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守りの竜は転生花嫁に愛を乞う

鳴澤うた / 著
氷堂れん / イラスト
ISBNコード 978-4-908757-29-7
定価 1,320円(税込)
発売日 2016/09/27
ジャンル フェアリーキスピンク

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内容紹介

前世の記憶を失った私も今の私も、共に愛してくれますか?
《私はオージェ様の妻、フィリアの生まれ変わりなの?》生贄として神竜オージェの元に捧げられた王女ティリア。オージェはかつて愛しい妻を初代の王に殺され、人を憎んでいた。怜悧な美貌を持つ逞しい青年の姿で現れたオージェは、ティリアの背中にある痣を見て、彼女を亡き妻フィリアの生まれ変わりだと言う。「早くフィリアの記憶を取り戻せ」ティリアを亡き妻として抱くオージェ。その優しさは自分への愛なのか、それとも亡き妻への妄執なのか? 自分自身を愛して欲しいと願うティリアの心は千々に乱れる。「フィリアとして愛して良いのか、ティリアのまま愛して良いのか。可愛い、俺の女よ」ようやくふたりが想いを分かち合い激しい愛を交わす時、ティリアを取り戻そうとリマタリアでは戦いの準備を始めていた。

立ち読み

一体、何人目だったか覚えていない『贖罪の乙女』は、フィリアを殺した王の末裔の王女であり――フィリアの生まれ変わりだった。
 怒りと戸惑いと喜び――混濁した感情の中で、ティリアと接する。
 ティリアは人の女でありながら、俺を好いた。自ら俺に話しかけ、会話を求めてくる。そばにいたがる。王女としての役割としてでなく、純粋に俺を求めてくる。
 ――そんなことは俺にとって、どうでも良かった。
 フィリアは彼女の中。前世の閉じられた記憶の中にいる。
 ――思い出せ、俺を。
 ――思い出せ、竜であった頃を。
 フィリアと違う愛情の示し方で俺に近寄るな。
 思い出して欲しいだけだ。記憶を取り戻してフィリアとして、俺を見ろ。
 そのためなら、優しい言葉も、愛の囁きも、人と同じ情だってかけてやる。
 ――なのに
 いつの間にか、ティリアを目で追う自分がいる。
 名前を付けた精霊等と、王女という身分でありながら家事にいそしむ姿。
 ひどく不器用で、一つのことを上手く出来なくても、むくれながらもやり遂げる様子。
 精霊等とはしゃぐ姿。
 俺に対して積極的で『一緒にリマタリアに来ても、贖罪の乙女を止めるよう言って欲しい』とか、寝るように言っても『そばにいてはいけませんか』とくる。
 彼女には驚かされ、鬱陶しいと心で思いながら表面上では受け入れて――次第に好ましいものになっていった。
 これら全てが、フィリアと逆なのに。
 フィリアは物分かりの良い、素直で純真な竜だった。己の意見のない、俺の言葉に逆らわない竜だった。
 素直で純真なところは似ているが、自己を主張し、怯えながらも意見を言うところはティリアの性質なのだろうか?
 それに――ティリアを抱き締めていると、人の肌の柔らかさと温かさが心地好い。
 ティリアの髪は光を吸収して輝く雪のようで、紫水晶かと錯覚する瞳も良い。
 フィリアも恐らく人の姿をとれたのなら、ティリアみたいになるのだろう。

 ――ティリアみたいに?

 毎夜のしとね。
 ほとんど毎晩、彼女の柔くすべらかな身体を抱いた。まるで儀式のように。
 自分と交じわい、結びつきを深くして、彼女の中のフィリアを呼び、ティリアの思考に揺さぶりかけた。

 ティリアは知らない。自分がそうして抱いていることに。
 ティリアは知らない。そうすることに自分が躊躇いだしていることに。

 ティリアの家族が権力をかざして、彼女の奪還を目論んでいると知った。
 ティリアを帰すわけにいかない。フィリアの生まれ変わりの彼女を。
 また奪うのか。愛しい者を……!
 なぜティリアは「共に説得しに行こう」と言うのか?
 拒否したら「一人で説得しに行く」と言うのか?
 説得で分かり合えるなら、とうの昔に分かり合えているだろう!
 結局、ティリアは人の世界に戻りたいのか? 同じ種族の中にいたいのか?
「愛している」と語ってくるくせに、俺を孤独にするのか?

 ティリアでは駄目だ。
 やはり人なのだ。孤独など知らない人なのだ。

 ――フィリアに会いたい。
 遠い記憶にある妻の声、眼差し、温もり。
 ティリアの温もりも、眼差しも、声も、その全てが自分の心を穏やかにしてくれたなんて幻だ。
 現にティリアはフィリアの記憶を思い出す約束をしながら、果たそうとしなかった。
 人など己が一番可愛い。ティリアなどいらない……

 ――なのに、ティリアを殺せなかった。
 彼女の白く細い首を締め付ければ、一瞬で終わる。あとは俺が潜在意識の中のフィリアを引き出すだけだった。
 ――なぜ?
 フィリアを思い、気力を振り絞り、力を込めようとしても制御がかかっているように力が入らない。それでも、ティリアには苦しかったのか段々顔が青くなり、生気が消えていく。
 ――死ぬな
 そう思った刹那、頭が真っ白になった。
 ――死ぬな
 真逆の想い。
 これは過去にも経験した、思い出したくない悲しみ。
 ――死ぬな
 涙が溢れた。

 フィリアでなくてティリアだ。
 フィリアへの想いは長く、俺の一部といっても過言ではない。フィリアを忘れることは出来ない。
 呪縛のように妻の最後の言葉に拘り続けてそれが、俺が生きてきた意義となっている。
 ――なのに
 ティリアも愛してる。フィリアとしてでなくて――
 お前を絶望に落としている俺に、泣きながら微笑むな。
 なぜ、受け入れる。
 執着に身を委ねて生きて、迷いながらも執着のためにティリアを利用したのに。
 俺を「愛している」と目で訴えるな――


■ ■ ■


 唇が触れ合い、瞬く間に濃厚で熱い口付けに変わる。
 背に回された手の動きと同じように、口内でオージェの舌が乱れ動いていた。
 歯列をなぞり、舌を絡ませ、吸い、好きなだけティリアの口内を蹂躙すると唇から頰、耳朶、首筋へと痕を残していく。その口付けは、強くて熱くて激しい。ティリアは吸いつかれるたびに目が眩み、膝が笑う。
「ん、ん……ぁあ……」
 オージェは徐々にしゃがみながらティリアの胸元まで痕を付けていくと、盛り上がる胸の膨らみに触れる。二つの胸の谷間に顔を埋めた。オージェの熱を含んだ吐息をそこから感じて、ティリアは自分の劣情に従い、彼の頭を抱き締めた。
 エンパイア型のドレスの肩は呆気なく下ろされて、痛々しいほどの白い胸が曝けだされる。
「オージェ……様……」
 胸下で絞っていた紐も解かれて、ドレスは咲き乱れる花が受け止めた。
 オージェは膝立ちをして、立ち尽くすティリアのなだらかな腰の曲線を撫でては腹に唇を押し当てていく。彼の乾いた唇と濡れた舌が丁寧に肌を舐め上げてティリアを渇望に導いていく。彼の腰を探る手も、一心不乱に自分を快感へと連れて行こうとしているのが伝わり、その熱が心地好くて淫らな感情が湧き上がる。
 秘所を隠す肌着までくると、オージェがそれに食らいついて下ろす。そして無言でティリアの秘所を覆う繁みに指を差し入れた。
「あ……」
 上半身を口で責められて、ティリアのそこはもう十分に湿り、熱くなっていた。
 ゆっくりと指の抜き差しがされて――たかがそれだけなのに、ジンジンと沁みてくるような痺れに足が震える。ティリアは堪らずオージェの上頭部に手を当てた。
「あ、あ、あ……ん、駄目……! 倒れ……てしまっ……!」
 ガクガクと膝が揺れ、もう限界だった。
「ティリア」
「あっ……!」
 オージェがティリアの腰に抱き着き自分の上になるよう背中から倒れ、彼の腹の上に乗る形になっていた。
「――ん……!」
 目の前に下がる二つの艶やかな白い膨らみにオージェが貪りつき、その激しい刺激にティリアは顔をのけ反らせる。むしり取られるような錯覚に陥るほど、激しくて鮮烈な感覚にただ艶やかな声を放つ。
 足はオージェによって跨ぐ格好にさせられた。開かれた秘所に彼の指が埋め込まれては引き抜かれて、とろとろに甘やかされていた。
「あっ、あっ、……」
 蕩けたティリアの中は、もっと快感が欲しいと音を出してねだる。
「オージェ様……私、もう、」
 欲しい。オージェが。ティリアの身体は素直にオージェを欲しがりしらず腰がよがる。
 彼から口付けを受けるだけで、愉悦の芽が出て、指で触れられるだけで、蕾が膨らむ。こうして全てを曝けださせられて、開発された箇所を愛でられては堪らない。身体の奥底に生まれた花を早く開花させなくては、おかしくなりそうだ。
「欲しいか? 俺が?」
 ティリアの白い乳房から口を離し、オージェが欲に濡れた瞳で問う。
 散々嬲られ乳房の先は欲に形を膨らませて、赤く色付いていた。オージェは空いている片手で膨らんだ乳房の先を弄って、ティリアの悶える様子を楽しんでいた。ひくついて腰を揺らすと、侵入された指が媚肉に当たり、ますます快感を促す。
「ああ、……欲しい……です。オージェ様を、受け入れ……たいの……」
「良いんだな?」
 ――良いんだな?
 彼のその意図は何なのだろう?
「フィリアとして、愛して良いのか?」
「ティリアのままで、愛して良いのか?」
 どちらにでも取れるし、他の意味にも取れるように思える。
(どちらでも良い)
 自分はティリアでフィリアであった。どちらでも――オージェは愛してくれる。
 覚悟は出来ている。それで十分だ。
「はい……」
 そう返す。
 刹那、後頭部を摑まれ顔を引き寄せられた。情熱的な口付けを交わしながら、下から身体の内部を突き上げてくる塊を受け入れる。
「――ん」
 卑猥な水音を聞きながら、ティリアは甘い快感を味わう。
「……あ」
 オージェの口が離れた。口内の熱を奪われティリアは「いやいや」と首を振る。彼女の乱れる様に赤い瞳でジッと見入っていたオージェの口角が微かに上がり「フッ」と笑う。
「可愛い、俺の女よ……」
 それは僅かな言葉の変化だったが、ティリアには分かった。
『人の女』でなくただの『女』
 種族の拘りが消えた彼の言葉。そして独占欲を口から吐き出し、愛情を告白してくれた。
「オージェ様……」
 胸に快楽と違った甘い痺れが生まれ、切なさに身体まで震える。嬉しさに涙が溢れたティリアの唇に軽く口付けして、オージェはティリアの腰を摑み上半身を起こす。
「――あっ……!」
 下から突き上げてくる快感と、激しさにティリアの身体が上下に揺れる。
 一番深い場所を突かれるたびに、ティリアはわなないた。
「美しい。月の輝きを受けて銀の髪が、輝きながら肌に絡みついて……」
 汗ばんだ肌に、自分の銀の髪が纏わりつく。肌がうっすらと紅色に色付きだした頃――ティリアの悦楽が花開く。
 オージェも、その花開き、湿り気を帯び匂い立つ瞬間を、身体から流れる汗と共に見守る。
 月の下で二人は、お互いの気の済むまで愛し合った。


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