めは、突然の状況に戸惑って、どのように会話に入っていけば良いのか悩んでいたけれど、私抜きでどんどん進んでいく会話に、「私いなくても良いんじゃないかしら?」と感じ始め、一歩引いた所で傍観する事にした。
 折角落ち着いて話せる相手ではあったけれど、お見合いパーティーに来たからには別の相手とも話さないとね。
 ……出来ればリヤルテ様とも離れたいし。
 うん、適度な所でこの場を離れて、リヤルテ様の目に入らない位置で婚活を頑張ろう。
 そんな思いで、不躾にならない程度に会場内に視線を走らせる。
 その瞬間に気付いた。
 何人かの女性が、極上の男オーラを漂わせるリヤルテ様に対してチラチラと……獲物を狙う肉食獣のような視線を向けている事に。
 しかも、中には一緒にいる私に対してまで肉食獣の……威嚇する時のような視線を向けている。
 ……女性の嫉妬、怖い。
「……」
 思わず、リヤルテ様から無言で一歩離れようとして……腰に手が回った。
「っ!?」
 視線は元々私と話していた男性に向けたまま、物凄く自然な流れで私を引き寄せる。
 けれど、そんな事をされるほど深い関わりのないはずの私は大混乱だ。
 普段から感情を大きく乱さないよう心掛けている事もあり、表面的にはそんなに狼狽しているようには見えないかもしれないけれど、瞬きはいつもより多くなってしまっているし、鼓動も速い。女性達の突き刺さる視線を受けて、背中には汗も流れている。
「おや? アスリア嬢、どうされましたか?」
 ハクハクと小さく口を開いたり閉じたりする私に視線を落とし、リヤルテ様が甘い笑みを向けてくる。
 そして、耳元に唇を寄せ小声で……。
「まさかあの『氷の女』が、こんなに狼狽して震える面白……可愛い姿を見せて下さるなんて思いませんでしたよ」
「なっ!?」
 彼の言葉に、私の体がビクリッと大きく震える。
 私の耳元から顔を離した彼は、片方の口の端を上げて、私にだけ見えるようにニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
 ……この人、確信犯だ!!
 彼のその笑みを見た瞬間、私は直感的に理解した。
 きっと、彼は私の噂を全て知っている上に、私が『氷の女』と呼ばれるのを嫌がっている事も、ここではそれをバラされたくない事もわかっていて近付いてきたのだ。
 彼が何故そこまで私の気持ちをわかっていたのかは知らない。
 でも、最も避けていた職場の人――彼にこの場で出会ってしまった事に戸惑う私を見て、楽しんでいるのは確かだ。
 ドS。
 不意に頭の中にそんな言葉が浮かんだ。
 まさか、あのリヤルテ・サーディックがこんな人だったなんて……。
「あ、あの! 私、飲み物を取りに行きたいので、失礼しますわ」
 彼の目的を察した瞬間、私は迷わず逃げる事を選択した。
 そんな私に対して、彼はクスッと小さく笑って、私の腰を捕らえる手に更に力を込めた。
「そういえば、グラスが空ですね。気が利かなくてすみません。さぁ、取りに参りましょう」
 逃げ出したい私の意図を的確に察した彼は、あろう事か話していた男性に向けて「失礼」と軽く挨拶を交わし、私についてきたのだ。
「リヤルテ様、私の事はお気になさらずに。折角の機会ですし、素敵な出会いをお探し下さい」
「いえいえ、我が城が誇る『氷の女』に変な虫がつかないようにする役目の方が重要ですから」
「え、いや、あの……ここはお見合いパーティーなので……」
 むしろ、虫がついてくれない方が困る場面だと訴えようとした私に、彼は「何か問題でも?」と言いたげな笑みを向けてきた。
 ……正直、女性達の嫉妬の視線よりもその笑みの方が怖かった。
 今日は『氷の女』の仮面は被らないと決めてきていたせいもあり、素の自分が表に出やすくなっていた私は、思わず目尻に涙を浮かべる。
 もう、本当に心の底から逃げたい。
 今日という日を何日も前から楽しみにしていたのに。
 運命の人と出会えるのを期待していたのに。
 それが、こんな人に捕まってしまうなんて……。
「フフ……。やっぱり良いですね、その涙。気に入りました」
「え?」
 今、何か凄く変な事を言われた気がする。
 気の……せいだよね?
 俯きがちになっていた顔を上げて、隣に立つリヤルテ様を見上げると……今までの笑みが作り笑いだったという事がよくわかるほど、とても楽しげな笑みを浮かべていた。
「さて、閉会までにはまだ時間がありますね。お互い、楽しみましょう」
「……はい」
 全く楽しめる気がしない中、私には頷く以外の選択肢はなかった。

◇◇◇◇◇

「アスリア嬢、聞いておられますかな?」
「えぇ、もちろんです」
「それならば、私が言いたい事はわかりますね」
「仰りたい事はわかりますが、この書類の記載を間違えたのはそちらです。直すのもそちらの仕事。修正期間を先延ばしするのは結構ですが、直すのが遅れれば遅れただけ、申請が通るのが先になり、お困りになるのもそちらですが……よろしいですか?」
「あぁ、やっぱりわかっていないではないですか。そんなものそちらで直しておいて下さいって言ってるんですよ。本当に融通の利かない女性ですね。そんなだから、嫁き遅れるんですよ。大体貴女ときたら……」
「……それは、仕事に関係ある事でしょうか? 関係のない事でしたら、この場で論じても時間の無駄だと思いますが? それよりも、その時間を有効活用してこの書類を直して頂いた方が、お互い気持ち良く仕事が出来ると思いますけれど」
「ですから、私は貴女と違って書類だけやっていれば良いわけじゃないんですよ。出すのだって面倒なのに書き直せなんて……。はぁぁぁ。貴女は本当に女性としての気遣いが足りませんね。さすが『氷の女』。冷たさだけは一級品ですな!」
「ですから……」
 いつまでこのくだらない嫌味ったらしい会話は続くんだろう?
 目の前の男――第五騎士団の副団長は女性を下に見て、無神経な発言や嫌味ったらしい発言をする事で有名な人物ではあるけれど、それにしても今日に限ってしつこさが半端ない。
 かれこれ、実のない話を三十分以上続けていると思う。
 本当はもうやるべき事は伝えたし、無視して帰りたいんだけど……。
 この男、無駄に地位が高いから、正論で言い返す事は出来ても無視までは出来ない。
 あぁ、本当に面倒くさい。
 早くしないと、お昼休みになってしまうというのに。
 そうなったら……うん、考えたくない。
「わかりました」
「おぉ、やっとわかってくれましたかな」
 いい加減、私の苛立ちも限界に達しつつある。
 キレそうだけど、キレるわけにはいかないから、いつも以上に表情も声も硬く冷たいものになる。
「では、この申請書は貴方が破棄したという事で処理させて頂きます」
「なっ! どういう事ですかな⁉」
「言葉通りの意味です。修正しないと申請を通すわけにはいかない。けれど、貴方は直す気がない。出せる状態にない書類をそのままにしておくというのですから、これはもう出す気がないのだという事に他なりません」
「お前が直して出しておけと言っているんだ!!」
「それは私の仕事ではありませんし、そうすること自体が問題だと先程から申し上げています」
「そんなのいくらでも誤魔化せるだろう⁉」
「それが悪い事と知りながら片棒を担ぐ気はございません。それとも、貴方様にそう命じられたので私が書きましたと但し書きを書いて出してみましょうか? 確実に問題になり、書類は却下された上に、上からの注意が来ると思いますけれど……」
「貴様!!」
 ダンッ! と机を拳で強く殴りつけて男が立ち上がる。
 そのあまりの剣幕に身を竦めそうになったけれど、根性で耐えてすました表情のまま相手を見据える。
 ここで下手に怯えてみせれば相手はつけ込んでくるだろう。
 毅然とした態度こそが……『氷の女』の仮面こそが私の身を守る最強の武器になるのだ。
「それでは、この書類は確かにご返却いたしました。この後、上司にもその旨は伝えておきます」
 手に持っていた書類を男の机に置く。
「それでは、私はこれで失礼します」
 そのまま踵を返して退室しようとした、その時。
 ガッ!
「っ!!」
 骨が軋むほど強い力で手首を握り締められる。
 正直、物凄く痛い。
 けれど、痛がると目の前の男を喜ばせるだけのような気がして、何とか僅かに眉間に皺を寄せる程度で悲鳴を呑み込む。
「まだ何か?」
「君は女性のくせに少々生意気過ぎる」
「王城での仕事は特別な仕事以外、男女平等に割り振られています。女だからという理由だけで、仕事のやり方や態度を変えなければならないのなら、仕事など出来ません」
 もちろん、男性の方が良い仕事や、逆に女性の方が良い仕事というものは存在する。
 けれど、それはあくまで配慮や協力の範囲内で割り振られるべきもので、強要されるべき事ではない。
 大体、女だから謙虚な姿勢で仕事しろなんて事を受け入れたら、書類の取り立てや注意なんて仕事は出来ない。
 無駄な諍いは好ましくないのはわかっているけれど、駄目な事を駄目と言い切る勇気も大切だと思う。
「いっそ、私が躾け直してやろうか?」
 目の前の男が獰猛な視線で私を睨みつけ、舌なめずりをする。
 背筋にゾワッと悪寒が走る。
「結構です。それより、この後の予定があるので手を離して下さい」
「予定と言っても昼休憩だろう?」
 チラリと時計を見て男が言う。
「その昼休みに予定が入っているのです」
「……何だ、男か? ハハハッ! そんなはずはないだろう? 強がるな。お前のような女に声を掛ける物好きな男がいるはずないだろう」
 別に男性との約束とは言っていないのに、勝手に想像して私を馬鹿にする目の前の男に内心嘆息する。
 いつもだったら、「余計なお世話!」と心の中で文句を言う所なんだけど……残念ながらいたんですよ。物好きな男が。
 この後おそらく財務部に訪れるだろう相手を思い浮かべる。
 リヤルテ様はこの男よりも明らかに厄介な相手だ。
 地位だって格段に上だし、この男のように力でごり押ししてくるのではなく、気付かない内に罠を張り巡らせてこちらが逃げられないように追い込むタイプだ。
 力押しならどういう風に出てくるか比較的読みやすくて逃げようもあるが、気付かない内に張り巡らされた罠は、気付いていないのだから対応のしようがない。
「そのような事は貴方には関係のない事のはずです。それよりも、早く手を離して下さい」
「あぁ、でも『氷の女』の顔がひび割れる所は見てみたい気がするがな」
 ……会話になってない。
 そろそろ本当に時間が迫っているし、手もかなり痛むから離して欲しい。
「それはお見せ出来なくて残念です。それでは、私はこの辺で失礼します」
 男に握られている手を無駄と知りつつ、腕の力のみで引っ張る。
「まぁ、そう慌てるな」
「ですから、予定があるので急いでいるのです」
「まだ、仕事中だろう?」
「ここでの用件はもう済みました」
「いや、まだ済んでいないだろう?」
「済みました。それより、そろそろ本当に手を離して下さい。……叫びますよ?」
「何だと?」
 私の『叫ぶ』という宣言に、男の眉間に皺が寄る。
 いくらここが副団長の執務室で一応個室になっているとはいえ、大声を出せば外に聞こえるだろう。
 そして、ここは騎士団だ。
 女性の悲鳴が聞こえれば、すぐに騎士達が駆けつけてくれるに違いない。
 いや、むしろ駆けつけない騎士ならば騎士なんか辞めてしまえと思う。
 多少、上下関係の問題で副団長の執務室に押し入る事を躊躇う者はいるかもしれないけれど、ここには第五騎士団以外の騎士団の人も大勢いるし、団長クラスの人間も沢山いる。
 中にはこの男のように腐った人間もいるけれど、全員ではないから誰かしらは必ず来てくれるはずだ。
 分が悪いのは明らかに私ではなく向こう。
「……っ!」
 ギッと睨んできた男を睨み返していると、男が更に私の手を握る手に力を入れてきた。
 だから、本当に痛いんだって! 
 心の中では文句を言いつつ、視線を逸らす事もせずに男を見据える。
 どちらがマウントを取るかの勝負。
 負ければもっと相手の態度が増長する事はわかっているから、負けられない。
 負けられないんだけれど……そろそろ、痛みによる生理的な涙がこみ上げてきそう。
 ここはもう、本当に叫ぶしかないかと思った、その時だった。
 ココココンッ!
「失礼していますよ」
 高速のノックと共にバンッと勢い良く扉が開き、その部屋の主である副団長の許可も得ずにある人物が部屋に突入してきた。
 うん、これはまさに『突入』。
 少なくとも、人の部屋を訪ねる態度ではない。
 大体、「失礼『していますよ』」って何ですか?
「失礼します」って宣言する前に、既に失礼しちゃっているからですか⁉ 
 思わずギョッとして、突入してきた人物――リヤルテ様を凝視してしまう。
 そんな私に視線を向けた彼は、そのまま視線を下ろしていき、副団長に摑まれたままになっている私の手首を見てスッと目を細めた。
「おやおやおや。これはとんでもない場面に遭遇してしまいましたね」
 やや演技がかった口調でそう告げたリヤルテ様は、入ってきた時とは正反対のゆったりとした足取りで私の傍へと歩いてくる。
 そんな彼から目を離す事も出来ず固まっている副団長。
 既に完璧にマウントを取られているようだ。
「リ、リヤルテ殿、な、何故このような所に?」

◇◇◇◇◇

「毎日、有難うございます」
「いえ、私もこうして貴女の涙目を見られる楽しい時間を得られているので」
「……お礼を言って損をした気分になりました」
 私の住む家のすぐ近くまで馬車で送ってもらい、別れの挨拶をする。ここ最近の私の日課だ。
 そして……。
「リヤルテ様、こんばんは! 今日も会えて嬉しいです!! ……あ、お姉ちゃんもお帰り」
 少し離れた所に停めているにもかかわらず、馬車が停まる音を聞きつけてメオローラが襲撃してくるのも恒例になっていた。
「……ただいま」
 姉である私の方ではなく、その恋人であるリヤルテ様の方に抱き付きに行くメオローラに、思わず頰が引き攣る。
「こんばんは、メオローラ嬢。今日も姉上をお借りしましたよ」
「そんなメオローラ嬢なんて他人行儀ですわ。ローラって呼んで下さい! 親しい人は皆そう呼んでいるんですよ」
「……そうですか。ではやはり私はメオローラ嬢とお呼びすべきですね」
 顔に笑みを貼り付けたまま、メオローラの抱き付き攻撃を華麗に躱したリヤルテ様が、スッと私の後ろに移動して距離を取る。
 親しい人はローラと呼ぶと言われ、敢えてメオローラ嬢と呼んでいる辺り、リヤルテ様の意思表示はとてもわかりやすい。
 わかりやすい……はずなんだけど……。
「もう! リヤルテ様ったら照れ屋さんなんですね」
 ……妹よ、この吹き荒ぶ幻の吹雪が貴女には見えていないのですか?
 幻のはずなのに、私はこの吹雪に凍結させられそうですよ。
 改めて、メオローラのメンタルの強さに感心しつつも呆れる。
「それでは、私はこれで。……明日は昼食を一緒に食べられそうです。いつもの場所で待ち合わせましょう」
「わかりました」
「ついでに、私の分のお弁当も作ってくれると嬉しいのですが……」
「大したものは作れませんけど……」
「アスリア嬢の作って下さるものなら何でもいいですよ」
 メオローラに向けるものとは完璧に異なる甘い笑みに、ついつい頰が赤くなってしまう。
「あ、私も行っても良いですか?」
「王城の執務棟は関係者以外、基本的に立ち入りをお断りしています」
「なら、外で一緒に」
「少ない休み時間を移動で潰す意義を感じません」
 明らかにリヤルテ様が意図して作った甘い雰囲気に水を差すメオローラ。
 そして、無理矢理にでも絡んでこようとする妹を、また極寒の笑みでバッサリ切るリヤルテ様。
 ……もしかしたら、ある意味この二人、相性が良いのかもしれない。
「……アスリア嬢?」
「何でもございません」
 まるで私の思考を読んだかのようなタイミングで名前を呼ばれ、反射的にそう答えてしまった。
「……お姉ちゃんばっかりズルい」
 恨みがましい視線で私を睨み付けるメオローラに、ちょっと背中に冷たいものが走る。
 メオローラは昔から自分が一番じゃないと気に入らない子だった。
 その相手が誰であれ……私の恋人であるリヤルテ様であれ、自分より私が優先される状況が気に入らないのだろう。
 いや、もしかしたら、俗物的な思考の持ち主であるメオローラは、リヤルテ様とサイールを比べ、自分の婚約者より高い地位にいる相手が私の恋人である事自体、気に入らないのかもしれない。
 だから、躍起になって私からリヤルテ様を奪おうと……。
 リヤルテ様のメオローラに対する露骨な態度を見ていると嫉妬する気にはならない。
 嫉妬以前に、彼が全くメオローラの事を相手にしていないから。
 でも、それでもこうやってアプローチをしてきたり、抱き付く等の身体的接触を試みている様子を見るといい気分はしない。
 でも、それと同時にメオローラに対して言いようのない恐怖に近い感覚も覚える。
 まるで全てが自分の思う通りに動いて当たり前とでも言うような態度に、姉である私の恋人さえ力ずくで奪う事を躊躇わない姿勢。
 そして、必要であれば私にさえ攻撃を加えてきそうなあの強い瞳。
 欲しいものは決して諦めないメオローラの性格を知っているからこそ、何をしてくるかがわからなくて不安だった。
「別にアスリア嬢はズルくありませんよ。彼女が持っているのはあくまで私が彼女に差し上げた、私の恋人という特権なのですから」
 妹の攻撃の矛先が私に向いたのを察してか、リヤルテ様が私を守るように背後から腕を回してきて、正面にいるメオローラに挑発的な笑みを浮かべる。
「え~、私もその特権欲しいです」
「でしたら、ぜひ婚約者のサイール殿にでも頼んだらどうですか? 私のはもう売却済みですからね」
「なら、それを私がもらっちゃうとか……」
「防衛魔法付きなので、奪おうとすれば漏れなく私からの攻撃が向けられます」
「……」
 メオローラの発言に不穏なものが混ざると同時に、リヤルテ様の視線に最早殺気と呼んでも良いほどの冷たく鋭いものが混ざる。
 暫く無言で見つめ合う……睨み合うの方が正しいだろうか?
 そんな状態が続いた後、先に折れたのはメオローラの方だった。
 まぁ、当然だろう。
 彼女が欲しいのはリヤルテ様の心であって、対立した所で何の意味もない。
「う~ん、そんな素敵な魔法が付いているなら余計に欲しいですけど……ちょっと気持ちが急き過ぎていたみたいですね~。まずは私の魅力を知ってもらってからじゃないと」
 ニッコリと花が咲いたような可愛らしい笑みを浮かべて、上目遣いにリヤルテ様を見るメオローラ。
 その性格の破天荒さを差し引いても、我が妹ながら文句なしに可愛い。
 そして、妹もそれをよくわかっているから、自分の見せ方をよく知っている。
 普通だったら、私のような表情に乏しく冷たい雰囲気の女よりも、妹の方を選ぶだろう。
 サイールという婚約者がいたとしても、リヤルテ様ほどの地位がある方ならばその力を使って上手く事態を収められるだろうし、大きな障害にはならないはずだ。
 それなのに、リヤルテ様は迷うことなく私を選んでくれる。
 本当は少しだけそこに疑問を感じているけれど、彼の思いが揺らぐかもしれないという不安は一切湧いてこなかった。
 普段は何を考えているのかよくわからないし、わざと私を怖がらせたり不安がらせたりするくせに、こういう時には一切不安を与えないのが彼の不思議な所だ。
「それを見せる相手が違うでしょう。さて、私はもう帰ります。それではアスリア嬢、また明日」
「また明日」
「また明日も来て下さいね! 私、待ってますからぁ」
 ここで敢えてメオローラに「また明日」の言葉を向けないのは、きっとリヤルテ様の方はもう会いたくないという事だろう。
 メオローラの執拗なアピールに辟易している証拠だ。
 ……だったら、私を家まで送らなければ良いのに。
 そんな風にも考えるけれど、彼が私の身を案じてくれている事も一緒に帰る時間を楽しんでくれている事も、肌で感じているから強くは言えない。
「あ~あ、行っちゃった」
「さぁ、私達も中に入りましょう」
 リヤルテ様の馬車が走り出したのを見送り、私達も室内へと戻っていった。

***

 ……さて、どうしたものか。
 先にシャワーを浴びて、寝る前のティータイムを一人で楽しみつつ、妹がシャワーを終えて出てくるのを待つ。
 もう既に何回か言ってはいるのだけれど、やはりここはもう一度メオローラにリヤルテ様を諦めるように話すしかないだろう。
 リヤルテ様は、表面的には適当にあしらってくれているけれど、多分既に結構イライラしていると思う。
 一緒にいる事が増えて、私は気付いたのだ。
 いつも人を攻撃したり、言いたい事を言って自由に振る舞っているように見えるリヤルテ様だけれど、実は意外とストレスを溜めている事に。
 普段から当たり前のように人に対して冷たく接する人だから、それが苛立ちから来るものか、性格から来るものか、はたまた性癖から来るものかの判断が難しいのだけれど……メオローラに対するそれは、ほぼ確実に『苛立ち』だと思う。
 けれど、それを直接メオローラにぶつけず、適当に受け流してくれているのは、きっと彼女が私の家族だからだろう。
「リヤルテ様は私に対して特にどうこうするように言ってはこないけれど、このままってわけにはいかないよね」
 そこまで考えて深い溜息が零れる。
 私とメオローラは結構長い事姉妹をやっている。
 だから、妹に対して注意したり、窘めたりした事は何度も何度も何度もあるんだけれど……それを聞き入れてくれる事は滅多にない。
 聞いてくれる可能性が低いのに、やり合わないといけないという現実が私の気分を重くしていた。
「お姉ちゃん、シャワー有難う」
 髪を拭いながらシャワールームから出てきた妹に、視線を向ける。
「ん? どうしたの、そんな真剣な顔しちゃって」
 私のもの言いたげな視線に気付いたメオローラが、私の正面の席に腰掛けながら首を傾げる。
「……ねぇ、ローラ。もういい加減にリヤルテ様にちょっかいを出すのを止めてもらえない?」
 どんな風に伝えるのが良いのかと色々考えていたけれど、結局ストレートに思っている事を伝える事にした。
 そんな私の言葉に、メオローラは一瞬、驚いたように目を見開いた後、不機嫌そうに眉を顰めた。
「何でお姉ちゃんにそんな事を言われないといけないの?」
「彼は私のこ、恋人なのよ? 他の誰よりも私にはそう言う権利があると思うのだけど」
 メオローラのあんまりな言い草に、一瞬苛立ちが加速しそうになった。
 けれど、それをいつものように何とかやり過ごし、なるべく落ち着いた口調で話をするよう心掛ける。
「今は恋人でもこの先はわからないじゃない」
「そうかもしれないけれど、だからと言って今現在恋人がいる相手に手を出して良い理由にはならないでしょう?」
「私が彼の恋人になれば何ら問題ないんだから別に良いでしょう?」
「貴女にはもうサイールっていう婚約者がいるでしょう? 婚約者がいる身で他の男性にアプローチするなんて許されないわ」
「許されないって誰がそれを決めているの?」
「婚約とはそういうものでしょ? 特に政略結婚は契約のようなものなんだから、それを簡単に破棄する事は出来ないし、婚約した相手には誠実であるべきじゃない?」
「サイールとはお姉ちゃんが結婚すれば良いじゃない。彼の事はあげるから、リヤルテ様を頂戴よ」
「リヤルテ様もサイールも物ではないわ。それを頂戴、あげるでやり取りするなんておかしい!」
 あまりの話の通じなさに、感情を抑える事に慣れている私も遂に我慢の限界が来て、少しだけ声を荒らげてしまう。
「そうよ。リヤルテ様もサイールも物じゃないんだから、気持ちだって変わるものでしょう? なら、私がより良い男性にアプローチしていく事だって有りでしょう?」
「それはあまりに我儘な理論じゃない? 貴女に気持ちがあるように、貴女の相手をするリヤルテ様やサイールにも気持ちはあるのよ? それは容易く傷つけて良いものではないわ」
「私が我儘だって言うなら、皆も我儘に振る舞えば良いじゃない。そうすれば、誰も損しない。文句があるなら言えば良いのよ」
 目尻を吊り上げてイライラした様子で話す妹は、やはり私の話を聞き入れる気は全くないようだ。
「……リヤルテ様が迷惑しているのがわからないの?」
「別に迷惑なんてしてないでしょう? 大体、お姉ちゃんよりも私の方が可愛いし、私とくっついた方が彼も幸せなはずだわ」
「……っ」
 フンと鼻を鳴らすように言い切るメオローラに、思わず言葉を詰まらせる。
 リヤルテ様があまりにも露骨にメオローラを避け、私を優先してくれるからこそずっと心の奥にしまっている事が出来た自分の劣等感が、引きずり出されたような気がした。
「お姉ちゃんは、結局自分に自信がないから、彼に近付こうとする私の方を排除したがってるのよ」
 私が反論しないのを良い事に、メオローラが更に言い募る。
「お姉ちゃんの方がちょっと先にリヤルテ様と出会ったからって、彼を独占しようとするなんて傲慢だわ!」
 メオローラは最後に私を強く睨み付けて、いつも一緒に寝ている私の寝室へと去って行った。
 私は、そんな彼女の背中を見送る事しか出来なかった。
「やっぱり、説得失敗か」
 メオローラの言っている事が滅茶苦茶なのは私もわかっているけれど、彼女の迫力に負けて何も言えなくなってしまった。
 ……それと、ほんの少しだけ、彼女に図星を指されたような気がしたのも敗因だと思う。
「はぁぁ、もう少し時間を掛けて説得するしかないか」
 妹が去って行った私の寝室。
 私が寝るのもそこなんだけど、今日はそっちに行く気にはなれなかった。
 仕方がないから部屋の隅に置いてある二人掛け用のソファーの上で、寒い時にいつも使っている少し大きめのひざ掛けを引っ張り出してきて丸まって寝る事にした。
「リヤルテ様には明日会ったら謝らないとなぁ」
 説得に失敗した事はもちろん、もう暫くメオローラが迷惑を掛けそうな事も含めて謝っておかないといけない。
「……早く、実家に帰ってくれないかな?」
 メオローラとサイールには申し訳ないけれど、心底そう願ってしまった。


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