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不敵な恋の罪【電子版】

妃川 螢 / 著
タカツキノボル / イラスト
ページ数 159ページ
定価 943円(税込)
発売日 2016/10/28

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内容紹介

売れっ子モデル・RYUを担当している敏腕マネージャー・弓槻。元モデルという繊細で美麗な容姿に反してクールな性格が魅力的な彼に、会うたび絡んでくる男がいた。芸能プロダクションの2代目社長である鷹嶺—弓槻が手がける仕事にことごとく横槍を入れてきては、傲慢な笑みで弓槻を煽る嫌みな男だ。その鷹嶺に事務所の存続に関わるスキャンダルを突き付けられた弓槻は、逃れる術もないまま鷹嶺に体を拓かれ…! 素直になれない男たちの、じれったくすれ違う恋心の行方は。

人物紹介

弓槻巳則

芸能事務所勤務。モデルRYUのマネージャー。

鷹嶺 昊

芸能事務所VERTEXの社長。

立ち読み

 煌く夜景を映し出す大きなガラス窓に、全裸の自分と、その自分を後ろから抱き締める男の姿が映って、弓槻は嫌悪感に眉根を寄せる。それに気づいた男が、ガラス窓越しに弓槻の視線をとらえ、挑発するようにニヤリと笑った。
「楽しめよ。あんたのことだ、はじめてじゃないんだろう?」
 その言葉に、応える代わりに腕を振り払い拳を上げた。それを慣れた様子で躱すと、男は振り上げられた腕を掴んで、そのまま弓槻をベッドに引き倒してしまう。
「図星を刺されて、カッとしたのか? いつも冷静なあんたらしくもないな」
「勝手に決めつけるなっ!」
 一発くらい殴ってやれれば気も済むのだが、この状況ではそれさえも男を喜ばせるだけのように思えて、歯噛みするしかない。
 おとなしくなった弓槻の頬をひと撫でして、男もガウンを脱ぎ捨て、ゆっくりと覆いかぶさってくる。男の顔が、その意図を持って寄せられるのに気がついて、弓槻はふいっと顔を背けた。
「〝拷問〟するのに、キスなど必要ないだろう?」
 弓槻の切り返しに少し驚いた顔をして動きを止めた男は、思いもかけなかったという顔でしばしの思案を見せ、
「何が〝拷問〟かは、相手によるさ。だがまぁ、いい」
 痛めつけるばかりが拷問ではないと言いたいのだろう。やっぱり男のいいように返されて、弓槻はもう、コトが終わるまで口は開かないと心に決めた。
 首筋に落ちてきた男の唇の感触に、ビクリと肌が粟立つ。吐きそうなほどの嫌悪感さえ覚悟の上の弓槻だったが、不思議とそれほど嫌な感じはしなかった。
 鎖骨から胸を伝っていく男の愛撫に、ともすれば身体が弛緩しそうになって、慌てて気を引き締める。肌を伝う大きな手の感触もわざと痕跡を残すように啄む唇の濡れた感触も、マグロでいつづけるのが困難なほどに巧みだった。
 けれど、男を楽しませるわけにはいかない。触れられれば反応してしまうのが男の身体の浅ましいところだが、それ以上の反応など絶対に見せてやるつもりはない。
 そう決意を固めていた弓槻だったが、ふいに下腹部あたりに滴った冷たい感触にぎょっとして、ぎゅっと瞑っていた目を見開いた。
「な、に……っ!?」
 飛び起きて、直後ズクンッと下腹部に血流が集まっていくのを感じる。状況を把握しようとする弓槻の視線の先には、小瓶の中身を弓槻の局部に滴らせる鷹嶺の姿。
 それが薄い叢を伝って奥まった場所まで濡らしていく。今まで嗅いだことのない妙な匂いが鼻をついて、明らかに通常の生理現象ではない状況が弓槻の肉体を襲いはじめた。
「何を……した……?」
「言うことをきかないオンナをおとなしくさせるクスリさ。心配するな。合法的なやつだ。ただし、日本ではどうだか知らないがな」
 今度こそ本気で男を殴り倒そうとした弓槻を、衝撃が襲った。
「あっ、く…ぅ…っ」
 小瓶をシーツに放り出した鷹嶺の手が、弓槻の欲望を力任せに握り締めたからだ。
 息を詰めてしまうほどの痛みと、その奥から湧き上がってくる形容しがたい衝動。乱暴に扱かれて、逃れる間もなくあっという間に昇りつめてしまう。
「貴、様……っ、やめ……っ」
 強制的に与えられる快楽に身体が拓こうとするのを理性で必死に押しとどめ、どんどん力の抜けていく身体で、それでも男の腕から逃れようともがく。
「うっ、く…ぁ…っ」
 血が滲むほど唇を噛み締めて声をこらえ、眩暈のような感覚を振り払おうと頭を振った。しかしどうやらそれは逆効果だったらしい。余計にクラリとして、シーツに手をついてしまう。その間も男の手に扱かれて、欲望は浅ましく蜜を零し、解放の瞬間へと突き進んでいた。
「はな…せ、……っ」
 熱いものが突き上げてくる感覚。ブルッと腰を揺らして、鷹嶺の手に握られた弓槻の欲望が弾ける。それだけでは許されず、残滓まで搾り取るように扱かれて細い腰が淫らに揺れた。
 支えていた腕から力が抜けて、ズルズルとシーツに沈み込む。
 痙攣を繰り返す内腿の筋肉と切なげにシーツを蹴る爪先が、それだけではおさまらない熱が身体の奥に燻っていることを伝えていた。
「足りないだろう? どうしてほしい? 言えばその通りにしてやる」
 顎を取られ、強引に顔を上げさせられる。霞んだ視界に、自身の吐き出したものに汚れた指を舐める鷹嶺が映って、その光景にゾクリと背が粟立つ。あんなものを舐められるなんて、嫌悪しか感じない行為のはずなのに、自身のモノを舐められたかのような錯覚に襲われた。
「どうしてほしい?」
 同じ言葉で問いただされて、けれど弓槻は弱々しく首を横に振った。
 とんでもないことを口走ってしまいそうだ。
 クスリの効果なのだという言い訳など、この熱が冷めたときに自分自身が聞きたくもない。もっと警戒しなかった己の落ち度ではないか。
「黙れっ、ヤり…たい、なら、さっさ…と、しろ……っ」
 やけくそになって吐き棄てる。
「強情だな。けどそれも、いつまでもつかな」
 言うなり弓槻の膝に手をかけると、強引に両脚を割り開き、その間に身体を滑り込ませてくる。肩を押されてシーツに背を預けると、膝裏を支えて片脚を折り曲げられた。
「……くっ」
 怪しいクスリにしとどに濡れた狭間に指が這わされ、奥の入口を撫でられる。数度擦られただけでヒクヒクと口を開きはじめたその場所に、クスリと弓槻の放った蜜とに濡れた男の指先が入り込んできた。慣らそうとしているわけではなく、どうやらクスリをより内部にまで塗り込めようとしているらしい。
 ジクジクと疼くような、むず痒い感覚。
 呼吸が荒くなり、白い胸が激しく上下する。その先端で色づく突起に目を止めた鷹嶺が、弓槻の脚を支えていたほうの手で、そこをきゅっと抓り上げた。
「ひ……っ」
 大きな声を漏らしそうになって、必死にそれを呑み込む。快感を苦痛だと思いこもうと足掻く弓槻を嘲るかのように、鷹嶺はそこを弄りつづけた。
 奥を弄る指がいつの間にか増やされて、悪戯な指先が前立腺を掠める。それに細い腰がビクンッと撥ねて、その拍子に咥え込んだ鷹嶺の指が、弓槻の敏感な場所を擦り上げた。
「う、あ…ぁ……っ」
 それまで必死にこらえていたはずの声が、零れ落ちる。
 その、あまりの生々しさに思わず目を見開いた弓槻は、真上から鷹嶺の視線がつぶさに自分を観察していることに気づいて、カッと頭に血が昇るのを感じた。「見るな」と懇願することさえ口惜しくて、意味はないとわかっていながらも顔を背ける。
 そんな弓槻の抵抗に口許を緩めた男は、後孔を弄っていた指を引き抜くと、弓槻の両脚を抱え上げた。男が正面から身体を繋ごうとしていることに気づいて、咄嗟に身を捩ったが、どうしようもなかった。
 本来ならありえない場所に、男の昂ぶりを感じる。硬い切っ先が蕩けた襞を擦り上げてきて、己の肉体が、クスリの影響とはいえ、男の欲望を受け入れる状態にされていることを今さらのように認識した。
「やせ我慢もここまでだ」
 低い声が落とされて、直後、衝撃が弓槻を襲う。
「ひっ、あ、ぁ……っ」

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