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誑惑の檻 ―黒皇の花嫁―

妃川 螢 / 著
みずかねりょう / イラスト
ISBNコード 978-4-86457-273-6
サイズ 文庫本
定価 693円(税込)
発売日 2015/12/18
発売 ジュリアンパブリッシング

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内容紹介

黒と赤が結ばれる時、真の皇が復活を遂げる。
凜はチャイナ・マフィアから身を隠しひっそりと生きてきた。雷雨の夜、突如襲われた凜を救ったのは、大富豪・嵩原だった。手厚い看護と慈しむような眼差しに癒されるが、救い出されたのではなく、罠にかけられたと知る。毎晩繰り返される陵辱行為。圧倒的な熱に犯され、嵩原の底知れぬ恐ろしさに触れた時、それは記憶の底にある、何かと符合して……。“そなたこそ黒の花嫁にふさわしい” 凜の封印された秘密を言い当てる紳士。その正体は……。魅惑の描き下ろし収録有!!
★初回限定★
特別SSペーパー封入!!

人物紹介

緑川凜

組織から逃げるために性別を偽り、双子の妹として生きてきた。

嵩原壯一郎

組織に追われていた凜を助けてくれた、大富豪の紳士。

立ち読み

「や……っ」
 トロリとした液体の冷たさに、一瞬肌が粟立つ。だがすぐに何か異質の熱を感じて、凜は視線を巡らせ、涙に滲んだ視界に男を映した。
「心配することはない。ただの潤滑剤だよ。少々、気持ちよくなれる成分も入ってるが、たいしたことはない。すでに感じはじめている君の可愛いココを、傷つけない手助けをするだけのことだ」
 言い終わらぬうちにぐっと指を突き入れられて、凜は「ひ……っ」と悲鳴を上げた。だが、衝撃に背を撓らせただけで、痛みはない。内部を穿つ指は、また増やされていた。
 その場所が、熱く指に絡みつくのが自分にもわかった。男は「少々」と言っていたが、使われた潤滑剤にそこそこきつい薬効があることは明白だ。
「あ? あ…ぁ、なに……っ」
 内部を探っていた指が、凜の感じてやまない場所を見つけ出し、そこを擽るように撫でる。快感をはぐらかすだけのそのやり方が、凜の理性を焼き、身体の中心に熱を灯した。
「ココが、男の一番感じる場所だ。こうして刺激してやると、何度でもイける」
 房事に慣れた男の指に、迷いはない。だが凜にとっては何もかもはじめての経験で、許容量オーバーを起こすのにさほど時間はかからなかった。
「は…んっ、あ、ぁっ、あっ!」
 込み上げる射精感を、耐えようとして耐えられず、凜は腰を震わせる。無意識に身体の中心に手を伸ばし、腹につくほどに反り返り、先端から厭らしい蜜を零す欲望を、堰止めるようにその手におさめていた。
 だが、その途端、内部を抉る動きが弱められて、快感をはぐらかされてしまう。その結果、物足りなさを覚えた凜は、自身の欲望に指を絡め、あと少しで達することのできる頂へ向かって、自身を追い上げはじめた。
「あ…んっ、んんっ」
 扱く手の動きが少々乱暴なのは、もう二進も三進もいかないところまで追い上げられているから。あと少しで解放される寸前で、はぐらかされてしまったから。焚きつけられた肉欲に、抗えなくなってしまったのだ。
「いけない子だ。自分で弄っていいと、誰が言った?」
 欲望に濡れた虚ろな表情で自慰に耽る凜の姿を満足げに眺めつつも、嵩原は小さく笑って、その手の自由を奪ってしまった。
「や……っ」
「ダメだ。後ろだけでイクことを覚えなければ。君はココに私を受け入れて、私の愛し方を覚え込むのだよ」
 凜の両手首を一纏めにして拘束して、嫌だと涙を飛び散らせて頭を振る凜に薄く微笑み、嵩原は後孔を穿つ指の動きを激しくする。グチュグチュと濡れた音が大きく響いて、先ほどははぐらかされたその場所を、今度は容赦なく抉られた。
「あぁ……っ!!」
 背を駆け上る快感と、抗い難い射精感。粗相を見られるかのような錯覚が、凜の羞恥を煽り、結果、喜悦を深くする。
「あ…ぁ……、ん…ふ……」
 ビクビクと痙攣を繰り返した白い肢体が、ややあって弛緩する。はじめて与えられた深すぎる快楽に思考は紗がかかったように虚ろで、凜はただ呆然とおおいかぶさる男を見上げた。
 放心したように自身を見上げる凜に視線を落としつつ、嵩原は身体を起こし、残った衣類を脱ぎ捨てる。
 露わになった肉体は、ありあまる資産を持て余すほどに贅沢な暮らしを許された富豪のものとは思えぬほど、鍛え抜かれ、年齢にそぐわぬ逞しさを有していた。
 戦うことを知る者の肉体だと、凜は霞んだ意識下にも感じとった。
 雄々しく猛々しく、圧倒的な存在感をもった裸身。男の美質に恵まれたその肉体の中心で、嵩原の欲望は、力強く反り返り、おさめる鞘を求めて滾っていた。
 その逞しい肉体が、おおいかぶさってくる。
 膝に手をかけられ、腰を抱えられて、身体が密着した。
 その一連の動作を、凜は逃げもせず、抗う言葉も口にせず、ただ見守った。
 もはや逃げられないと思ったのもあるが、それ以上に、見惚れてしまったのだ。これから己を支配しようとする、謎めいた男の美しさに。
 じっと注がれる眼差し。まっすぐに見返すことに恐怖を覚えるほどに強い眼差しが、まるで見えない鎖のように凜に巻きつく。それに睫を震わせると、大きな手が頬を撫でて、涙のあとを拭ってくれた。
 視界が翳って、男が上体を屈めたのだと気づく。
 目を見開いたままそれを窺っていたら、瞼の上で甘い音がした。咄嗟に目を瞑ってしまう。その隙をついて、唇が重ねられた。
 そっと包み込むようなそれに、驚いて目を瞠る。輪郭がぼやけるほど近くに男の双眸があって、その中心に驚き顔の自分がいた。
 そろそろと腕を上げて、屈強な肩に縋りついた。
 ゆっくりと瞼を閉じると、口づけが深まる。
 口腔内を、あますところなく丹念に舐められ、唾液を注がれる。飲み込みきれなかったそれが唇の端から零れて、シーツに伝った。
 舌をきつく吸われて、ゾクゾクとした感覚が背を駆け上ってくる。顎を甘噛みされ、喉元に歯を立てられて、身体がシーツに沈み込んでいく。わずかに残っていた強張りが、とうとう解けたのだ。
 なぜかはわからない。もしかしたら薬の影響なのかもしれない。未知の行為への恐怖に、思考が逃避しただけだったかもしれない。
 けれど、この期に及んでも、男が見せた偽りのやさしさを、信じたいと心のどこかで思っている自分自身にだけは、蓋をした。
 首筋に鎖骨に白い胸に、所有の証を刻まれる。その間も、双丘を抱え込んだ手が白い肌に強く食い込み、蕩けた場所をいたずらに刺激し、硬い腹筋が凜の欲望を擦っていた。
 せわしない呼吸と、それに混じる甘い喘ぎ。
 上体を起こした男に膝裏を抱えられて、膝頭が胸につくほどに身体を折り曲げられる。腰が浮いて、その狭間に、熱く硬いモノがひたりとあてがわれた。
 ゆるゆると、目を見開いた。
 グチュグチュと卑猥な音を立てて、張り出した切っ先が蕩けた後孔に擦りつけられる。ぞわぞわと快感が迫り上がって、めくれた襞が切っ先を包み込もうと蠢いた。
 すべてを、男の視界に曝した恰好。
 吐き出された蜜に汚れた白い胸も、はしたなく反り返った欲望も、その根元の双玉も、潤滑剤と男の唾液に濡れそぼった秘孔も。
 そして嵩原は、凜にそれを見せつけるように、わざとゆっくりと、蕩けた孔に刀身を沈めていった。
「は…っ、あ、ぁっ、ひ…っ」
 圧倒的な熱量。
 指など比べ物にならない。
 痛み以上に圧迫感と衝撃が強くて、凜は悲鳴を上げた。
 ジワジワと、最奥までを押し広げられていく。男のかたちを覚えろと命じられるように、内部で剛直がゆっくりと蠢いた。
「や…だ、だめ……っ」
 切っ先が、感じてやまない場所を掠める。
 堕とされる予感に恐怖して、凜は啜り泣く。ぐっと、深い場所を抉られた。


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