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君にそばにいて欲しい_書影_小

君にそばにいて欲しい

井上美珠 / 著
駒城ミチヲ / イラスト
ISBNコード 978-4-908757-04-4
サイズ 文庫
本体価格 本体639円+税
発売日 2016/06/03

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内容紹介

上司命令です。朝まで僕と、恋人として過ごしなさい。
「先に身体を抱いて申し訳なく思ってる。でも付き合ってくれませんか?」目が覚めたら憧れの上司、青と裸でベッドにいた由良。きっかけは飲み会帰り、酔った由良が帰りたくないと言ったこと。イケメンで仕事のできる青は由良にとって手の届かない存在だった。「部下だから我慢していた」彼は気持ちを身体で教えると言い、優しい愛撫で由良を快楽に誘う。会社では厳しい上司、外では甘く名前を呼ぶ恋人。ミダラな囁きとベッドでの命令口調に、由良の身体は悦楽に震えて……。
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

市木由良

外資系の企業に勤めるOL。
上司である一色に憧れていた。

一色青

由良の上司で部長。
容姿も性格もよく、女性にかなり人気がある。

立ち読み

「帰ったら一人だし、今日のいやな事きっと思い出す、って言ってた。僕は、思い出させたくないし、帰したくないと、思った」
 一色は整った綺麗な目をしている。じっと見つめられると、まるで吸い込まれそうだ。こんなに見られるなんて思いもしない。
 それに、一色はもう二度も帰したくない、という言葉を由良に言った。たいして美人でもない由良に言うセリフじゃないと思う。
「だって、あんなに触られて、私……男の人って、酷い、って思って」
 何かの聞き間違いかも、と思いながら一色から目をそらして、髪の毛を耳にかける。さっき下ろしたのに、と思ってもう一度髪の毛を直した。
「……そうか。僕も男なんだけどな。こうやって傍にいるのは、いやかな?」
 苦笑しながら一色が由良の髪の毛を耳にかけた。それにびっくりして、瞬きをして見上げる。
 顔を上げると、また目が合って離せなくなる。
「そ、それは……わからない、っていうか……そんな事は、ないですけど」
 一色は何だか由良をまるで女性として見ているようだ。髪の毛を耳にかけてくれたそこを、由良は手で触れる。まるで耳が心臓になったかのように熱く脈打っている感じだ。
「君はね、市木さん。家に来るかと聞いたら、行くと言ったんだ。だから、タクシーの運転手相手に居たたまれない気持ちを抱えながらも、家に上げたんです」
 一色が由良を見つめている。近くにいたらこんなにも見惚れるのだと、いやというほど実感する。
 ペットボトルを持つその手さえ、指が長くて綺麗な爪をしていて。
 そんな一色が由良をじっと見ながら、口を開く。
「タクシーの中での事、あまり覚えてないんだな……帰さないと言ったのに。タクシーの運転手が何度も咳払いをしてた。降りる時、あまりイチャつかなくてよかったとか言われて」
 少し声を出して笑った一色は、由良に視線を戻す。
 瞬きをして、浅く息をする。大きく息ができないのは、胸が詰まっているせいだ。
 綺麗な彼の目で見られると、胸が詰まるばかりか、掴まれたようになってしまう。顔が火照って熱くて、心臓は鳴りっぱなしで。
 どうして一色は、由良をこんなにまるで、好きな人を見るような目で見るのだろう。絶対にありえないのに、一色が、こんな目で見るなんて。
 なのに、期待をしてしまっている由良がいる。
「ここで寝るのがいやなら、ベッドでもいいです」
 先ほどよりトーンが低い声だった。
 何となく、身体に重みがずしっとかかるような、そんな声。お腹の底から心臓になったような、そんな感じが由良の中をめぐる。
 返事ができない。瞬きをして彼を見上げると、綺麗な目に捉えられているようで目が、離せない。
 ここで寝るのがいやなら、と言われて、首を振る。
 何だかさっきから言葉が変だ。こんなのおかしい気がするのに、由良は思っている言葉と違う言葉を言った。
「迷惑じゃないですか?」
 まるでベッドで寝る、と言ったような言葉だ。それでどうするのか、由良も大人なのでわからないわけじゃない。でも、一色と、なんてまだ信じられない。
「いいえ」
 微笑む一色は、明らかに男の人だ。でも、由良が憧れてやまない男の人。
「今日の事、忘れたいです。いろんなところを触られて。男の人が本当にいやになりそうで」
「そうですか」
 微かに笑って答える一色は、一度目を伏せて、それからまた由良を見る。
 声はいつもより低いまま、でもその声を聞いていたい。一色は由良のペットボトルをやんわりと奪って、テーブルの上に置いた。
 視線が、由良の足先から上へと動いて、距離が縮まった。
 一色の、フレグランスの香りも近づいて、胸が痛いくらいに鳴る。
「どう、触られましたか?」
 言いながら、一色の大きな手が由良の膝に置かれ、その手がスカートの裾を少しずつ上げながら、内腿へと這わせられる。
 耳元で聞こえた声は、低いままにゆっくりした囁くような口調だった。一色の目を見ると、目が離せないようになってしまうのは、彼が由良をそういう目で見ているから。
 あまりにも男の人の目で、由良のスカートに触れ、たくし上げていく。
「……っ、部長」
 課長から触られた場所と同じところに、一色の手が触れている。
 なのに嫌悪感ではなく、何か熱くこみ上げるものを感じる。一体これは何だ、と思う。
 彼の顔が近づくと、ふわりと鼻孔をくすぐるいい匂いがした。先ほどから感じていたスパイシーな匂いが強くなった気がする。酒の効果でクラクラしていた由良は、さらにこの香りで心地よく酔いそうで。
 由良の腰を撫でる体温にも、心臓が高鳴ってしまう。
「細い腰だ。ここ、触られましたか?」
 そこは、何度も揉むように触られた。泣きそうな気持ちを思い出し、顔を歪ませながら頷く。
 撫でていた大きな手が由良の腰を引き寄せる。身体が一色に寄りかかってしまい、顔を上げるとすぐ近くに綺麗な顔があった。
 大きな手が頬を包んだのを感じ、綺麗な顔から目をそらす。そうすると、やんわりと顔を戻されて一色の目がこれ以上ないくらい間近にあった。彼の茶色の目が、瞬きをするのさえ見える。これ以上ないくらい、俳優でもこんなに整った顔はないと思うほどだ。
 目蓋が震える。目を閉じるタイミングがわからない。きっとキスをされる、と思う。互いの唇がこれ以上ないくらい近づいたところで、一色が微かに笑って由良の目蓋に優しく触れた。
「目を閉じて」
 言われるままに目を閉じる。そうすると唇を撫でる指を感じて、それから柔らかい感触が由良の唇に重なった。
 彼の唇が、由良の唇を啄ばむ。キスをするのは初めてで、それが一色だと思うと、心臓が壊れそうなくらいに高鳴る。
「……キス、初めてです」
 由良の言葉に笑った彼は、さらに唇を啄ばむように重ねた。水音を立てるそれに、慣れないながらもついて行く。
「初めてのキスは、どうかな?」
 唇を軽く重ねたまま言われ、目を開けると軽く唇を吸われた。
「……柔らかい、です」
 言ったあと、顔がカァッと熱くなってしまう。何を言っているんだ、と思いながら顔をうつむける。温かい手が由良の頬を包み、顔を上へ向けた。
「柔らかいだけ?」
 唇をゆっくりと重ねるのに合わせて目を閉じる。優しく唇を啄ばみ、軽く吸うようなキスから少しずつ深いものに変わって行く。
「……っ!」
 息ができなくて唇を開けて息を吸う。そうするとその唇が開いた隙間に、柔らかく湿ったものが唇の中に入って来る。舌なのだとわかったのは、しばらくしてから。
 こんなキス、怖くて慣れなくて、どうしたらいいかわからない。絡む舌に答えられない。
 唇が角度を変える時に、どうにか息を吸った。でも足りなくて、心臓も高鳴っているからか、由良の息はすぐに上がってしまう。
「ふ……っあ」
 息を吸う合間に信じられないほど甘い声が出た。怖いながらもキスが気持ち良くて、彼の舌にたどたどしく答える由良がいる。
 身体から力が抜けて、ソファーに崩れ落ちそうになると同時に、唇も離れる。手をついたのに、その手に力が入らなくてソファーに仰向けになってしまった。
 由良の息は上がっていて、一度息をのんだあと、唇を少しだけ舐めると、そこは濡れていた。一色とのキスでそうなったのだと思うと、身体の奥が変に脈打ってしまう。
 一色もまた、少し息が上がっているようだ。彼を見ると、いつもと違って色っぽい感じがする。髪の毛をかき上げる仕草まで。いつもはきっちりスーツを着た、ストイックでクールな人なのに、今日は熱さを感じる。
「帰りたいですか? ソファーがいやなら、ベッドで寝ますか?」
 前髪をかき分けられながら、そう言われた。
 由良の腰に触れる手は温かく、優しい。時々内腿を撫でるその手も、すごく優しくて温かい。
「帰りたくない、です」
「そうですか」
「……ベッドで寝ても、いいですか?」
「もちろん、僕もそうしたい」
 頬を撫でられながらキスをする。そうしているうちに、由良の身体が浮き上がった。抱き上げられるのは初めてで怖くなり、一色の肩にしがみついてしまう。
 帰りたくない、と言ってしまった。
 こんな事、絶対にないと思う。
 由良に、起きるなんてないありえない。
 心の中でそう言っているうちに、背中にベッドの感触。目を開けると、一色の顔が近くにあって、心臓が跳ね上がる。
 彼の手が、由良のブラウスのボタンを外して行く。すべてを外すと、前を開いて首筋に手を這わす。身体が自然と硬くなり、震える。
「何もしなくていい。そのまま寝てなさい」
 一色の身体が覆いかぶさる。その重みに、全身が心臓になったみたいだ。
「あ……っ」
 さらに身体を硬くすると、耳元でクスッと笑い声。
「何もしなくていいけど、できれば、力を抜いて。優しくするから」
 優しくするから、という声が響いて唇が開く。
 首筋に埋められた一色の顔。それが徐々に下がって行く。背中に手を回され、胸を覆うものが緩くなる。
 彼の温かい手が、胸を覆っていた下着を上へと押し上げて。
 顔を上げた彼と目が合う。
 大きく息を吸うと、その視線がゆっくりと下へとさがり。
 誰も触れた事がない、由良の胸が、優しく唇に飲み込まれて行った。

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